先進PITの現場から  東洋精器工業株式会社横浜支店

 研修センター機能を完備

 技能伝承と人材教育を担う

東洋精器工業株式会社横浜支店
東洋精器工業株式会社横浜支店

 タイヤチェンジャーやホイールバランサー、ホイールアライメントテスターといったクルマの足まわりサービス機器を専門に扱う東洋精器工業株式会社(馬杉ゆかり代表取締役社長)は1946年創業。タイヤ整備業界で老舗企業だ。1999年に本社を大阪市淀川区から現在の兵庫県宝塚市に移転した際に、研修センターを併設した。それ以後、支店や営業所の移転で新たに事務所を構える場合、条件が合えば研修センター機能を備えることを方針とする。なかでも横浜支店は、本社に続き本格的な研修センターを完備し、全国をけん引するリードオフマンの存在だ。

 

 タイヤ整備機器の研修センターは、自社の製品の展示のみにとどまらない。機器の取り扱いについて、ポイントごとに、トレーナーとともに実際に機器に触れながらレクチャーを受けることを可能とする。そのための実技スペースやフェイストゥフェイスでのミーティングの場を備えるもの。

研修センター機能を完備
研修センター機能を完備

 横浜支店は2007年、それまでの東京支店から移転。東京都・神奈川県・山梨県をカバーする拠点としてオープンした。事務所1階に実機を使った実技スペースを、2階部分に座学の講習会など多目的に使用可能な会議室を備えた。東京からのアクセスが良いという立地と、整備に関する技能実習が整った環境は開設当時、希少だった。タイヤ整備に関するセミナー開催を要請されることが増えていく。

 東洋精器工業は研修センターの有用性を当時より重視していた。作業品質の向上と作業の均質化をめざすときに、それがあるのとないのとでは大差がつく。業界全体の活性化を図るという社会貢献も視野に入れ、研修センター機能を営業所に付加する施策に取り組む。現在、全国11拠点のうち7拠点で研修センターの機能を有するようになった。今後も順次、増やしていく考えだ。

 

 東洋精器工業では営業スタッフが納品後のメンテナンスまでトータルサポートし、ユーザーと近い距離でサービスを行う。機器を購入する際の選びかたから使用方法、故障の予防や日々の取り扱いの注意点まで、きめ細かいサービスを提供する。そのためにスタッフ自身も日々、クルマとタイヤ、その整備全般の知識をアップデートする必要がある。そのような意味で、研修センターはスタッフ自らが技能を磨くための「勉強部屋」でもある。

 

 ユーザー側からの研修センターのニーズも高まる一方だ。近年は人手不足の問題から、新人スタッフ教育に時間を割くことがむずかしい。先輩から新人へ、マンツーマンで機器の使いかたや整備の方法、顧客対応まで教える「技能伝承」がこれまでだった。だが今や、懇切ていねいに実地教育ができる余裕のあるタイヤ整備店舗は少ないのが実情だ。

 さらに機械の進化にともない操作の難易度が上がり、教育する側のスタッフがそれに対応することがむずかしい状況もある。販売する整備機器企業側に機器の取り扱いをサポートする場があれば現場の手間も大幅に省くことが可能となる。

 人材教育を底上げすることも、研修センター開設の狙いのひとつ。パイオニアである横浜支店を礎とし、全国の営業拠点に広がる研修センターは地域に必須の整備教育の拠点となるに違いない。

 

 

 商品企画部・青木茂雄さんに聞く

 

 

商品企画部・青木茂雄さん
商品企画部・青木茂雄さん

――横浜支店研修センターはどのような施設ですか。

 

 1階には実習スペースがあり、実際に機器を動かしながらトレーニングを行います。2階にはプロジェクターを備えた座学研修室があります。収容人数は約20名。密にならないように余裕を持って利用していただいています。

 07年当時、整備機器の研修センターは全国でも珍しい存在でした。その反響は大きかった。多くの方が視察に来られて「いい施設をつくりましたね」の声もいただきました。本社併設の研修センターとは違い、現場ユーザーである顧客に対する研修センターは横浜支店が初めてです。

 

 

 ――研修センターを設けた理由は。

 

 近年はタイヤの大口径化、偏平化もあり、タイヤの組み換え作業自体がむずかしくなっていますし、機械もどんどん新しくなっています。皆様が安全に業務に携われるお手伝いをすることも、正しく機械を使ってもらうためには必要なことです。この研修センターで知識を身につけていただきたい。場所のレンタルも可能ですので、タイヤ空気充てん教育講習の会場に使っていただくこともできます。

 当社はタイヤ整備業界のなかでも老舗という自負もあり、業界への恩返しでもあります。機械をつくるだけではなく、使う人間を育成し、業界に貢献をしていかなければならない立場と考えています。業界全体で整備知識の底上げが必要です。

 

 

 ――利用者は。

 

 当社の顧客であるタイヤ専門店、タイヤメーカーやガソリンスタンド、車両メーカーの皆様もいらっしゃいます。新入社員の研修が多い5月頃からが混みあいますね。

 

 

 ――講師を務める、独自のマイスター制度についてお聞かせください。

 

 当社の社内制度で、外部の方に対し講師ができる人材を育成する制度です。マイスター試験に合格した者を講師としています。機器のことをきちんとお伝えするには、自身が理解しておかないといけません。

 

 

 ――スーパーマイスターとは。

 

 マイスターは外部のかたへ講師として説明しますが、スーパーマイスターはそのマイスターを育成するレベルです。

 

 

 ――テキストは自社で作成されるのですか。

 

 当社が長年にわたり蓄積したノウハウをまとめたものです。現場ではいろいろな質問や要望を受けます。それらの声を精査しどのような対応が良いか議論を重ね、テキストに落とし込んでいます。全国どこでも同じ研修をしていかなければなりませんから、テキストは重要です。

 

 

 ――研修の重要性を。

 

 過去には、使いかたが誤っているのに機械のせいにされた場合がありました。個別に注意するより、研修という場で説明するほうが理解していただきやすい。新しい情報を発信することで作業者のレベルアップにつながりミスを防ぐことができます。むかしは職人気質で、自己流で作業されるかたが多くいらっしゃった。そのまま伝えていくとどこかで事故につながってしまうので、当社の研修センターで基本を知っていただきたい。作業を標準化することで事故を防ぐことができます。

 

 

 ――どのようなプログラムがありますか。

 

 基礎から専門的な講座まで幅広い項目があります。機器の使いかたから始まり、偏平タイヤについて、ホイールを外すときの注意、ランフラットタイヤの脱着作業の注意点、バランサーの使いかた、アライメント講習。機械がバランスをどのように検出するのかというバランサーのしくみ、アンバランスが車両にどう影響するのかといった理論的なものまで多岐にわたります。

 最近はトラックの脱輪事故が多いことから、脱輪の原因になりうる事象も説明します。脱輪を防ぐために必要な作業について、なぜその作業が必要なのか、一番大事なところを教えていきます。

 

 

 ――受講者の反応と、今後の方針について。

 

 「勉強になった」という声がほとんどですね。うれしいことです。研修でいろいろ身につけていただくことは、当社にもお客様にとってもお互いにWIN−WINです。

 当社は今、研修施設を増やしていく方針で臨んでいますので、社員のレベルを上げていきます。それは日本全国の現場のすみずみに正しい整備機器の使いかたが届くことになります。ひいては交通の安全にもつながります。より一層、社会貢献できる企業になることをめざします。


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