トラックタイヤの交換作業に力強さ発揮 東洋精器工業「PIT G-100SA」

 東洋精器工業は2022年10月からトラック・バス用のタイヤチェンジャー「PIT G-100SA」を発売した。新製品は作業時のパワーを向上しつつ、サービスカーへの搭載も考慮してコンパクト化を図ったほか、省電力化・省騒音化も同時に実現した。同社では「サービスカーに搭載可能なサイズでありながら、ライトトラック用タイヤから超偏平ワイドシングルタイヤ、建設機械(OR)用タイヤまで対応する新世代のタイヤチェンジャーに仕上がっている」と自信を示す。販売企画部課長代理の細目玲(ほそのめ・れい)氏にその特徴と機能を解説してもらった。

「PIT G-100SA」
「PIT G-100SA」

 新製品の適用ホイールサイズは16~22.5インチ。最大タイヤ直径は1200mm、最大タイヤ幅は700mmまで対応する。重量は従来モデル(G100NSA-N)とほぼ同等の730kgに抑えながら、全体の設計を見直して1割ほどコンパクトに仕上げた。その上で脱着作業の大幅な能力向上を実現したことが特徴だ。

 今後の普及が見込まれている超偏平ワイドシングルタイヤ、あるいはOR用タイヤといった大型タイヤを作業する上でオペレーターが最も重視するのが機械の剛性だ。

 「コンパクト化することでパワーや剛性には影響がないのか」といったユーザーの不安を解消するために、「PIT G―100SA」では、油圧ポンプモーターを2.2kW・3馬力に変更、油圧ポンプも大型化したことで従来機と比べて60%ものパワーアップを図ったという。

「PIT G-100SA」
剛性を高めた設計に

 さらに、駆動チェーンやスプロケット、油圧シリンダーも大型化して強靭な構造へ変更した。油圧モーターだけを強化させても他の部品がそのままではパワーを受け止めることはできないが、フレームの幅を厚くしてシャフトの強度も高めている。これによって油圧の力をしっかりと支え、確実にパワーが伝わるように仕上がっている。

 ホイールをチャッキングする爪も従来の1段から2段へ変更し、形状も新たに設計した。チャック可能なハブ穴径は110mmから最大530mmと従来モデルより50mm拡大させ、肉厚のホイールにも対応できる。また、一部のOR用ホイールではホールドチャック爪を使用して内側から掴む構造にしている。

 タイヤアームは片持ち構造から折り曲がり構造へ変更。難易度が高く微調整が必要なタイヤ作業を行う際の操作性を高めたほか、リモコン操作でツールとアームが同時にスライドするダブルアクションを採用して、効率性も向上させている。

トラック・バス用タイヤの交換作業に力強さ発揮

 実際にトラック・バス用タイヤの脱着作業をデモンストレーションしてもらうと、その工程は実にスムーズだ。基本的な動作は従来から変わりないが、油圧パワーが強化されたことでストレス軽減につながることを実感できる。

「PIT G-100SA」の爪
「PIT G-100SA」の爪

 細目氏は「従来機で大型タイヤの作業を行うと、途中で回転が遅くなったり、抑える力が弱くなったりするような感覚があった」と指摘する。その上で、「新製品は大型タイヤでも各ツールがしならず、たわみが無いため、不安感は解消される」と仕上がりに自信を示す。無駄な力を入れることなく、スピーディに作業を完了できるため、軽労化にも大きく寄与するだろう。

 もう一点、サービスカーへの搭載を想定して開発した「PIT G-100SA」の静粛性にも驚かされる。

 今回搭載した油圧モーターの一時停止機能は、モーターを動かし続けるのではなく、使用しない時間が5秒ほど続くと自動的に一時停止するもの。レバー操作と同時にモーターが再始動するため違和感無く作業に復帰できる。細目氏は「モーターを常に回転させないことにより、オイルの劣化や温度上昇を防止するほか、省電力にもつながり、騒音の発生を減らすことが可能となる」とそのメリットをあげる。

 サービスカーでの作業は時間や場所が様々だ。発電機やコンプレッサーは防音室で囲われている一方で、タイヤチェンジャーのような機材はそういった措置が無くいわば“むき出し”の状態で使用されることが多い。夜間に住宅地などで使用する際など、周囲の環境に配慮できるほか、電気料金を抑制する効果も期待できそうだ。

 なお、従来のようにモーターを稼働させたままの設定へ切り替えることも可能で、オペレーターが使い慣れた仕様へボタン操作1つで変更できるようになっている。

「PIT G-100SA」の操作部
「PIT G-100SA」の操作部

 新製品はメンテナンス性にも配慮して様々な工夫を取り入れた。一般的な機材では作業を行っている中で油圧ホースは常に引きずられ、結果としてホースが消耗して破裂やオイル漏れなどにつながる危険性があった。それに対し、今回は取り回しが容易で機械にホースを固定するマニホールドの採用で破損させにくく改良した。

 オイルタンクも作業者がオイル残量や汚れを一目で確認できるよう目線の位置に変更し、目盛りを大きくクリアなものにしている。以前は低く目立たない位置にあったが、常にタンクへの意識が向くことで定期的なオイル交換による油圧パワーの維持、あるいは異物詰まりなどを回避することも期待できる。

 また、上部に異常を知らせるランプを取り付けており、高い負荷が掛かった際はモーターを保護するために強制停止させたことを即座に確認できるようにした。「作業者自身で故障診断を素早く行って頂き、場合によっては電話でも対応ができる。サポートが到着するのを待つ時間のロス、使いたいのに使えないといった状況が無くなる」(細目氏)という。

 「PIT G-100SA」は東洋精器工業が顧客の様々なニーズを拾い上げた上でアイデアを練り上げ、全面的に仕様を決めたモデルとなる。細目氏が「サービスカーへの搭載はもちろん、店舗での作業にも対応できる。お客様のニーズに最適な製品」と話すように、人手不足など現場の課題解決をサポートする強力な味方となってくれそうだ。


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