ブリヂストン、有機繊維ベルト搭載のタイヤ開発 EVのワイヤレス給電へ貢献

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カテゴリー: ニュース
ホイール内配置のタイヤと送電コイル
ホイール内配置のタイヤと送電コイル

 ブリヂストンや東京大学、日本精工(NSK)、ロームが道路からインホイールモーター(IWM)に直接給電できる「第3世代走行中ワイヤレス給電IWM」の開発を進めている。この研究プロジェクトは東京大学を中心に多くの企業が参加するオープンイノベーションで推進しており、タイヤ・ホイールの構造や材料のほか、制御手法、機械部品など様々な技術が活用されている。

 10月に千葉県の東大柏キャンパスで開いた報道向け説明会で、東大の藤本博志准教授は「2050年には8割が電動車と言われており、リチウムやコバルトが足りなくなるリスクがある。バッテリー容量だけに頼らない方法が必要となる」と研究の背景を話す。

 ワイヤレス給電は、路面に設置した送電コイルや車両の受電コイルを活用して行うもので、停車中の給電はすでに商用化されている。一方、走行中給電は他機関では車体の底に受電コイルを設置する検討が進められているが、東大の研究プロジェクトは車輪側に受電コイルを取り付けた。このため、路面の凹凸や搭載重量の変化によってコイル間距離が変動せず、給電効率を一定に保つことができるのが特徴だ。

ホイール外配置
ホイール外配置

 また、IWMはドライブシャフトなどの部品やモータールームが不要となるため、軽量化や広い車内空間を実現する。さらに、各車輪を独立駆動させることができ、横滑りからの立て直しなど車両の制御も可能となるという利点がある。

 今回の第3世代では、充電系や駆動系、冷却系の部品をタイヤの内側に配置することに成功。小型化に加え、高出力化や高効率化も達成した。受電コイルの設置場所は、ホイール外かホイール内とした。ホイール外の場合は既存のタイヤ・ホイールを使用できるのに対し、ホイール内に設置すると、給電の妨げになる金属異物をコイル間に侵入させないというメリットが生まれる。

 ブリヂストンは、ホイール内への受電コイルの設置を可能にするタイヤを開発した。これは、乗用車用タイヤで一般的に使用されるスチールベルトの代わりに、有機繊維のベルトを搭載したもの。スチールなどの金属が受送電コイルに挟まれた場合には、発熱などのエネルギーロスが懸念されていることに対応した。

 これまで、有機繊維ベルトは航空機用やレーシング用のタイヤに使用されていたが、新たに乗用車向けに開発。スチールベルトに比べて強度を約50%向上し、質量は5%以上低減したほか、運動性能や摩耗性能などは同等レベルを維持した。今後、走行中のワイヤレス給電に適したパターンやサイズ開発などを推進し、来年の実車試験を目指す。

 同日、ロームはIWMで使用するパワーモジュールの低熱抵抗や小型化、高耐久性を紹介。NSKは送電コイルを信号停止線の手前30mに設置するシミュレーション結果を報告した。それによると、約200km走行した場合に走行中給電を行うと、バッテリー充電量が減少しないどころか、微増となることが分かった。

 今後このプロジェクトでは実験と評価を進めつつ、次世代機の試作も進めていく。また、実用化に向けて外部から様々な知見を取り入れながら、2025年に実証実験への移行を予定している。


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