横浜ゴム「GEOLANDAR X-AT」ドレスアップユーザーに新提案

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カテゴリー: レポート, 試乗

GEOLANDAR X-AT

 横浜ゴムは7月下旬に群馬県吾妻郡の軽井沢スノーパークで「GEOLANDAR X-AT」(ジオランダー・エックスエーティー)を発表し、周辺一般道と浅間サーキットで試乗会を開催した。アグレッシブな外観と快適性を両立した新商品の性能を体感した。

ATとMTの中間カテゴリーに投入

 横浜ゴムが9月から国内で発売する「GEOLANDAR X-AT」は、オンロードでの快適性を求めながら、ドレスアップを楽しむユーザー向けに開発した。

「GEOLANDAR X-AT」
「GEOLANDAR X-AT」

 商品ポジションはオールテレーン(AT)とマッドテレーン(MT)の中間に位置する。ここ数年、ATは環境規制や快適性を求める声に対応してオンロード嗜好が強まる一方、MTはオフロード性能やデザインの要求が高まっていた。同社は、20年前と比べてATとMTの商品カテゴリーが離れていると分析し、その間を埋める新商品の投入で細かなユーザーニーズへの対応を目指す。

 さらに、近年は国内でオフロード走行を想定したフレームタイプのSUVや、ピックアップトラックの販売も増加。だが、こうした車両のドライバーでも実際にオフロードを走るケースは少なく、デザインを重視したオフロードカスタムのニーズが拡大しているとされる。

 消費財製品企画部の小島弘行氏は、「ジープのユーザーも8~9割がオンロードで使用し、『MTはずっと装着していると音が気になる』『MTとATの中間はないのか』といった声も挙がっていた」と話す。

 これらの市場動向を受け、新商品はオフロードタイプのSUV、ピックアップトラックのチューニング車両をターゲットに“エクストリーマーのためのオールテレーンタイヤ”として展開。サイドブロック部のデザインが両面で異なることが特徴で、セリアル側のアグレッシブな“大型ブロックタイプ”と、ラグ感が強くアメリカンなイメージを演出する“ラグタイプ”から好みの面を車両外側に装着できる。

 オフロードの性能面では、トレッドパターンのセンターブロック配置を最適化して強度とグリップを向上したほか、サイプと細溝はタイヤ幅方向に連結して多様な路面でのトラクション性能を確保。ショルダーブロックは大小2種類を交互に配置して高いエッヂ効果を実現した。

 ショルダー溝と縦溝の底には凸状のストーンイジェクターを設け、排土・排石・排雪性能を高めつつ、外的要因から溝底を保護。さらに、ブロック間に配置したブリッジがブロックの倒れ込みを抑制し、操縦安定性や耐偏摩耗性能を発揮する。

 ワイド設計としたトレッド部は高いトラクション性能と耐偏摩耗性能に貢献。加えて、全サイズに大型リムプロテクトバーを採用してホイールの保護も図った。

 タイヤ内部は、3プライ構造のナイロンフルカバーを採用した強化構造で、優れた耐久性や耐パンク性能を達成。また、MT系コンパウンドを搭載して耐摩耗性と耐カットチッピング性能を確保した。

 一方、快適性のニーズにも応え、最新のAT系のピッチ数・配列を応用してパターンノイズを低減。さらに、MT系より溝面積が少なく、トレッドをジグザグ溝としたことも静粛性に寄与する。

トラクションと快適性を体感

GEOLANDAR X-AT
「GEOLANDAR X-AT」

 浅間サーキットでは、トヨタ「TRDハイラックス」「ランドクルーザープラド」「タンドラ」、ジープ「JKラングラー」に新商品を装着し、フラットダート(砂、砂利)の林道やダート(土)コースを周回。コーナリングや上り坂のトラクション性能などを確かめた。

 当日は降雨の影響で路面が滑りやすい状況だったが、カーブでも外に膨らむことなく走行できる。何周かコースを回った後もタイヤにはほとんど泥が詰まっておらず、ATでありながらオフロード性能も担保していることを証明する。

 また、「通常のATクラスだと厳しい」(担当者)斜面でもしっかりと上りきることが可能だ。さらに、林道などではパンクも起こり得るが、「新商品はATに比べて耐カットや耐摩耗性に優れており、外傷を抑えられる」とメリットを話していた。

「GEOLANDAR X-AT」
「GEOLANDAR X-AT」

 オンロード試乗はジープ「JLラングラー」、フォード「ラプター」、トヨタ「ランドクルーザープラド」を使用した。舗装路では、特に「プラド」に乗車した際、アグレッシブな見た目からは想像できないような音や乗り心地のレベルの高さを感じることができた。

 一般的にブロックパターンのブレーキ性能は通常の夏タイヤに比べると下がってしまうが、担当者は「このパターンに合った構造やコンパウンドを選択しており、ブロックのよれも気にならない」と自信を示す。

 同社では、本格的にオフロード走行を楽しむ場合はトラクションやタイヤの外傷などを考慮してMT系の製品を推奨している。ただ、ドレスアップをメインとするならば、ダート走行も可能な「GEOLANDAR X-AT」は、ルックスと快適性を両立した貴重な選択肢と言えるだろう。

 発売サイズは16~18、20インチの10サイズで、基本的にリフトアップ、カスタム車両向けのサイズ展開となる。

ユーザー密着型の活動を推進

 野呂政樹取締役常務執行役員は、中期経営計画のもと「ホビータイヤ戦略では、車をこよなく愛してやまない人たちと共に車文化を支えていくべく、あらゆる自動車ユーザーの趣味に対応する商品を開発している」と語る。

野呂政樹取締役常務執行役員
野呂政樹取締役常務執行役員

 「GEOLANDAR X-AT」もホビータイヤの新商品だ。ジオランダーブランドでは、スタンダードラインの4商品でマッドテレーンからハイウェイテレーンまで対応。さらに、エクストララインのXシリーズに、「GEOLANDAR-X MT」と「GEOLANDARX CV」、今回の新商品をラインアップし、多様化するSUVドライバーに密着した商品展開を実現する。

 また、中期経営計画ではユーザーとのコミュニケーションの活性化も戦略の一つ。昨年からジオランダーブランドは、アウトドアイベントへの参加やエンドユーザーの試乗会などを積極的に行っており、こうした取り組みは継続していくという。

 タイヤメーカーにとって情報収集の場となる一方、エンドユーザーからはメーカーと直接対話する機会として好評を得ており、小島氏は「ユーザーと接する場面を今後も増やしていきたい」と話していた。


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