静岡県湖西市の杉浦タイヤ商会 アイデアを“実行力”で形に

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カテゴリー: ディーラー, レポート

 杉浦タイヤ商会(静岡県湖西市新居町新居3444-24)は、浜名湖のすぐそばを走る国道301号線沿いで営業するタイヤ専業店。タイヤの販売・整備に加え、スタッドレスタイヤのレンタルなどユニークなサービスを実施している。「タイヤ空気充填安全セット」の開発など、タイヤ整備作業の安全性を向上する活動にも取り組む代表の杉浦進一さんに展望を聞いた。

 杉浦タイヤ商会は、杉浦さんの父が1969年に創業。杉浦さん自身は公務員や小売関係などいくつかの仕事に従事した後、杉浦タイヤ商会で働き始めた。その後、静岡県内のメーカー販売会社に勤め、倉庫の管理や物流関係、営業などを経験してから店舗に戻った。

杉浦タイヤ商会
杉浦タイヤ商会

 事業を受け継いだ2010年に店舗を改装。作業場を外に、待合室などは屋内に分け、整備作業の大きな音による顧客のストレスを減らせるように工夫している。現在、同店は2名体制。受付業務などは杉浦さんの妻が行っており、タイヤの整備作業は杉浦さんが一人で担当する。

 乗用車やトラック、フォークリフト、建設車両など一通りのタイヤに対応可能だが、一人でタイヤ関係の作業を行うため、スケジュール管理を特に工夫しているという。タイヤの取り寄せシステムを活用していることもその一つだ。

 メーカーの倉庫から直送してもらう仕組みで、午前中に注文した場合、翌日の昼頃にはタイヤが届く。顧客にとっては予定が組みやすくなり、店舗は余計な在庫を持たずに営業することができるようになる。杉浦さんは「お客様をその場で待たせることなく、古い在庫を売らず、都合の良い時に来店していただくことができる」と、メリットを説明する。

 店舗の近隣には工場に出入りしたり、海産物を運送したりする物流会社が多く、同店は長年、トラック・バス用タイヤをはじめとした生産財を中心に扱ってきた。一方で、近年は消費財タイヤのウェイトを増やすことにも力を入れている。

 乗用車用タイヤに注力し始めたのは、メーカーの直営店が近場に現れ始めたことも理由の一つだ。事業環境が変わる中、できることを模索していた杉浦さんは量販店の販売本数の多さを見て驚いたという。「購買の分母が大きいのであれば、自分が頑張ればそこから顧客が開拓できるのではないか」とひらめき、注力することを決めた。

 乗用車用のユーザーを取り込む手立てとして始めたのがスタッドレスタイヤのレンタルサービスだった。このサービスを思いついたのは杉浦さんが販社に勤めていた頃にさかのぼる。廃タイヤを回収する時に、スタッドレスタイヤがさほど使用されていない状態でも古くなって処分されることが少なくないと知り、「お客様はきっともったいないと感じながら捨てている」「必要な時に借りられたら良いのに」と思ったことが記憶に長く残っていた。

 自らが店舗経営を継いだことを契機に、2010年からレンタルサービスを開始。利用者から好評を得ており、今では冬場は30台分がほぼフル稼働状態になる。料金は年3回程度ならレンタルが安く、年4回以上の使用頻度であれば購入する方がメリットになる。「借りる」と「買う」のどちらが顧客にとって得なのか、数字を出しながら明確に説明していることも利用しやすさにつながっていそうだ。

 タイヤはレンタルだけではなく、降雪シーズン以外はスペアタイヤとしても活用できる。「近年はスペアレスの車が増えており、道路でパンクして困る人が多い」と杉浦さんは指摘する。

 レンタル用のタイヤは国産車の8割程度をカバーするサイズラインアップを用意。摩耗が進んだタイヤの代わりに一時的に貸し出し、都合の良い時に来店してもらうことで新品に交換するなど臨機応変な対応に一役買っている。

顧客が納得できる丁寧な説明を

代表の杉浦さん
代表の杉浦さん

 販売面では、ブリヂストンをメインで扱う。プレミアム商品の「REGNO」(レグノ)や「POTENZA」(ポテンザ)が高額商品でありながら好調に売れているという。その理由の一つは、購入を考えるユーザーにしっかりとランニングコストやイニシャルコストの違いを説明していることだ。

 「一番高い商品を売っていくことに商売の面白さがある」と杉浦さんは話す。一生懸命説明することで顧客は納得した上でタイヤを購入する。それが、次回の来店や顧客から評判を聞いた別のユーザーがお店に来るきっかけとして機能する。「丁寧に説明し、実際に説明した性能が発揮でき、お客様に喜んで頂けている」と実感を語る。

 利用者に対して正しい情報を発信する姿勢は、同店のウェブサイトにも表れている。タイヤ交換の流れやサービス工賃、スタッドレスタイヤのレンタル料金なども掲載されており、初めてでも安心してサービスの依頼ができそうだ。

 さらに、今年からウェブサイトの制作会社とともに動画を作成してYouTube(ユーチューブ)で公開を始めた。「タイヤは道路と唯一つながっている大事なものとして、一般の方にも興味を持ってもらいたい」と狙いを話す。

 動画では、杉浦さんが開発や普及を努める「空気充填安全セット」の使用方法なども紹介している。この製品はタイヤの空気充填作業時に手軽に使用できる安全囲いとして開発したもの。タイヤを入れるポリエチレン製のネットと、タイヤから離れたまま空気を充填可能な3mのホースが付いたエアゲージのセットで、作業者をバースト事故から守ることができる。

 杉浦さんは、自身が加盟する静岡県タイヤ商工協同組合の活動の中で、空気充填作業時の安全について啓発してきた。一方で、自動車整備工場やカーディーラーなどの兼業チャネルでは安全囲いの設置が進んでいないケースも目立つ。そのため、低価格で導入しやすい製品を製作した。

 様々なアイデアを形にしてきた杉浦さん。「今後は『空気充填安全セット』の訴求手段について、集中して次の手を考えていきたい」と意欲を示す。自店の顧客に加え、タイヤに関係する人に広く目を向けた活動は今後も続く。


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