TOYO TIRE セルビア工場が本格稼働 事業戦略の要に

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カテゴリー: ニュース

 TOYO TIRE(トーヨータイヤ)は12月14日、セルビア新工場(インジヤ市)が本格稼働したのに合わせて現地で開所式を開催した。新工場は同社グループにとって世界8カ所目、欧州エリアでは初のタイヤ生産拠点となる。市場競争力の高いタイヤの生産供給基盤として来年下期にはフル生産に入り、欧州市場での地産地消メリットの最大化、北米市場向け供給体制の強化にも取り組んでいく。

 開所式には、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領をはじめとした政府関係者や取引先など約140名が参加した。挨拶に立ったTOYO TIREの清水隆史社長は、「事業戦略上、新工場は新たな要になる」と話した。

(左から)アレクサンダル・ヴチッチ大統領、駐セルビア特命全権大使の勝亦孝彦氏、清水隆史社長
(左から)アレクサンダル・ヴチッチ大統領、駐セルビア特命全権大使の勝亦孝彦氏、清水隆史社長

 同社は差別化された付加価値の高い製品を強みとし、これまで北米市場を基軸にグローバルでの事業展開を推進してきた。こうした中、セルビア工場は今後の成長戦略を実現する第一歩と位置付けられており、2019年11月に開設した独R&Dセンターと連携してコスト競争力と高い技術力を追求していく。

 新工場の投資額は約488億円で、主に13~22インチクラスの乗用車用やSUV用、ライトトラック用タイヤを生産する。7月に一部生産を始め、12月には主要設備が本格稼働した。現在もフル生産に向けた投資を継続しており、2023年下期には年産500万本(乗用車用タイヤ換算)の生産体制を確立する計画。工場運営が軌道に乗った後には需要に合わせて拡張も検討する。

 また、工場にはERP(統合基幹業務システム)やMES(製造実行システム)といった技術を導入。各工程を“見える化”し、高い生産性を有する設備を連携させて生産管理体制を最適化する。さらに、工場に隣接して直線720m、周回路1690mのテストコースを設けた。この施設で実車試験を行い、欧州地域で定められている法認証に対応した評価を効率良く実施して製品をタイムリーに展開することが可能になる。年内は需要が旺盛な北米向けの供給を優先してきたが、来年から欧州向け出荷も本格的に始める。

 セルビアは低い税率を適用する特恵関税制度や自由貿易協定により、日本や米国から欧州へ輸出するよりコスト面で有利で、採用でも優秀な人材を確保しやすいという。また外資誘致にも積極的で様々な優遇策が導入されているほか、将来的にはEU加盟に向けた経済改革の動きが進展すると見込まれている。

 なお、仏ミシュランや米クーパー、中国のリンロンタイヤがセルビア国内に生産拠点を構えているほか、完成車メーカー、部品メーカーも複数進出している。

現地大学などと研究開発で連携

セルビア工場
セルビア工場

 開所式で挨拶に立った清水隆史社長は、「自動車産業が大きな変革期にある中、サステナビリティ意識の高まりと相まって、世界的にも取り組みの先行する欧州地域を中心にクルマ社会にかつてないビッグバンが起ころうとしている。タイヤに期待される役割もより難易度が高まってきている」と指摘。その上で、「新工場はドイツのR&Dセンターと連携して付加価値の高い事業構造を実現する技術戦略上の重要拠点として位置付けている。最先端の材料技術によって開発したタイヤをセルビア工場で生産し、工場敷地内に設けたテストコースでの実証試験によって、変化の速いマーケットに対してニーズの高い魅力ある商品をスピーディーに供給していく」と話した。

 また、「当社には、社会における存在価値、使命を明文化した理念がある。お客様の期待や満足を超える感動や驚きを生み出し、豊かな社会づくりに貢献すること――これを仕事の起点に置き、体現・実現していくため、経営幹部をはじめ、一人ひとりが挑戦心をもって、お客様に喜んで頂けるモノづくりに取り組んでいく」と決意を述べた。

 さらに、セルビアは国として質の高い労働力創出プログラムを打ち出していることから、将来有望な人材の育成と確保に向けた支援がスタートしたことを明らかにした。現地の大学や研究機関と、TOYO TIREの技術部門が共同でゴム材料などの研究を行っていく予定。


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