東洋精器工業株式会社
自動エアー充てん機「エアーメイト TM—300BM」
バッテリーとタイヤで機動力アップ
複数タイヤの同時充てんも可能に
自動エアー充てん機「AIRMATE」(エアーメイト)シリーズを展開する東洋精器工業株式会社(兵庫県宝塚市、馬杉ゆかり社長)。「安全」「正確」「迅速」というタイヤ空気充てん作業に求められるニーズを満たすのはもちろんだが、商品化を企画する際に重視するキーワードが「機能性」と「効率性」だ。近年、シリーズの商品ラインアップを拡充させてきたが、今回新製品として「AIRMATE TM—300BM」を加えた。商品企画部第一課長の森本祐二さんが解説と実演デモを行ってくれた。
日本自動車タイヤ協会23年2月発表の調査報告によると、22年(1〜12月)期間で、車両からタイヤを取り外した状態で行う「タイヤ空気充てん作業時」は18件、車両にタイヤが取り付けられた状態で行う「タイヤ空気補充時」の事故は1件だった。死者は出なかったが、重軽傷7件(8名)の人的被害があった。
タイヤ空気充てん作業時の事故は20年38件、21年24件と、過去3年の推移をみると着実に減ってはいるものの、それでも毎月1〜2件、事故が起きている勘定となる。
輸送業界では慢性的なトラックドライバー不足が続き、タイヤを含む自動車整備業関連でも人手不足が顕在化。整備に関わる管理・メンテナンスにかかる時間や人員をどう減らすかが急務の課題だ。だが、労働安全衛生法令で定められたタイヤ空気充てん作業の特別教育を受講していないケース(今回の調査では18件中8件、44%)がある。法令を遵守し、安全策を徹底したうえで作業に取り組まねばならない。
自動エアー充てん機は、タイヤ空気充てん作業の現場をサポートする専用機器。東洋精器は「AIRMATE」シリーズに、「ビードシート機能」を搭載した「TM—300」「TM—500」を発売中。「ビードシート機能」は、設定空気圧に対し指定した圧力値だけ過充てんし、その後に設定充てん空気圧まで減圧することで、より確実にビードシーティングを実現するものだ。
「TM—300」「TM—500」には「内圧自動全排出機能」を採用。パネルの「緊急停止」キーを押すとただちに充てんを停止すると同時にタイヤ内圧を自動で排出させる機能である。なお「TM—500」はリモコンキーで、離れた場所からその機能を作動することが可能なリモコンモジュールを標準装備した製品。
「今回、上市したのは『AIRMATE TM—300BM』という製品で、『TM—300』をベースに新しい機能を追加した」と、森本さんが紹介する。その新しい機能とは、4連ホースで複数のタイヤの同時充てんを可能にしたこと、バッテリーを付属させたこと、キャスター付きとし移動を容易にしたこと。製品名に示される「BM」とは「Battery」(バッテリー)と「Mobile」(モバイル)に由来するという。
森本さんは「4本まで、複数本のタイヤにホースを接続し、同時に充てん作業を開始することができる。これまで1本ずつ、個別に行っていた作業に要していた時間が短縮されるので、作業効率を大幅に向上した」と説明する。
エアー充てんに際しては、エアーチャック後に機器本体の遮断弁を上にスライドするだけで自動充てんを開始し、充てん完了後に自動停止するので、遮断弁を下にスライドしチャックを外す。タイヤ4本、いずれもが同じ設定空気圧であれば、4本すべてのタイヤが設定の空気圧となった時点で終了ブザーが鳴り充てん作業が完了する。個別に複数のタイヤにチャッキング作業とエアー充てん作業を繰り返すことをイメージすると、同時充てん作業による作業性の向上は想像以上に違いない。ピット作業の現場での負担軽減につながる。
「エアー充てん機の使用環境はさまざま。電源のあるところで常に使われるとは限らない。サービスカーに搭載し持ち出して作業する場合、充てん機用の電源を確保しなければならないことが懸念された。新製品はその課題を解決した」とし、森本さんが指し示したのがバッテリーだ。モーターサイクルなどにも採用される小型高性能タイプで、フル充電で36時間程度は稼働可能だという(使用条件、使用状況により変動あり)。「継ぎ足し充電が可能なので、ピットのシャッターを下ろしたときに充電を開始すれば、始業時にフル充電の状態で使用でき、就業時間中に追加充電を行う必要はない」と、森本さんは続ける。
「TM—300BM」本体自体は家庭用AC100Vコンセントに接続し使うこともできるので、切り替えスイッチ一つで作業環境に応じた電源の使い分けが可能。カラーバッテリー残量計を搭載したので、バッテリー残量も一目で判読できる。
機器本体にキャスター機能を採用したのも、使用環境の多様化に対応するため。大口径・軽量タイヤ(空気なし)を装着することで、エアー充てん機にモバイル性能を付与した。「タイヤ口径が大きいので、路面への追従性がよく、障害物の乗り越しにも対応でき、移動が楽。いつでもどこでも、エアー充てん作業できるのが強み」と、森本さんは述べる。
新製品は、「TM—300」の多機能をそのままに機動力を持たせたことによりこれまでの製品とは一線を画し、屋内・屋外問わず使い方の組み合せが大きく広がる。なお液晶ディスプレイの表示は従来のバックライト方式から自発光タイプに変更し、数値の視認性を一層高めた。乗用車からトラック・バス用まで対応。設定圧力は30kPa〜1000kPa。