【ミシュラン】日本の開発拠点「太田サイト」が担う役割の大きさ

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カテゴリー: レポート, 現地

太田サイト入り口

 日本ミシュランタイヤはこのほど群馬県太田市にあるタイヤ研究開発拠点「太田サイト」を報道陣に公開した。同施設はミシュラングループの中で、フランス、北米と並ぶ3大拠点の一つ。主に消費財タイヤの静粛性能とウィンター性能の研究開発を行っており、ここで生み出した技術を世界に発信する重要な役割を担う。世界のメジャーブランドとの競争が厳しさを増し、また新興企業が急速に技術力を高めつつある中、一層の性能向上に繋げるとともに、新たな技術革新によってグループをリードする。

 1889年に誕生した仏ミシュランは、世界ナンバー2のタイヤメーカーとして現在約170カ国で事業を展開する。研究開発拠点は本社にほど近いラドゥーをはじめ、米国や中国、インドなど約25カ所にあるが、この中でグループの3大拠点と位置付けられるのがラドゥー、米グリーンビル、そして太田サイトだ。

蔭山浩司部長
新製品開発部の蔭山浩司部長

 太田のスタッフ数は約300名。グループ全体のエンジニア数は7000名弱というから人員面では決して多くはない。約3000名のスタッフを抱えるラドゥーと比較すると10分の1だ。一方で基礎研究・先行開発・製品開発の3つの機能を有しているのはラドゥー、グリーンビル、太田の3カ所のみ。これが3大拠点と言われる要因だ。

 ミシュランにとって、基礎研究とはタイヤの量産は度外視して新しいものにトライする部門。先行開発は製品を作るための技術や工場の生産設備、将来の製品の性能やデザインを担う。そして最終的な製品に仕上げて量産化に繋げるのが製品開発となる。

 製品開発本部の蔭山浩司氏(PC/LTタイヤ新製品開発部部長)によると、太田には欧米やアジアなどから、分子や生産技術といった50以上のスペシャリストが在籍しているという。また、欧米があらゆるカテゴリーの研究開発を行っているのに対し、太田は乗用車とライトトラック用タイヤをメインに、ウィンタータイヤの性能とタイヤの静粛性に関する研究開発を行っている。

 特にウィンター性能に関しては、「日本にはアイスバーンのような厳しくもチャレンジングな環境がありノウハウがあったため、2000年代に冬路面全般の研究が任されるようになった」

 それ以前は欧州がその役割を担っていたが、メインとなる開発拠点を移管することは会社としても大きな決定だった。もちろん今年8月に発売した乗用車用スタッドレスタイヤ「X-ICE3+」(エックスアイス・スリープラス)も開発を主導したのは太田だ。

グループ唯一の試験機や次世代タイヤの試作も

室内アイス試験機
スタッドレスタイヤの性能を試験する室内アイス試験機

 施設内ではグループで唯一、スタッドレスタイヤのアイス試験機が運用されている。直径5m、幅1m、全周15mのドラムには様々なアイス路面を再現することが可能で、氷上ブレーキやトラクション性能を評価する。ターゲットによって氷のバリエーションをほぼ無限に変えることができるほか、基礎研究段階で試作した手彫りのモデルをテストすることもある。

 設備の担当者は「現実の道路は一つとして同じ条件は無いため、色々な条件を見ていくことが大事だ。ピーキーな条件のみを重視しても、そこから少し離れると性能が発揮できないのでは意味がない」と述べ、常に“トータルパフォーマンス”を意識することの重要性を話していた。

試作タイヤの成型機
試作タイヤの成型機

 太田サイトには将来に向けた試作タイヤの「生産拠点」もある。ここでは素材の検査から押し出し、混練、成形、加硫まで一連のプロセスが完結できる設備が整っており、開発の初期段階で特殊な構造やゴムを採用したプロトモデルをタイヤの姿に仕上げることができる。

 基礎研究部門からは従来ではあり得ないようなオーダーが入ることもある。「極端に言うと、小石を混ぜることもできる。オーダーに対して『そんなものはできない』ではなく、『どうやるか』を考える」――年間約150種類を試作し、中には日の目を見ない研究もあるが、この自由な発想こそが将来のイノベーションに繋がっていくという強い信念がある。

試作タイヤの加硫機
試作タイヤの加硫機

 ミシュランが日本で事業を始めたのは1964年と50年以上前に遡る。一方、本格的な研究開発としての歴史はまだ浅い。1980年代に日系カーメーカーのビジネスをサポートするため、タイヤの性能解析に着手した後、1991年にミシュランリサーチアジアが設立され(2011年に日本ミシュランタイヤと合併)、材料研究やタイヤ開発がスタートした。

 アイス試験機や試作タイヤの生産設備など投資が活発化したのはさらに2000年代に入ってからだ。蔭山氏は「現在も担当分野の拡大を受けて、拡充を進めている」と話す。これは冬用タイヤとノイズ性能に関してグループ内での重要性がより増してきたことの表れといえそうだ。

 太田サイトの責任者でもある東中一之氏(研究開発本部本部長取締役執行役員)は、「ここには優秀なスタッフがいて、日本人の勤勉さもある。才能ある人材が集まるからイノベーションが生まれる」と期待を込める。

 今後、社会や環境の変化に伴いグループにおける立ち位置が変わってくるかもしれない。こうした中で、ミシュラングループにとって不可欠な拠点として太田サイトが果たす役割に終わりはない。

 関連:【ミシュラン】イノベーションを生み出す理念と哲学


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