日本ミシュランタイヤ サステナ性能体感試乗

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カテゴリー: レポート, 試乗

 環境性能も妥協をしない

 摩耗しにくく末期でも性能を維持

ハンドリング路での評価
ハンドリング路での評価

 日本ミシュランタイヤは6月28日、栃木県のGKNドライブラインジャパン・ブルーピンググラウンドで「サステナブル性能体験試乗会」を開催した。試乗タイヤは「e・PRIMACY(イー・プライマシー)」「PRIMACY SUV+(プラス)」「PILOT SPORT(パイロット スポーツ) 4 SUV」「PILOT SPORT 5」の4種類。これらを貫くキーワードは〈サステナブル〉。ミシュランはタイヤづくりで「安全性・経済性・居住性」、そして「環境性」の向上に取り組む。試乗した4種類のタイヤに共通するのは「低燃費性」「長寿命」「摩耗のしにくさ」だ。

 

 サステナブル イコール、環境性

 

 電動車は今やサステナブルな車の代名詞。ミシュランによれば、22年の新車販売台数のHV・PHV・BEVなどの電動車の割合は52%となっている。政府はこの流れを推進しようと、35年に新車販売のすべてを電動車にする方針だ。

 ただ公道を走る車は、ICE(=内燃機関車、ガソリン車)も一定の割合を占める。電動車はICEに比べてバッテリー分の重量が大きく、装着タイヤは摩耗しやすくなるという課題がある。電動車でもICEでもサステナブルなタイヤを供給することが、タイヤメーカーの喫緊の課題となる。

 ミシュランは設計思想として、「安全性・経済性・居住性・環境性」の四つを要件にすえる。タイヤの〈環境性=サステナブル〉とは、「省資源でより少ないCO2排出量」であることだ。この条件を満たし、さらに「高性能で長期使用可能なタイヤ」にすること。これがミシュランの目指す方向性だ。

 タイヤの〈環境性〉を高めるには、ユーザーの「使用時」がカギ。同社の調べによれば、タイヤのライフサイクルで多くのCO2が排出されるのはユーザーの使用時だという。総CO2排出量のうち、約6~9割が使用時に排出される。

 タイヤ使用時のCO2排出量をいかに抑えるか。それには転がり抵抗や空気抵抗などの改善による低燃費性の向上、低摩耗による長寿命化が重要となる。トレッドゴム性能の進歩やサステナブル材料の開発と量産化、また高荷重のEV使用へ対応するために耐摩耗性能の改善が不可欠だ。

 ミシュランが今回示した4種類のタイヤに共通するのは「低燃費性」「長寿命」「摩耗のしにくさ」だ。21年8月に上市した「e・PRIMACY」は新コンパウンドである「エナジー・パッシブ・コンパウンド」の採用により、転がり抵抗性能AAAの達成や耐摩耗性能を向上。U字グルーブの適用で排水性能を確保し、摩耗末期でもしっかりとした性能を確保する。

 このようなサステナブルに対する意識はスポーツタイヤでも変わらない。22年3月に上市した「PILOT SPORT 5」では内部構造を最適化したことにより転がり抵抗性能Aを取得し、低燃費性をしっかりと確保する。接地形状の最適化により、前世代の「PILOT SPORT 4」に比べて耐摩耗性能も向上した。

 同年5月に上市した「PRIMACY SUV+」では低燃費性とともに耐摩耗性能、静粛性を向上。バリアブルピッチにしたことで、環境性だけでなく居住性も高めた。

 

 摩耗末期でも車の能力を引き出す

 

瀬在さん
瀬在さん

 試乗会では、3商品それぞれで外周路の操縦安定性とハンドリング、「PRIMACY SUV+」ではこれに加えて摩耗末期の性能を確認するため、新品と摩耗末期のタイヤを比較するブレーキングテストも実施した。当日は雨天のため路面はウエット状態で試乗した。

 「e・PRIMACY」を最初、ICE車に装着して試乗。「走りの対応力を内燃エンジン車でも体感してほしい」というのが狙い。試乗したモータージャーナリストの瀬在仁志さんは「採用しているコンパウンドが硬めなのでしょう。その硬さが応答の良さを生み出しています」と評価する。この応答性の良さは、ムダのない動きにつながる。瀬在さんは運転しながら「まさにサステナブルですね」と感心する。

 その「e・PRIMACY」をEVに装着するとどうだろうか。応答性は変わらず良い。高速安定性も高い。タイヤのウエット性能指数はcだが、ウエット路面でもバランスよく走る。瀬在さんは「示されたグレーディングよりももっとウエット性能は高いのではないでしょうか」と驚く。

 ミシュランの〈環境性〉のポイントのひとつである「長寿命」。そのひとつが、U字グルーブなどでタイヤが摩耗しても落ちないブレーキング性能だ。

 「PRIMACY SUV+」では、新品と残溝2ミリメートルの摩耗したタイヤでブレーキング性能を比較。時速70キロまで加速し、急制動をかける。新品では制動距離が20.4メートルに対し、摩耗したタイヤは制度距離26.9メートルだった。瀬在さんは「摩耗末期のタイヤは制動の初期段階こそ空走しましたが、ABSが作動して安定すると横滑りせず、挙動は新品とそん色ないですね」と指摘する。

 外周コースを走ると、安定感がひときわ高い。SUVはマルチパーパスな性能が求められる。瀬在さんは「グリップがしっかりとかかって路面をつかんでいるので、乗り心地もいいですね」と語る。

 ハンドリングコースに出ても、不安感なくハンドルを切ることができる。「タイヤパターンには細かくサイプが切ってあるのでコンフォート系のイメージでしたが、走ってみると排水性の良さやロールのコントロールがうまくできているのを感じます」(瀬在さん)。

 ミシュランの最新のスポーツタイヤである「PILOT SPORT 5」。テスラ・モデル3に装着しての試乗となった。ポイントは「タイヤ性能の汎用性と完成度」を体感できること。瀬在さんは試乗すると「スポーツ感は高く、ウェットコンディションでもしっかりとグリップしています」と、第一印象を語る。スポーツタイヤらしく、車の性能を最大限に引き出すことが可能だ。

 「PILOT SPORT 4 SUV」では、試乗してすぐに「操舵に対してフロントの動きとロールのつながりが良いタイヤですね」と評する。

 いずれのタイヤも「安全性・経済性・居住性」、そして「環境性」のアップデートを実現していた。


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