旭産業株式会社  石田明義代表取締役社長  「タイヤ空気圧の計測は精度が命」

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カテゴリー: インタビュー, 特集

 市場でSUVが成長しタイヤは大径化が進む。EVも増加しており、タイヤの使用環境はよりシビアになる一方だ。タイヤの性能をフルに発揮させるためには、空気圧を適正な状態で保たなければならない。その大前提は基準器となるタイヤゲージの計測精度が正確であること。タイヤゲージの専門メーカー、旭産業(東京都大田区)の石田明義社長に、タイヤゲージの精度の重要性について聞いた。

 

 ゲージの精度チェックを定期的に。年に1度は校正を

 

石田明義代表取締役社長
石田明義代表取締役社長

 ――タイヤゲージを通じて、空気充てん作業の現場での問題点が浮き彫りにされるのでは。

 

 「当社はタイヤゲージのメーカーですので、製品を企画・開発し製造するだけでなく、販売とその後のメンテナンス対応や修理、校正を行っています。現在、全国から月に300台程度、修理や校正などアフターサービスの依頼があります。

 その際に当社にとってとても重要なことに直面します。それはなにか。製造し販売したタイヤゲージがどういう状態で戻ってきたか、ということです。当社はそのデータをこまかくとり、積み重ねるという取り組みを長年にわたって続けてきています。蓄積してきたこれらのデータを開発部門にフィードバックし、製品の改良や新製品の企画のバックボーンとして活かしています。

 また、戻ってきたタイヤゲージがどういう状態だったのかを分析することで、タイヤゲージが使われている現場の環境を推測することができ、実際にお使いいただいているお客様の声が聞こえてきます。

 

 修理の依頼があったタイヤゲージを分解すると、圧縮空気の質があまりよろしくないな、と感じるケースに非常に多く行きあたります。それはどういうことを意味するのか。

 コンプレッサーで空気を圧縮し放出すると、水分ができてしまいます。コンプレッサーの圧縮空気をそのままタイヤに使うと、空気と一緒に水分まで充てんすることとなってしまうのです。水分を含んだ空気がタイヤチェンジャーやタイヤゲージを通過してタイヤの内部に充てんされる。スチールホイールの場合はとくに鉄錆の原因となります。汚れが水分に付着して運ばれてしまうこともあります。タイヤ本体の内部にダメージを与えかねません。

 そのような水分を含んだ空気がタイヤゲージを通ることで、ゲージにもダメージを与えます。それが蓄積するとゲージの精度にも大きく影響します。回収したタイヤゲージを分解し清掃すると、赤くサビてしまった部品が出てくることがあるのです。そのような部品は交換しなければなりません。以前と比べると徐々に減ってきていますが、しかし現在でもとても多くみられます。タイヤゲージの修理依頼のうち、半分以上はこのようなケースです。

 修理・校正したゲージをお客様にお戻しするときに、コンプレッサーのドレン管理を適切に行っていただきたいということをお願いしています。コンプレッサーの出力側にエアードライヤーという水分を除去する機械を取り付けて、できるだけ乾燥した空気を使っていただきたい。水分の含まれた空気がタイヤゲージやタイヤの内部など、一連の作業ラインに入らないような処置を施すことがとても重要です」

 

 

 ――コンプレッサーのドレン管理以外では。

 

 「タイヤゲージは測定器だということを、改めて訴えたい。精密機器ですので、なるべく慎重に扱っていただきたい。たとえて言えば、時計やスケール(秤・はかり)と同じようなもので、内部は精密な部品で構成されています。時計やスケールを使うときはぞんざいに扱うことはあまりないのではないでしょうか。

 しかし、タイヤゲージの姿・形から類推されてしまうのでしょうか、あるいは使われ方からなのでしょうか、それが測定器ではなく、工具の一つとして無造作に扱われているようなのです。

 タイヤ整備の現場は常に忙しく、時間に追われています。その忙しさから、タイヤの空気測定の作業が終わると、ついポーンとゲージを投げてしまう、うっかりとピットの床面に落としてしまうということがあるようです。

 タイヤゲージに強い衝撃が与えられますと、精度に影響が及びます。修理を依頼されたゲージをみると、故障の要因が衝撃によるものと推測されるケースも多いのです」

 

 

 ――タイヤゲージが正確かどうかを確かめるために必要なことは。

 

 「タイヤゲージの精度が正しく保たれているのか、ということは非常に重要なテーマです。適正なタイヤ空気圧の充てんをと呼び掛けても、肝心のタイヤゲージの精度が正確でなければ大きな問題となります。

 

『SC−70』
『SC−70』

 当社では、タイヤゲージの精度を測定する精度チェッカーを開発し、市場で展開しています。お手持ちのタイヤゲージを接続して、その精度誤差を調べる『SC−70』=写真=という製品がそれです。操作部を機器本体の表面パネルに集約させたコンパクト設計で、持ち運びに便利な専用ケースに本体を入れたままで操作することが可能なアタッチメント方式を採用しています。電池とACアダプター、二つの電源に対応していますので、さまざまな作業環境下で使用することができます。

 また、コストパフォーマンスに優れる簡易型のデジタル・イージー・マスターゲージ『DEM−90』を発売しており、お客様から好評を得ています。タイヤの空気圧を高精度で測定できるものですが、手持ちのタイヤゲージを接続することでその精度をチェックすることが可能という、測定とチェックの1台2役の機能を備えています。

 

 測定器であるタイヤゲージは精度が命。ですが、ゲージを構成する部品には経年によって劣化するものがあります。使用頻度や使用環境にもよりますが、精度誤差が許容範囲を超える前に、1年に一度は校正に出すことをお勧めしています。

 考えかたとして、ゲージの精度を常に管理しておくことで、安心して、また自信をもって作業することができます。タイヤ空気圧に関する作業に対するお客様からの信用性も高まります。

 

 4月7日を『タイヤゲージの日』としたのは、タイヤゲージにもっと関心を持っていただきたい、ゲージの精度がいかに重要かを認識していただきたいとの思いから、『4月8日 タイヤの日』の前日をその記念日として、2007年に制定したものです。

 

 先進技術を利用して安全運転をサポートするASV技術搭載のクルマが普及していますが、その整備の際に電子制御装置の校正・調整を行うエーミング作業が必須となります。このエーミング作業の大前提が、タイヤ空気圧を所定の値に調整すること。それが作業の第一歩目となるのです。

 CASEやMaaSという言葉で代表されるように自動車技術は大きく変革しており、自動車の性能を引き出すタイヤの重要性は増すばかりです。適正なタイヤ空気圧は、精度の高いタイヤゲージをお使いいただくことで担保されます。

 

 タイヤゲージという製品は、外見上ではあまり大きな変化をみてとれません。しかし、その内部に目を移すと、部品は進化し、性能はアップグレードしています。当社は製品の改良を重ね、精度向上に取り組み続けています。

 安全訴求の〝要〟は繰り返すことだと思っています。タイヤゲージのメーカーとして、当社は作業現場で使用されているタイヤゲージの『不良率0%』を目指します」


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