オートバックスセブン――外国人材を活かす 技能実習生受け入れから15年

 自動車の整備に携わる人材不足が叫ばれて久しい中、オートバックスセブンは2006年から国内の整備需要に応えるため、また日本の整備技術を広めるという国際貢献の観点から「外国人技能実習制度」の取り組みを継続して行ってきた。当初はコミュニケーションの壁などがあったものの、開始から15年が経った今では店舗での教育体制も整い、軌道に乗ってきているという。これまでの取り組みの成果と将来への展望を取材した。

人材難になる前にノウハウを

 オートバックスセブンの子会社で自動車関連の人材サービスを手掛けるチェングロウスの関口秀樹社長は、「2006年頃には人手不足感はなかった」と振り返る。その一方で「10年先を見据えれば採用が難しい時代が来るのは間違いないだろう」と当時抱いていた危機感を話す。

 2006年7月にオートバックスグループのFC法人10社で協同組合オートサービス・インターナショナル(ASIC)を設立したものの、FCのオーナーからの反応は鈍かったという。

ASICの藤村専務理事(左)とチェングロウスの関口社長(右)
ASICの藤村専務理事(左)とチェングロウスの関口社長(右)

 その時点で採用は問題がなかったため、10年後のことを言われてもピンとこないケースも少なくはなかったようだ。ただ、関口社長の考えは違った。「だからこそ『実験させてくれ』という気持ちだった。人材難になってから着手したのでは間に合わない。困る前に海外の人材を活用するノウハウを蓄積したい、協力して頂きたいと説いて回った」と語る。

 当時の制度では自動車整備の職種は認められていなかったため、認可されていた「金属塗装(板金塗装)」での受け入れを決定。その後、2007年6月にASICを通じてフィリピンから技能実習生の第1期生として5名が来日した。

 技能実習制度はアジア15カ国が対象だが、同社がフィリピンに絞ったのには理由がある。「色々な国を回ったが、やはり英語でコミュニケーションできる点が大きい。日本人側も学校で習っているので、単語レベルでも意思疎通ができるという期待があった」(関口社長)と明かす。

 それでも当初はコミュニケーションや生活習慣の違いに苦労があった。ただ、ASICの藤村勝専務理事らが定期的に配属先の店舗を訪問して実習生から相談を受けたり、指導役の日本人と面談を行ったりと、お互いを理解し合って徐々に課題をクリアしていった。

 新たな人材が加わることでプラスの面も大きかった。藤村氏は「仕事への取り組み姿勢は非常に真面目で、タイヤ交換やオイル交換といった作業は早々にマスターしてもらえた」と話す。「大きな声で挨拶をして『ピットが明るくなった』と言ってくれたオーナーもおり、『想像していたより良かった』と徐々に口コミが広がっていった」

 その後、2010年代に入り、様々な業種で人手不足が顕在化し、整備士の数も年々減少。当初懸念していたような時代に突入する中で外国人材を活用することの価値は高まっていった。

「特定技能2級」への期待

 2016年4月には技能実習の職種として「自動車整備」が追加されたことにより、業務の範囲が拡大した。それまでは、店舗に塗装ブースがあることなどが条件だったが、「自動車整備」としての受け入れに変更、受け入れ人数も増加していった。さらに、2019年4月には新しい在留資格「特定技能1号」が施行され、同年9月にはFCチェーンのユーエイが運営する「スーパーオートバックス KUKI」(埼玉県久喜市)に勤務する実習生が自動車整備分野で初めて特定技能外国人としての許可を受けた。これにより本人は更に5年間の在留が可能となった。

 技能実習の期間を終了して母国で活躍するケースも多い。その中にはオートバックスセブンが資本業務提携し現地でカー用品の販売・整備を行っているモテックグループの店舗で勤務したり、自ら整備工場を立ち上げたりするなど、日本で培った技術や知識を活かす――まさしく高度な自動車整備技術が国際貢献につながっているケースも現れてきている。

 現場からは「せっかく育成した人材を数年で手放すのはもったいない」という指摘もある。関口社長も「そうした声は聞かれる。それこそリーダークラスになってずっと日本で働いてほしいとも思う」と力を込める。

 今、期待するのは自動車整備の「特定技能2号」の実現だ。「2号」は現時点では建設と造船・舶用工業の2分野に限られているが、「『日本の先進的な自動車整備技術を学びたい』という海外の方は多い。技能実習で3年、特定技能で5年追加され合計8年間、さらに『特定技能2号』が実現すれば、日本でずっと働き続けることができる。当社にとっても海外人材にとってもウィンウィンになる」と考える。さらに、「日本でせっかく取得した自動車整備士資格を持ったまま帰国しなければならない――こんなにもったいないことはない」とも話す。今後は人材がどれだけ優秀なのか、事業者が頼りにしているのかという事実を行政へ働きかけていく考えだ。

 少子化は日本だけの問題ではなく、現在は各国が優秀な人材を取り合う状況になっているという。特に整備人材はここ数年、海外の自動車メーカーなどもアプローチを強めている。

 それでも関口社長は「日本のライセンスは世界で通用するレベルだ」と胸を張る。「日本で先進技術を学ぶ意味をしっかり打ち出して人材を確保する。クルマは次々に進化し、人材のバージョンアップも必要になる。そういう人間を生み出して、国内の整備需要に応えていくことが国際貢献にもなる」と将来を見据える。

 藤村氏は「その入口となるのが技能実習生だ。現在は年間70~80名を受け入れているが、そのボリュームを広げ、同時に質を高めていくことが重要だ」と意気込み、一層の拡大を図るためにフィリピン以外の国での募集も検討を進める。

 かつては“出稼ぎ感覚”の実習生もいたのかもしれない。その一方で、応募者の中には最初から日本で8年間働くことを想定し、「その先も」と、自らの人生を賭けて、覚悟を持って来日する人もいる。外国人が欠かせぬ戦力になってきた日本で、実習生らが与える影響は今後一層大きくなっていくだろう。外国人が「ずっと働き続けたい」と思えるような環境整備も求められていきそうだ。


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