ブリヂストンと消防研究センター「救急車用パンク対応タイヤ」公開

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カテゴリー: レポート, 現地

 ブリヂストンは10月28日、総務省消防庁の消防大学校消防研究センター(東京都調布市)で、同センターと共同で研究開発した「救急車・指揮車用パンク対応タイヤ」を報道陣に公開した。新開発したタイヤは実証実験を通じて、パンクが発生しても一定距離を走行できることが確認されている。これまで低偏平タイヤに適用してきたランフラットテクノロジーを応用し、救急車のような重量の重い車両に装着できる“パンク対応タイヤ”が誕生した。

最新ゴムと冷却技術で、重い車両も装着可能に

パンク時のパンク対応タイヤ
パンク時のパンク対応タイヤ

 ブリヂストンと消防研究センターが共同開発した「救急車・指揮車用パンク対応タイヤ」は、「BLIZZAK(ブリザック)VL10 TYPE ES」。タイヤサイズはトヨタ「ハイエース」や日産「キャラバン」向けの195/80R15 107/105Lで、消防本部が所有する救急車や災害現場で指揮活動を行う指揮車を対象に10月から販売開始した。

 新開発したタイヤは、パンクしても時速40km以下で距離50kmまで走行できる。また、寒冷地を含め、一年を通して使用可能なスタッドレスタイヤとなっている。実際に装着する場合、トヨタ車用もしくは日産車用の指定アルミホイールと、TPMS(タイヤ空気圧監視システム)をセットで使用することが必要になる。

チャレンジングなタイヤ開発

 パンク対応タイヤの開発背景には2016年の熊本地震がある。消防職員から、災害現場でのパンクを危険視する声があがったのだ。一般的なタイヤを装着した救急車が傷病者を搬送中にパンクした場合、パンク発生地点で応援の救急車を呼び、患者を乗せ替える必要がある。そのため、病院到着までの時間も長くかかってしまうという。

 こうした状況を踏まえ、消防研究センターが共同研究先を公募。ブリヂストンが採択されて20年3月から共同研究が始まり、22年9月まで様々な検証が行われた。

 ブリヂストンでは当初、救急車のような重い車両を支えるパンク対応タイヤの開発は難しいという声が出ていたそうだ。

 従来、パンクしても時速80kmの距離を走行可能にするランフラットテクノロジーは、低偏平タイヤに適用してきた。この技術を、救急車などが装着する偏平率が高いタイヤにそのまま採用しても、パンク発生時にタイヤが大きくたわんでしまうという。たわみが繰り返されるとタイヤは高温になり、タイヤが破壊されて走行を続けることが困難になる。

 パンク対応タイヤを救急車用に開発するのは「かなりチャレンジング」(ブリヂストンPMO担当の吉野充朗主査)だと考えられた中、同社のプロジェクトチームは主に3つの技術を活用し、今回の新商品を実現した。

サイド補強ゴムが荷重を支える
サイド補強ゴムが荷重を支える

 1つ目のポイントはサイド補強ゴムだ。新商品は、パンク走行時の発熱を抑制し、高温でも壊れにくい特性を持つ最新ゴムを搭載した。

 これにより、従来の補強ゴムと比べて、パンク走行時の耐久性を維持したまま厚さを薄くすることも可能になった。さらに、今回の補強ゴムは通常走行時の温度域では軟らかい特性を持つことから、通常走行時の乗り心地も向上したという。

 2つ目のポイントは、タイヤサイド部の冷却技術「クーリングフィン」。これは表面に特殊な形状の突起を設けることで、空気の乱流を促進してタイヤを冷却する技術だ。パンク走行時の温度上昇を抑制し、耐久性の向上を実現している。

 重い車両がパンク対応タイヤのような製品を装着した際の課題――具体的には、パンク発生時にタイヤのたわみが大きくなり、熱が上がりやすい。また、空気圧が失われたときに荷重を支える補強ゴムは、車両重量を考慮して厚くしたいが、ゴムを厚くすると熱がこもってしまう――今回のパンク対応タイヤでは、最新ゴムやクーリングフィンの技術を組み合わせることで、これらの課題に対応した。

クーリングフィン
クーリングフィン

 最後に、ビード部も重要な要素となっている。タイヤは空気が抜けるとホイールから簡単に外れてしまうため、今回のタイヤでは従来品より強固なビードを採用した。

 パンク対応タイヤがセットで装着するTPMSも新たに開発された。これまでブリヂストンでは乗用車用タイヤ向けのTPMSを販売してきたが、今回のTPMSはライトトラック用タイヤ向けとなる。

 新たなTPMSは、乗用車向けよりも高い空気圧を感知できるセンサーを採用し、空気圧設定範囲は180~700kPaとなった。このセンサー送信機4つに加え、受信機1つ、電源ケーブルなどの付属品でシステムを構成。受信機は表示機と兼用になっており、空気圧が正常な状態ではLEDランプが緑点灯するが、空気圧が設定値から15%減少すると黄点灯、30%減少すると赤点灯、220kPa以下で赤点滅する。

もしものときの安心感を

パンク時のパンク対応タイヤを装着した救急車
パンク時のパンク対応タイヤを装着した救急車

 共同研究は、サマータイヤとして使用できるパンク対応タイヤの検討から始まった。ただ、救急車は一部地域を除き、冬期に全車がスタッ

ドレスタイヤを装着することから、今回はスタッドレスとして開発が行われたという。

 走行実験は、テストコースだけでなく、北海道から沖縄まで計5カ所の消防本部における実際の救急活動でも行われた。その実証実験では、積雪、凍結、台風時といった様々な路面状況や都市部、山間地などを走行。さらに、新商品がスタッドレスタイヤであるため、夏を含め通年使用しても摩耗や耐久性に問題がないかも検証した。

 TPMSに関しては、車体の大きい救急車でもセンサーが検知した空気圧を受信機にデータ送信できるのか、さらに、医療機器などが搭載されていてもTPMSが正しく作動するのかが実証実験を通して確認された。

 共同研究期間中のヒアリングでは、利用者から「安心感がある」といった声が多かったそうだ。新商品を装着すれば、パンクが発生しても50knの距離を走行できるため、隣の県や被災地から離れた地域まで走行できると想定されている。また従来は、パンクの恐れがある荒れた路面を迂回するケースもあったが、パンク対応タイヤを装着していればまっすぐ病院に向かうこともできる。

 さらに、これまで職員が一つひとつチェックしていた空気圧をTPMSで確認できる点も好評だったようだ。

 当日はパンク対応タイヤを装着した救急車に試乗した。車両後部に座り、適正空気圧で会場を一周、右後輪がパンクした状態でも同じコースを走行したが、乗り心地などの違いはまったく感じられなかった。運転手も「後輪であればパンクしても気が付かない」と話す。

 開発中の実証実験では、既存スタッドレスと比較するアンケート調査も行われた。乗り心地やロードノイズ、振動に関しては「やや悪い」という意見もあったが、これら3項目やブレーキ性能について、最も多かったのは「特に変わらない」という回答だったそうだ。

 ブリヂストンでは、今回のパンク対応タイヤは救急車や指揮車を対象に販売し、使用状況などを確認していく考え。さらに今後、商用車向けタイヤなどで補強ゴムやクーリングフィンの活用を検討していくという。

 もしものときの安心感を提供する救急車・指揮車用パンク対応タイヤは、今後の消防職員の活動を強力に支えていくだろう。


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