東洋ゴム マレーシアの2工場を軸にアジアで攻勢図る

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カテゴリー: レポート, 現地

合計で年産1400万本も

最新設備を導入した新工場

最新の設備を導入した
最新の設備を導入した

 新工場「トーヨータイヤマレーシア」が稼働を始めた。年産250万本からスタートし、設備が整う2015年度までに年産500万本まで能力を引き上げる。敷地面積は東京ドーム10個分に相当する60万平方メートルと広大で、将来的には年産1000万本まで拡張することが可能だ。

 生産品目の違いで単純比較はできないが、すでに同国へ進出している独・コンチネンタルのケダ工場(年産450万本)やプタリン・ジャヤ工場(年産200万本)および米・グッドイヤーのセランゴール工場(日産7000本)を上回り、生産能力はマレーシアトップとなる見込み。まずTOYO TIRESブランドのハイパフォーマンスタイヤ、プレミアムタイヤの製造から始め、いずれはNITTOブランドも生産する計画だ。

 工場長にはシルバーストーン工場で製造部門の責任者を務めていたマレーシア人のマイク・トー氏を起用した。工場の従業員数は2015年時点で800名を予定しており、4直3交代、年間340日稼働する。現地でこれだけの規模の工場は見当たらず、地域の雇用創出に貢献している。

 現地製造販売会社トーヨータイヤマレーシアの笠井完二社長は、「新工場のコンセプトは①高性能②高品質③スキルレス④エコロジカル(省資源)の4つ」と説明する。

 とくにタイヤ生産の新工法「A.T.O.M.」の要素技術を全面的に導入したことが大きな特徴。北米工場に導入しているような完全自動ではないが、「自動化率ではなく、完成した製品のレベルが最も重要」(中倉会長)とし、設備コストと品質のバランスがとれた設備になっている。生産工程におけるリードタイムの短縮やプロセスの削減を実現し、ユニフォミティに優れた高性能タイヤを生産する計画だ。

 こうした一部を人間がサポートする手法は2011年12月に操業開始した中国・張家港工場でも採用しているが、より進んだ技術を投入したことで、これまで以上に高効率かつ高生産性が期待される。

 スキルレスについては、生産工程の自動化とIT技術を採用するこにより、特殊技能を必要としない「オペレーターに優しい工場」となっている。

 エネルギー効率は、日本の既存工場と比較して約3割向上させた。最新鋭の生産設備で、製造プロセスにおける省エネルギー化を図るとともに、事務スペースには太陽光発電やLED照明を採用した。年間を通して気温が高い土地であるため、成形工程の天井は熱気を逃しやすくし、空調の効率が良くなるような工夫が施されている。

 ここで生産されるタイヤの約85%が輸出用。工場から車で1時間ほどの場所にあるペナン港からアジア最大級の国際港であるシンガポール港を経由し、そこから欧米や中東、オセアニアなどに出荷される。

 マレーシアの新車販売台数は2012年に過去最高の62万7000台を記録した。今年に入ってからも1月~3月累計で前年比14%増と好調を維持しており、今後も安定した成長が見込まれている。

 従来はコンパクトセダンが主流だったが、ピックアップトラックやMPV(マルチパーパスビークル)のような多目的車も増加傾向にある。さらに政府は環境対応車の拡充を政策として掲げており、今後はエコカーの構成比も高まっていくとみられる。

 多彩なニーズが求められる市場の中でプレミアムタイヤや低燃費タイヤの供給を強化し、競争を勝ち抜いていく。


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