Talk about driving(トーク・アバウト・ドライビング)

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カテゴリー: レポート, 試乗

モータージャーナリスト、瀬在仁志さんとクラウンCOに乗りながら

 旗艦が新しい時代をつなぐ

 ドライバビリティーを実現

クラウンクロスオーバーG Advanced-1
クラウンクロスオーバーG Advanced-1

 トヨタ自動車がクラウンシリーズのフルモデルチェンジを発表し、16代目となる新生クラウンを世界初披露したのは22年の夏。これまで主流だったセダンだけでなく新たに三つのタイプを加え4車種構成で販売展開すること、クラウンもついにSUV化されることが発表当時、かなり衝撃的に受け止められた。トヨタは同年秋に第1弾となるクラウンクロスオーバーを発売。第2弾のクラウンスポーツを23年10月から、第3弾のクラウンセダンを11月から相次いで発売した。新生クラウンへの市場の期待は高く、販売は好調な推移をみせている。そこで本紙は瀬在さんと、第1弾のクラウンクロスオーバーに乗りながら、フラッグシップの意味について考えた。

 

 時代の変化とともに『変わらなければならないこと』と、時代が変わっても『変わらないこと』、それぞれに価値があるのではないか。

 クラウンの初代モデルは1955年に誕生した。クラウンのトレードマークとなる『王冠』エンブレムは2代目(1962−67年)からの採用。日本のモータリゼーションは1964年開催の東京オリンピックのころ本格的に進んだとされるが、クラウンはまさにそのタイミングで高級車として位置付けられるクルマとなった。

 それがフラッグシップカーとして認知されるようになったのはおそらく7代目(1983−87年)。それに冠されたキャッチコピーが『いつかはクラウン』だ。その影響は計り知れない。

 バブル経済の崩壊後、主に若者世代を中心にクルマ離れが顕著にみられるようになった。しかしフラッグシップには強い求心力が必要だ。それまでFR車だったシリーズに4WDをラインアップし、スタイリッシュなアスリート・シリーズを加え、さらにハイブリッド(HV)モデルを投入した。

 高級サルーンにとどまらず、若い世代に向けてのスポーツ性能、環境への対応、先進の安全技術、ドライブサポート技術——15代目(2018−22年)に至る、67年以上の歴史のなかでクラウンシリーズは常に時代の先頭を駆け抜けてきた。

 

 クロスオーバーが

 第1弾の理由

 

クラウンクロスオーバーG Advanced-2
クラウンクロスオーバーG Advanced-2

 瀬在さんは次のように振り返る。

 「先代モデルはドイツのニュルブルクリンクで徹底的に走り込んで開発し、サルーンカーでありながら非常にスポーティーな性能を備え、欧州車に匹敵するレベルまで鍛えあげられました。ただ残念なことに、そのデザインがとくに保守層に受けなかったようです」

 クラウンをフラッグシップブランドとして次の世代へとどうつないで行くのか。米国・欧州市場を念頭に世界戦略車として誕生したレクサスと、まもなく70年にもなろうというクラウンとでは、ブランディングはまったく異なる。トヨタが刻んだマイルストーン(道しるべ)が、22年7月に発表した16代目となる新生クラウン。しかも、その第1弾に持ってきたのがクラウンクロスオーバーだった。

 「セダンではなく、スポーツでもなく、SUVであるクロスオーバーというジャンルをあえて第1弾としたことに、大きな意味があるのではないでしょうか」と瀬在さんは指摘する。「つまり、過去にとらわれないチャレンジングなモデルづくりをした、今までにないまったく新しいクラウンを創造した——そういう過去との決別を示す意思表示が、セダンではなくクロスオーバーだというところに込められているように感じました」と続ける。

 「この決断は冒険だったでしょう。過去から脱皮してここまで変貌を遂げたのはとても立派だと思います。このフェイスに四つものボディ・バリエーションをラインアップしますが、クラウンとして受け入れられるのかどうか、未知数ではあります。ですが、フルラインアップを揃えることができるのは、日本のカーメーカーでは今やトヨタしかありません」

 車種のバリエーションに加え、グレードをそれぞれに用意したのは、クラウンというクルマに対する多様なニーズに応えようとする姿勢の現れだ。言いかたを換えると、それほどこのフラッグシップブランドには人を引きつける魅力が潜在しているのに違いない。

 

 既成概念を打破した

 21インチサイズ

 

MICHELIN「e−PRIMACY」(ミシュラン イープライマシー)225/45R21 95W-1
MICHELIN「e−PRIMACY」(ミシュラン イープライマシー)225/45R21 95W

 デザイン性は既存の延長ではなく、ゼロベースから出発。採用技術も同様に、リスタートしたという。100年に一度という大きな変革期のなか、次の100年を見据えた提案を満載した。

 今回試乗したクラウンクロスオーバーG AdvancedにはMICHELIN「e−PRIMACY」(ミシュラン イープライマシー)の225/45R21 95Wサイズが新車装着された。ここにもその提案がみてとれる。

 瀬在さんは「21インチサイズのタイヤを乗用車クラスに履かせるという発想は、おそらく過去にはあり得なかった。その必然性はどこにあるのか。走り、乗り心地、転がり抵抗、ルックス。スポーツ性能とコンフォート性能、環境性能と、あらゆる性能を高い次元で両立するために選んだのではないでしょうか」と語る。

MICHELIN「e−PRIMACY」(ミシュラン イープライマシー)225/45R21 95W-2
MICHELIN「e−PRIMACY」(ミシュラン イープライマシー)225/45R21 95W

 タイヤの偏平率(アスペクトレシオ)が低い(ロープロファイル化が進む)と、タイヤサイド部の剛性が高くなり、グリップ力があがる。その一方で、路面からの振動を拾いやすいため乗り心地に影響し、ロードノイズも大きくなってしまうというデメリットが生じる。

 また、タイヤ幅の太さも性能に大きく関係するのは言うまでもない。太いタイヤのほうがグリップ力を得やすいが、燃費性能は細いタイヤのほうが優れる。ワンダリング性能(ふらつき)も良い。

 仮にタイヤの接地面積が同じになるとして、横方向(タイヤ幅)に広い接地面積によって得られるタイヤ性能と、縦方向(前後)に長い接地面積で得られるタイヤ性能、それぞれはトレードオフの関係となる。

 基本となるタイヤの走行性能と燃費性能を高いレベルへと引き上げ、どの性能もきっちりとバランスさせるべく選択したのがこの大口径サイズ。偏平率45%・リム径21インチというタイヤだったのだろう。既成概念を打破した発想から生まれたものと言える。

 「HVの静かな走り、フラッグシップらしいスポーティーな走りに、タイヤはしっかりと応えています」とし、クラウンが目指すドライバビリティーの実現に大きく貢献したと瀬在さんの評価は高い。

 フラッグシップカーが備えるすべての性能を引き出すことが、装着されるタイヤに求められる。フラッグシップタイヤだからこそ、それが可能となる。フラッグシップカーはフラッグシップタイヤを装着しなければ、持てる性能をフルに発揮することはできないのだ。

 

 良い走りのために

 旗艦の価値は不変

 

 フラッグシップモデルとハイエンドモデル——どちらも最上位のモデルを指す言葉だが、用語として厳密には違いがある。簡単に表すと、フラッグシップモデルは「そのメーカーを象徴する(あるいは代表する)最上位モデル」。ハイエンドモデルは「そのメーカーでもっともスペックが高い最上位モデル」。トヨタにとって前者はクラウン、後者はレクサスブランドと位置付けられる。

 瀬在さんは次のように論評する。「フラッグシップモデルだからこそ大胆に、思い切ったことをやろう、新しい時代を拓いていくのだという意気込みが感じられます。良い走りを実現することを目指してつくったのが新型クラウンのパッケージングであり、このフラッグシップからスタートして、スタンダードへとつないでいくのでしょう」

 クルマの走りは新時代の到来とともに変わっていく。ただ、良い走りを具現化するクルマやタイヤをつくりたいという、メーカーの開発陣がかける情熱は変わらない。フラッグシップという価値は不変だ。

 

 =瀬在仁志(せざい ひとし)さんのプロフィール=

瀬在仁志さん
瀬在仁志さん

 モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト(AJAJ)会員で、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員のメンバー。レースドライバーを目指し学生時代からモータースポーツ活動に打ち込む。スーパー耐久ではランサーエボリューションⅧで優勝経験を持つ。国内レースシーンだけでなく、海外での活動も豊富。海外メーカー車のテストドライブ経験は数知れない。レース実戦に裏打ちされたドライビングテクニックと深い知見によるインプレッションに定評がある。


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