作業事故撲滅や運送事業者の課題解決に タイヤ各社が整備技術の向上へ

 大型車の脱輪事故などを背景に、確実な点検作業が求められる中、各社がトラック・バス用タイヤの整備スキル向上に注力している。その一つが競技形式で行われる大会だ。ブリヂストンや住友ゴム工業は開始から10年の節目を迎え、「レベルが着実に上ってきている」(住友ゴム)と成果が見られてきている。横浜ゴムやTOYO TIRE(トーヨータイヤ)も含めて各社は活動を継続していく予定で、事故のない車社会の実現に一歩前進していく。

ブリヂストンタイヤジャパン メンテナンス技術と事業者への提案力を

 ブリヂストンのグループ会社であるブリヂストンタイヤジャパンは9月8日、福岡県北九州市で、トラック・バス用タイヤのメンテナンススキルを競う「第10回技能グランプリ全国大会」を開催した。

ブリヂストンの技能グランプリ全国大会
ブリヂストンの「技能グランプリ全国大会」

 この大会は、次世代のメンテナンススタッフの人材育成や、サービス品質の向上を目指したもの。ブリヂストンタイヤショップのスタッフが、同社が制定した作業標準に基づき技術と知識を競い合った。

 技能グランプリでは、最高峰の技能レベルを有するメンテナンススタッフを「技能エキスパート」に認定し、そのうち、安全性や確実性、迅速性を特に満たした技能エキスパートを「技能マイスター」としている。今大会では12名が技能エキスパート、5名が技能マイスターに認定された。

 同社グループでは、経費削減や環境対応など運送事業者の課題に対応するため、商品とタイヤメンテナンスサービスを組み合わせたタイヤソリューションを展開している。その上で、「ここ10年で認定された技能マイスターの32名、技能エキスパートの45名は、タイヤメンテナンスのリーダーとして活動し、技術を次世代へ伝承することで、ソリューションビジネスを支えていく」としている。

 なお、2010年に開催した第1回から10回目を迎えた今回まで、予選を含めて延べ約4100名が参加した。

 また同日、セールススタッフによる運送事業者への課題解決・提案力を競う「第5回生産財セールスマンコンテスト全国大会」を開催。大会はロールプレイング形式を採用し、当日は全国約400名の予選を勝ち抜いた17名が参加した。

 同社グループは「運送事業者の課題は多岐にわたっており、セールススタッフはそれぞれの事業者の本質的な課題を見極め、最適なソリューションを提案することが重要」としている。このため、大会を通じてセールスマンのスキル向上を図り、グループのソリューションビジネスを推進する人材育成に取り組んでいる。これまで延べ約1200名が参加した。

住友ゴム 顧客目線からも評価

住友ゴムの「DTS全国TB作業コンテスト」の様子
住友ゴムの「DTS全国TB作業コンテスト」

 住友ゴム工業は9月14日、千葉県市川市内で「第10回DTS全国TB作業コンテスト」を開催した。この活動はトラック・バス用タイヤの交換作業の質向上を目的に2010年から継続してきたもの。10回目を迎えた今大会は「記念大会」として、過去の入賞者も含めて過去最多の15名が技能を競い合った。

 開会式で増田栄一執行役員タイヤ国内リプレイス営業本部長は、「作業者の負荷を低減するような機器が販売されており、一方では大型車の脱輪事故が増加傾向にある。我々の考える安全作業とは、技術力の高い作業者が進化したチェンジャーを使用して確実にタイヤの取り付けを行うことだ」と話した。その上で、「本日の参加者には、ダンロップの安全作業を牽引して頂きたいと強く願っている」と期待を込めた。

 今回は、「現場のレベルを上げるために、価値観を広げていく」(志賀美也リテール部長)ことを目的に、審査員として全国10の販売会社から代表者が審査員として参加。また、作業マニュアルに則った実技や安全・確実を意識した作業など従来の採点に加えて、「誰に作業をしてもらいたいか」をユーザーの目線で評価する項目を追加した。

 今回優勝したのはダンロップタイヤ北陸タイヤランド松任の中田祐弥さん。2位には比良タイヤ工業所の田中裕介さんが入賞し、3位はダンロップタイヤ九州タイヤランド大野城の野田哲広さんとなった。

 住友ゴムでは生産財タイヤの整備作業を向上するため2008年に初めて作業マニュアルを発行。その後、2013年に各地区の販売会社と連携した作業プロジェクトを発足させ、2014年には社内認定制度「T3」を導入した。この制度は全国作業コンテストの出場資格にもなっており、これまでに322名が取得している。

横浜ゴム 規模拡大も視野に

 横浜ゴムは9月7日~8日、静岡県浜松市で「第5回サービス技能コンテスト全国大会」を開催し、8日に実施した接客・作業に関する実技試験を報道陣に公開した。

サービス技能コンテスト全国大会の様子
横浜ゴムの「サービス技能コンテスト全国大会」の様子

 同コンテストは「安心・安全・正確・効率良く」といった作業を定着させ、高度なサービス技能の向上を図るもの。全国の200名以上のうち予選を勝ち抜いた11名が参加。会場には県外からも上位入賞者の技術を学ぼうとするショップオーナーが見学に訪れた。審査員は社内外で構成され、接客審査では正確なヒアリングや点検作業ができているかをチェックした。

 また、作業審査はエアーを抜いた後、組み換え作業を実施したと想定して空気充てんを行い、タイヤを装着。標準作業に沿った点検作業やナット締めなどの項目で審査が行われた。今回は脱着タイヤを左後輪に設定。昨年の国土交通省の発表によると大型車両の車輪脱落事故は全体の83%を左後輪が占めており、注意喚起の意味を込めて審査内容に反映したという。

 審査の結果、優勝した双葉タイヤタイヤガーデン双葉駅西の松本更伸さんに横断幕が贈られた。横浜ゴムでは、こうした表彰はモチベーションの向上にもつながるため、今後マイスターなどの称号を取り入れることも検討していく。

 また、同社は以前から試験中に参加者の作業を記録し、そのDVDを全国の系列ショップに配布している。各店舗のスタッフがマニュアルやカタログのほかに臨場感のある映像で学習することで、「全国で均一のサービスを提供すること」(同社)が目的のひとつだ。

 現地で会見を行ったヨコハマタイヤジャパンの森昌弘副社長は、「決勝大会の内容を全てビデオで見ることができる。これを活用して知識やスキルを向上し、コンテストに臨んでいるので全体のレベルが上がってきた」と手応えを話した。

 さらに、「将来的にはヨコハマタイヤを取り扱う全販路で予選会にご参加頂き、お互い切磋琢磨して盛り上げていきたい。技術や商品知識、接客の向上でお客様により良い営業活動やサービス活動ができると考えている」と大会規模の拡大に意欲を示した。

トーヨータイヤ 自主系代理店も参加

作業コンテストの様子
トーヨータイヤの「トラック・バス用タイヤ作業コンテスト」

 TOYO TIREと国内販売子会社であるトーヨータイヤジャパンは13日、新潟県長岡市内で「TOYO TIRES 第2回トラック・バス用タイヤ作業コンテスト」を開いた。

 同社が作業コンテストを開催するのは、昨年に引き続いてのもの。今回は参加資格を自主系代理店まで拡大した。

 運送業界では取り巻く環境が厳しさを増し、経営効率の改善が最重要の課題。このため車両整備のアウトソーシング化が進んでいる。一方、整備業界は高齢化と志願者の激減により整備士不足が深刻化している状況だ。

 このようなことを背景に、トーヨータイヤジャパンの山邊憲一社長は「運送業界ではタイヤの入れ替え作業やメンテナンスサービスは人手と時間を掛けられず、タイヤ販売店への依頼が増加する。安心・安全・迅速で丁寧な作業を提供するため、グループの作業標準化とレベルアップを目指すもの」と、コンテスト開催の意義を語る。

 今回のコンテストにはトーヨータイヤジャパン本部主催の「サービスマン研修」受講済みの従業員から選出された9名の代表者に加え、自主系代理店4社から4名が参加。筆記テストと実技テストの合計で順位付けを行った。

 作業コンテストは自主系代理店の新潟トーヨーの本社長岡営業所(長岡市)を会場として実施。大型車脱輪事故の83%が左後輪に集中していることを踏まえ、「左後輪に故障が発生したトラックユーザーが来店した」という設定で、制限時間30分の実技テストに臨んだ。

 コンテストを視察した山邊社長は、「トーヨーグループとして作業基準のさらなる徹底を図るため、将来的にはトーヨーショップ会にも参加対象を拡大したい」と話す。また会場を提供した新潟トーヨーの和田社長も「作業品質の一層の向上とスタッフの育成には、オールトーヨーの視点で取り組むことが重要だ」としている。

 筆記テストと実技テストの結果、トーヨータイヤジャパン関東支社太田営業所の井上英明さんが優勝。湘南タイヤ横須賀営業所の山田聖司さんが準優勝で続いた。


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