江戸川合成の「アクアリコート」塗料技術でタイヤ業界に貢献

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カテゴリー: レポート, 現地

 特殊塗料・溶剤の開発や製造、販売を行う塗料メーカーの江戸川合成(埼玉県東松山市)は、昨年8月に再生タイヤ(リトレッドタイヤ)用の水性塗料「アクアリコート」を本格発売した。同社初のタイヤ向け塗料となる新製品の開発背景や今後の展望を営業部の中川怜部長に聞いた。

再生タイヤの仕上げを美しく

 「アクアリコート」は、再生タイヤのサイドウォールに新品タイヤのような艶消しの黒色を再現し、意匠性に寄与する製品だ。国内では、中古であっても新品に近い外観が消費者に好まれることや、大型車に取り付けた際にタイヤは人目につくパーツであることから、仕上がりに対する要求は高い。「アクアリコート」は既に国内の再生メーカーで採用され、実績を積んできたが、昨年8月からさらなる拡販を目指し業界内に広く展開している。

 中川部長は「リサイクルタイヤを作る部材や設備は輸入品が非常に多いと聞いており、日本の塗料メーカーとしてお客様とともに取り組むことに意義がある」と大々的にリリースしたきっかけを話す。

江戸川合成の中川怜部長
江戸川合成の中川怜部長と「アクアリコート」を採用したタイヤ

 現在、リトレッドタイヤ向けの塗料を生産しているメーカーはわずかで、輸入品に頼っている場合も少なくない。海外から塗料を輸入する場合、サプライチェーンの混乱による遅配や、一回の購入量を多くするといった負担があるが、国内塗料メーカーが製造・供給することで無理やムラ、無駄がなくなり、コスト削減にもつながる。

 また、江戸川合成は「塗料を販売して終わり」というスタンスではなく、「最終製品の付加価値向上のために何ができるかを常に考え、お応えする」といった顧客目線でのカスタマイズにも対応している。販売後のフォローも含め、きめ細やかな姿勢が顧客から評価を受けているようだ。

 今回の新製品開発で注力した最大のポイントは外観と環境対応の両立であり、特に“新品同様の艶感”の実現にこだわった。さらに、素材に対する密着性、耐油性といった基本塗膜性能を十分確保している。

 再生タイヤそのものが環境負荷低減に寄与する製品であることから「アクアリコート」では環境影響を考慮し、有機溶剤ではなく水で希釈することができる水性塗料として開発した。また、昨今、全世界的に強化されつつあるVOC規制にも対応する。そのほか、有機溶剤の管理負担や、塗装作業者の健康への影響を軽減し環境性能の高い塗料としての配合を確立した。

 環境負荷の低減を考慮すると使用できる材料が限られるが、適切な原料を模索、検討して配合を組んでいったという。あわせて、顧客と共に実際の仕上がりを確認し、色味や艶感を調整して理想の外観を目指すことに力を注いだ。

 中川部長は「環境に対する要望は非常に高まっている。塗料配合としてできるだけ環境負荷の低い原料を使い、塗装プロセスでは、乾燥工程での熱量削減、塗装工程の簡素化など、包括的に環境貢献に取り組む企業が増えている」とした上で、「我々が環境負荷低減を実現する製品およびサービスの提供でお応えしていくことは今後の命題となる。果敢に挑戦していきたい」と意欲を示す。

 塗料を使用する顧客の「ニーズに応える創造力。」――ユーザーが要求する性能や機能、外観に合わせた製品開発は、同社の大きな特色となっている。

 昨年8月に「アクアリコート」を発表してから半年以上が経過した今年3月時点では、これまで取引がなかった企業からの問い合わせや新規の採用などの反響があった。

 また、今後に向けて新しい塗料の開発の可能性も広がっている。現在は黒色のみとなっているタイヤ用では、多色展開や高寿命化といった、表面に塗料を塗布することによる新たな価値の創造も視野に入れている。

 使用する場面も広がっていきそうだ。再生タイヤの仕上げのほか、「車両点検後にタイヤをきれいに見せる」「新品タイヤの保管時に表面の劣化を抑える」「中古タイヤの外観を良くする」など様々な用途が予想される。タイヤの付加価値を高める意匠性や機能性を付与できる塗料として、今後の需要増が期待できそうだ。

 「アクアリコート」についても、見た目を保ちつつ「傷が付きにくくなる」「汚れが付きにくくなる」といったニーズを探り、機能の追加を検討している。中川部長は「派生製品を新たに開発・展開することで、さらに業界を盛り上げていける。国産の塗料メーカーとして国内のお客様により良い製品を供給できるよう積極的に取り組んでいきたい」と意気込みを表す。

 高い品質や性能を持つタイヤの魅力を後押しする外観の向上や、新しい機能性の付与――塗料による新たな付加価値のプラスは、タイヤの可能性をさらに広げるものになるかもしれない。


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