京都機械工具 新研究開発拠点「けいはんなR&Dオフィス」稼働開始

シェア:
カテゴリー: レポート, 整備機器

 自動車産業が100年に一度の大きな変革期を迎えている中、車両管理の仕方も大きく変わろうとしている。業務の一元化を図るフリートマネジメントサービスはその代表的な例の一つ。フリートマネジメントの基底を成すのは、整備機器・作業工具類のデジタル化であり、PC管理を実現化するソフトウェアやデバイス機器。さらに得られた膨大なデータを蓄積し、いつでもサステナブルに運用することが可能な汎用性の高いクラウドサービスなども不可欠だ。現在、各種業態の企業が独自で、あるいは異業種や大学などの研究機関と手を結び協業を進めながらその開発を急いでいる。

「KTC けいはんなR&Dオフィス」
「KTC けいはんなR&Dオフィス」

 総合ハンドツールの老舗専門メーカー、京都機械工具(KTC)もそれへの取り組みを意欲的に進めている。独自開発した「TRASAS」(トレサス)シリーズがそう。

 タイヤ取扱い事業者に向けて、デジタル化したタイヤデプスゲージとトルクレンチ、ブレーキパッドゲージをbluetoothで繋ぎ点検記録を自動入力する「e―整備」というシステムを提案中だ。

 その同社は今年、創業70周年を迎える。それを機とし、新しい研究開発拠点としてこのほど、「KTC けいはんなR&Dオフィス」をけいはんなオープンイノベーションセンター内に新設。4月1日、稼働を開始した。「TRASAS」シリーズの製品や関連技術を主に研究する場として活用していく。

 「TRASAS」とは、TRAceable Sensing and Analysis Systemの頭文字に由来するシステム。その名の通り、工具や測定具にセンシングの要素を組み込み、測定データをデバイスに送信。それをPCで一元管理することで、作業履歴に基づくデータのトレーサビリティを可能にするものである。

 具体的なモジュールとサービスの主な構成は次の通りだ。

 【IoT工具・計測機器】センサーとマイコン、通信機能を搭載した計測機器。デジタル式トルクレンチ「デジラチェ 『メモルク』」シリーズや、既存の機械式トルクレンチをデジタル化するスマートセンシングデバイス「トルクル」、デジタル式「タイヤデプスゲージ」などがそれだ。

 作業性を損なうことなく高精度なセンシングが可能で、作業記録のデータ通信を行う。

 【点検記録簿アプリ「e―整備」】トルクルやタイヤデプスゲージ等とのデータ通信を担う。「e―整備」の場合、スマートフォンや、タブレット端末に、AppStoreやGooglePlayを通じてアプリをダウンロードし使用する。

 定期点検をはじめ、タイヤの残量点検等の記録簿に測定値を自動記録し、印刷することもできる。

 【作業者用ソフトウェア TRASAS EM】IoT工具・計測機器とのデータ通信を担い、安全性・操作性を担保した作業者向け情報提供を実現するソフトウェア群。

 【総合管理ソフトウェア TRASAS IM】拡張性の高いコンテナ型サービスプラットフォーム。汎用的なAPI接続(自己のソフトウェアの一部と他のソフトウェアの一部の機能をお互いが共有できるようにしたもの。アプリ同士で連携が可能となる)により、作業実績をリアルタイムで確認することが可能となる。

 TRASASプロジェクトリーダー(スーパーバイザー 社長付)の太田省三氏は、「作業精度には機器・工具の品質ももちろんだが、扱うひとの挙動や作業環境も大きな影響を及ぼす。作業はひとが行うものなので、機器・工具でそれを支援することが重要であり、今後は作業者の技能に依存するだけにとどまらず、TRASASを通じてシステム化することで、作業精度の向上を図る。それにより作業の業務効率化と安全品質の向上を目指していく」とする。

 またこのほど新設した「けいはんなR&Dオフィス」について、同社では「このエリアには関西を代表する産学官の先端的研究開発拠点が集積している。このような環境下にR&D拠点を開設することで、今後、情報を積極的に受発信し、産学官の連携を通じて、オープンイノベーションへの取り組みを推進していきたい」としている。


[PR]

[PR]

【関連記事】