横浜ゴムのタイヤセンサー中長期技術開発ビジョン “センサータイヤ”が生み出す価値

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カテゴリー: タイヤ事業戦略, 特集

 横浜ゴムは2月、乗用車用タイヤセンサーの中長期的な技術開発ビジョン「SensorTire Technology Vision」(センサータイヤ・テクノロジー・ビジョン)を発表した。現在、タイヤメーカー各社がCASEやMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)など将来のモビリティ社会を見据え、タイヤのセンシング技術の開発を進めている。IoT(モノのインターネット)化推進の波がタイヤ業界にも迫る中、同社のタイヤにおけるセンサーの活用ビジョンについて消費財製品企画部の白井顯一氏に聞いた。

 ――タイヤをセンサー化する意義と背景は。

横浜ゴム消費財製品企画部の白井顯一氏
横浜ゴム消費財製品企画部の白井顯一氏

 「これからのCASE時代に対応するために開発しています。例えばパンクや路面状態の変化など、人間が感知するような情報をタイヤで検出できれば自動運転の安全性向上に寄与できるはずです。

 また、空気圧や摩耗状況を検知できれば、適切なタイミングでタイヤ販売店やカーディーラーなどに誘導し、点検を促すことで安全性や経済性をタイヤ側から高めることができます。このように、ユーザーにとって有用なサービス創出につながると考えています」

 「今回発表したビジョンでは、センサーをバルブに装着するのではなく、タイヤの内面に貼付することを想定しています。内部に貼り付けるセンサーの開発ではタイヤのテストが必須になりますが、安全性のためには高速走行や高荷重で試験を行う必要があります。そのようなテストはTPMS(タイヤ空気圧監視システム)メーカーでは難しく、我々タイヤメーカーだからこそ実現できると思います。

 また、当社は過去にキーボードの鍵盤など、導電性ゴムを利用したセンサーの開発を行っていました。そのような流れからバルブ式のタイヤ空気圧センサーの開発も行ってきたことも背景となっています」
 
 ――どのようにサービス展開していきますか。 

「SensorTire Technology Vision」の概念
「SensorTire Technology Vision」の概念

 「空気圧状態を確認できるだけではなかなか商売になりません。摩耗状態や路面状況なども分かるようになれば、新しくセンサーを装着する意味や価値が生まれる可能性もあります。

 サービス展開するにあたっては、ユーザーに価値を提供した上で『もっとこういうことができればいいのに』というリクエストに応えていくことで、進めてていく形になると思います。

 今後はタイヤメーカーといえども、ソリューションビジネスにも取り組んでいく必要があります。お客様の困りごとを解決するために、どのようにセンサーのデータを活用していけばいいのかを模索している最中です。

 例えば、車は動き出すと空気圧が上がり、止まると低下します。こうしたデータを連続して取得していれば、車の稼働率を算出することが可能になります。さらに、荷重情報が分かれば、トラックが空荷またはどの程度積載して運行しているのか、その時間なども把握できます。事業者の困りごとに我々がシステムで対応し、サービスとして提供していく――タイヤやセンサーだけを使って頂くのではなく、タイヤメンテナンスサービスに関わる付加価値を提案していきたいです」
 
 ――タイヤの製品開発に対する効果は。

 「タイヤは空気圧が変わると性能が変わります。我々やテストコースの担当者は正確な測定ツールを使用して頻繁に空気圧を確認していますが、走行中のデータそのものは取得していません。

 車が走っている間のデータを記録できれば、走行中の空気圧の上がり方や、製品ごとに上下しやすさがあることが分かるかもしれません。こういったデータを含めてより深く解析できるようになれば、さらに精度の高い開発が効率的にできるようになると期待しています」
 
 ――今後の課題と展望を。

センシング機能とリアルタイム性の強化による提供サービスの向上イメージ
センシング機能とリアルタイム性の強化による提供サービスの向上イメージ

 「現在、新型コロナウイルスの拡大によりお客様とリアルで情報共有ができないことが大きな障壁となっています。ユーザーの困りごとを探る“ヒアリング”は、コロナがある程度収束しないとファーストステップを踏み出せません。すでに、日本全国で小型の自動運転バスなどが走行しており、自治体や大学の研究所で研究している方々も多くいますが、話を聞きに行けない状況が課題になっています。

 今後、お客様のもとへ伺うことができた場合、『どうやって困りごとを解決するツールを考えるか』というアイデアの部分が重要になります。

 また、これからは『当社のタイヤはセンサーが付いており、様々な付加価値が提供できます』と提案できるようにしなければなりません。そのためにアイデア収集と、それを使用して顧客に提供できるサービスを考えることが一番の課題となっていきます。合わせてそういった技術やサービスを上手く展開し、個々のユーザーやそれぞれの事業所などに対してカスタマイズした商品の開発にも取り組んでいきたいと思います」

横浜ゴムが描く未来像――「センサータイヤ・テクノロジー・ビジョン」

 センシング機能を搭載したタイヤから得られる情報をユーザーに提供することで、新たなモビリティ需要の変化に対応しつつ、人々の移動を足元から支え、安心・安全へ持続的に貢献する――これが横浜ゴムの「センサータイヤ・テクノロジー・ビジョン」が目指す未来だ。

 同社はセンサータイヤで提供するサービスを「センシング機能」と「リアルタイム性」の2つの指標に分類。各サービスに適した機能やデータ分析・予測技術を段階的に構築することでセンシング機能の利活用範囲の拡大を図る方針を示した。また、このビジョンはタイヤをセンサーとして利用することで、タイヤの状態を手軽に把握し、さらに安全に、長く、経済的にタイヤを使用できる仕組み作りのロードマップでもある。

 第1段階では、個人や車両運行管理会社などを対象とした空気圧通知サービスの実証実験から始め、2023年までに摩耗検知機能を追加することを目標に設定した。タイヤの摩耗状況を自動で把握することで、ローテーション時期の通知やフリート向けの効率的なタイヤ点検計画など、省力化に寄与する提案が可能になる。

 第2段階として、路面状態の検知機能を追加し道路の監視などインフラ保守・管理のサポートを行うことなどを想定している。将来的には地図や渋滞、天候の情報などとタイヤのデータを関連付けて分析し、安全な運行ルートの提案といった新たな付加価値情報の提供を目指す。

 また、取得データを様々な情報と組み合わせ、自動運転車両やMaaSに関連したサービスを提供する企業などの安心・安全な車両運行管理を支援することも視野に入れている。

 なお、ビジョンの発表に先駆け、横浜ゴムは2019年の東京モーターショーでアルプスアルパインとの先進的乗用車用タイヤセンサーの共同開発を発表している。現在、両社では、タイヤ空気圧検知に加え、摩耗や路面状態を検知し、取得データをデジタルツールで処理・管理するソリューションビジネスの展開を想定した研究開発を推進している。また、今年2月には路面検知システムについてもアルプスアルパイン、㈱ゼンリンと協力し、取得データを地図情報と紐づける実証実験をスタートした。

 まだデジタル化されていないタイヤを車両とリンクすることで、モビリティの安全性やユーザーの便利性を高め、貢献していく。


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