住友ゴムが富士スピードウェイ舞台にセンシングコアの実証実験

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カテゴリー: レポート, 現地

タイヤのグリップ状態を可視化「一瞬の判断求められるレースで有用」

センシングコアのPCモニター画面
センシングコアのPCモニター画面

 住友ゴム工業は15日、「モータースポーツでのセンシングコア実証実験」を報道関係者に公開した。富士スピードウェイで開催の「K4GP FUJI10時間耐久レース」に参加したD−SPORT Racing(ディー・スポーツ・レーシング)チームのミライースに搭載し実験を行った。センシングコア解析技術はレースシーンでどのような役割を果たすのか。かつて「スーパー耐久シリーズ」富士スピードウェイ戦で優勝経験のあるレースドライバー&モータージャーナリスト、瀬在仁志氏をアドバイザーとして迎え、本紙はその現場を訪ねた。

 

 センシングコアは間接式TPMS(タイヤ空気圧監視システム)を応用した、独自のタイヤ接地面解析技術。その基幹はDWS(Deflation Warning System)となる。

 DWSはクルマと路面との唯一の接点であるタイヤをセンサーとして活用し、走行中の変形状態から路面の摩擦係数の変化を測定。タイヤの空気圧の低下を検知する仕組み。

住友ゴム定本氏
住友ゴム定本氏
住友ゴム守田氏
住友ゴム守田氏

 このDWSの機能を拡張した解析技術がセンシングコアだ。オートモーティブシステム事業部企画部課長代理の定本祐氏=人物写真上=、同事業部AS第三技術部の守田直樹氏=人物写真中=の解説によると、タイヤの回転速度信号と、エンジントルクやエンジン回転数、ヨーレート(自動車の鉛直方向の軸に対する回転速度)、ブレーキシグナルという車両から得られる信号をセンシングコアに活用。それにより現在、次の4つの解析を行うことができる。①タイヤ空気圧、②タイヤ荷重、③路面の状態、④タイヤの摩耗状況——。

 今回のモータースポーツシーンでの実証実験は、センシングコア技術で路面の状態とタイヤの摩耗状況を検知し、タイヤの路面への接地状態をリアルタイムに可視化。ドライバーとチームスタッフがその情報を共有することを狙いとしている。

 具体的には、車内に搭載されたモニターを通じカラー3色で段階的に表示されるタイヤの現在のグリップ状態を、ドライバーは運転しながら確かめることができる。実験に搭載したプロト版は、タイヤがグリップに余力を残している状態はモニター表示で「青」、限界に近い状態だと「黄」、限界を超えた状態に達すると「赤」で示される。

 一方ピットでは、モニター画面にサーキットのコースレイアウトに沿ってタイヤのグリップ状態がカラー3色の軌跡として表示される。どのコーナーでタイヤがグリップを失っているのか、確認することが可能だ。また過去のラップの走行実績や、ホームストレートでのグリップ状態を時系列で確認することができる。

D−SPORTレーシングTの殿村監督
D−SPORTレーシングTの殿村監督
センシングコアが搭載されたミライース
センシングコアが搭載されたミライース

 今回の実験に協力したD−SPORTレーシングチームの殿村裕一監督=人物写真下=は「今回は耐久レースという場なので、ラップタイムの速さよりも長時間使用に対する耐久性のほうがタイヤへのプライオリティーは高い。センシングコアによってタイヤの摩耗状況を知ることができるので『この局面ではもっと攻めよう』『こういうところはタイヤにやさしく走ろう』と、ドライバーにより的確な指示を送れた」と話す。

 また殿村監督は「クローズドのサーキットと異なりラリーシーンは路面の状況が刻々と変化する。センシングコアは路面の状態を検知することができるので、そのときの状態に合った走りをどうすればよいか、ドライバーと情報を共有することが可能になるのではないか」とし、今後の活用方法の拡がりに期待感を示した。

 

 【瀬在仁志氏

モータージャーナリスト瀬在仁志氏
モータージャーナリスト瀬在仁志氏

 レースではそのとき、その一瞬の判断が勝負の大きなファクターとなる。現在走行中の情報が体感のほかに〝見える化〟されるのは判断の際に役立つ。ドライバー自身やチームが判断の基準づくりをする上で、センシングコアによる解析データを蓄積していくことは有用だ。今回の実験では解析された情報がカラー3色で段階的に表示されたが、ドライバーがリアルタイムで運転を工夫しなければならないというレース状況では数値やLEDメーターでの表示もありではないか。経験に頼ることが多く技術の伝承がむずかしいモータースポーツをはじめ自動車業界で、新人教育のツールに使っても効果が高いと考える。


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