伊藤自転車商会タイヤサービス 日常を足元から支え続ける

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カテゴリー: ディーラー, レポート

 今回訪問した伊藤自転車商会タイヤサービス(長野県伊那市美篶3132-1)は国道361号線、「信州伊那アルプス街道」沿いに店舗を構えている。敷地は広く、ダンプカーも入るピットには様々な機材が並び、タイヤのショールームも併設されている。地域に根差し、地元の顧客を大切にしながら営業を続けてきた同店の成り立ちや取り組みを代表の伊藤英幸さんに取材した。

親近感のあるお店作りを

伊藤自転車商会タイヤサービス
伊藤自転車商会タイヤサービス

 伊藤自転車商会タイヤサービスは、伊藤英幸さんの父が創業した。伊藤さんの父は自転車のロードレースの選手だったという。選手活動の傍ら、自分で自転車の修理をしているうちに、近所の人々からも自転車の修理を依頼されるようになった。さらに、溶接もはじめ、車社会になった頃には車やスチールホイールの修理なども手掛けたそうだ。やがてタイヤを扱うようになり、現在はタイヤ販売店として営業している。店名に“自転車”とつくのはそのためだ。

 美篶(みすず)には、伊藤さんの祖母の代から住んでいるという。同店は、正確には不明だが、昭和20~30年頃に創業し、60年以上はこの地で営業を続けている。
 2代目となる伊藤さんは、高校卒業後にヨコハマタイヤ千葉販売に入社。松戸営業所・八千代営業所で4~5年のキャリアを積み、23年ほど前に地元に戻った。数年前までは父母と三人で業務を行っていたが、現在は一人で店舗を切り盛りしている。

代表の伊藤英幸さん
代表の伊藤英幸さん

 店舗がある美篶は、同じ伊那市の高遠町と伊那インターの中間あたりに位置する。周囲には水田や畑が広がっており、山にも近いエリアだ。高遠町方面にはダムもある。農家や山林の管理に従事する人々、建設会社が多く、高遠方面のダムに向かうダンプカーの交通量も多いという。

 現在、伊藤自転車商会では大型トラック向けタイヤから乗用車用、自転車用タイヤまで幅広く取り使っている。タイヤの売上は、以前は生産財と消費財の割合が7:3くらいだったそうだ。先代である伊藤さんの父が溶接をやっていたこともあり、ダンプカーのドライバーの利用が多かったという。今の割合は乗用車のユーザーが増え、「6対4か5対5くらい」と伊藤さん。

 売上全体としてはここ数年あまり変動せず安定しており、新型コロナウイルスの感染拡大による影響も今のところ少ないという。ただ、伊藤さんによると、同店を利用するダンプカーのドライバーは近隣のダム工事の入札を取りにくくなっているらしく、来店は2~3割下がっているようだ。

 また、ダンプカーに関しては、ここ10年程の流れで、再生タイヤや中古タイヤの持ち込みが増加したという。さらに、ここ最近は通信販売で購入したタイヤの組み込みを依頼するユーザーも多いそうだ。

 これについて、伊藤さんは「本当はタイヤも買っていただければいいのですけど」とした上で、「そういうお客さんが増えたおかげで、海外の知らないタイヤを目の当たりにすることができるようになった」と前向きに捉えている。

 あわせて、降雪地帯にあることからスタッドレスタイヤへの交換の依頼は多く、その時期はかなり忙しいようだ。業務を一人でこなしているため、来店が重なるとどうしても待ち時間ができてしまう。最近は時間を決めたり、近所の人であれば車を置いて行ってもらったりしているという。「一人でやっているということをご理解いただいているお客さんは『いつがいい?』とか『一日くらい置いておくよ』と言ってくれる方も多く、うちとしてはとても助かっている」と伊藤さんは感謝をにじませる。

ピット
機材が並ぶピットの様子

 伊藤さんは仕事について、「地元の人たちで成り立っていると言えます。そこはとても意識して、感謝をするようにしています」と話す。

 また、「『ここにお店があるからモノを買う』のではなくて、『人から買う』というように考えると、父の代から来ているお客さんが、父が亡くなった後も来てくれるというのはとてもありがたいことで、言葉や態度に出すようにしています」と語った。

 あわせて、初めて来る顧客にも気持ちを許してもらえるようなお店作りに取り組んでいるという。なるべくタイヤ以外のことについても会話して覚えておき、2回目の来店時に前回の話題を振って、緊張をほぐすなど、親しみをもってもらえるような接客を心がけている。

 また、インターネット通販で買ったタイヤを何回も持ち込む人もいるが、対応を続けていると、店舗でタイヤなどを購入してくれるようになることも多いそうだ。

 今年は、確保できる利益はしっかりと取って、「10年選手、20年選手」になってきた機材がいつ壊れても大丈夫なように備えたいという。持ち込みが多くなってきたので、工賃も取れるところはしっかり取れる状態を目指す。

 「父の作ってくれた店ですし、どんどん大きく、色々活性化させていきたいとは思いますが、このご時世なので、まずは現状維持をしていきたい」と目標を定めた。

 さらにその先は、現在の顧客となっている地元の方々に加え、身近にいながらまだ来店したことのない人たちにも来てもらえるようになりたいと展望している。

 伊藤自転車商会は自転車に始まり自動車、タイヤで美篶の人々の足元を支えてきた。これからも地域に根差しながら、通勤・通学や農作業、運送など日常を作る交通を支えていく。


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