南東北タイヤ商工協同組合がスタート。宮城県がエリアを山形・福島に拡大

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カテゴリー: ニュース

 単位組合の広域化は初

 宮城県タイヤ商工協同組合(島貫昭理事長)はこのほど、単位組合の事業活動と会員所在のエリアについて、山形県と福島県まで拡げることを内定した。これにともない、組合の名称を南東北タイヤ商工協同組合に変更する。19日開催の臨時総会で組合名や定款の変更などを決議。今期の事業年度内に各種の手続きを完了させ次第、南東北タイヤ商工協同組合として一歩を踏み出す。

 

 今回の宮城県組合の活動エリア広域化は、組合の会員数の減少に歯止めをかけ、組合活動の活性化を図ることが最大の狙い。

 全国タイヤ商工協同組合連合会(全タ協連)に参加し現在活動する組合は、東北6県では宮城県と秋田県の2組合。山形県には現在単位組合がなく、福島県の場合は会員社数が10社を割り込み組合運営が事実上困難となったことから昨年限りで休眠状態となった。

 それに対し、宮城県組合は仙台支部や仙南、石巻、大崎、県北の5つの支部で組合を構成する。トータルの会員社数は35社。島貫理事長をはじめ役員・運営事務局のもとでこれまで積極的に事業活動を行ってきている。

 中でも組合の社会活動の一つであるタイヤ空気充てん作業特別教育講習会の開催に意欲的に取り組んでおり、その延べ受講者数は4千名を超え全タ協連の単位組合でトップクラスの実績。15年ほど前からは隣接する山形県で同講習会の開催を手掛けるようになっていた。前年度は宮城県内で3回、山形県内で1回開催し、合計164人が受講した。

 また組合事業の一環としてバランスウェイトなどの共同購入を実施。さらに近年では親睦会の開催にも力を入れている。コロナ禍期間は開催を自粛したものの、地元のプロ野球チーム、楽天イーグルス戦の観戦会は毎年の恒例行事の一つ。組合としての食事会や支部単位での食事会も定期的に開催してきている。

 しかし業界を俯瞰すると、少子高齢化や人手不足、後継者難という社会問題に直面するタイヤ専業店が多いのが現状。事業承継を果たせず廃業を選ぶなど組合を退会するケースが後を絶たない。それは宮城県組合でも見られるという。

 多くのタイヤ組合では、会員の新規加入や脱退者の復帰促進を図り、個別に訪問勧誘を行うなど諸施策に打って出ているが、捗捗(はかばか)しいとは言えない状況のようだ。

 一方、全タ協連でもこれまで、会員の増強を重点課題として掲げ取り組みを進めてきた。先に導入した、タイヤ組合の無い道・県のタイヤ専業店に加入を呼び掛ける賛助会員制度はその新しい試みの一つ。

 この全タ協連の賛助会員制度を尊重しつつ、単位組合で有効かつ実現可能なアイデアとして、宮城県組合は活動地区の広域化を決めた。それにより会員数の拡大を図り、組合の基盤の一層強化を目指す考え。

 単位組合の広域化は全タ協連では初めてのケース。自動車関連団体では車体関係の組合で広域化の例がみられるという。

 今回の宮城県組合の決断は、「県」というくくりにとらわれず「南東北」という地域性を鑑み、広い視野に立って組合の事業活動に取り組もうというもの。具体的にはこれまでの5つの支部に、山形支部・福島支部を加え、合計7つの支部構成で組合を運営していく。

 組合には活動に理解を示す会員のパートナーシップはもちろん、強力なリーダーと運営する事務局が不可欠。組合のない山形、活動を休止した福島の両県で、言わば〝ゼロ〟の状態から組合を立ち上げ再建するのは至難の業に等しい。これまで長年の事業活動を通じて培ってきたノウハウと事務運営力、それに強いリーダーシップを有する宮城県組合が中心となり活動エリアを拡大するという今回のアイデアははるかに現実的だと言えよう。

 宮城・山形・福島の3県は文化面やエリアの特性など、土壌・風土、気質で互いに共通する部分が多い。また、宮城県組合は山形県での講習会開催の実績を持っており、これまで蓄積した知見を活用することが可能。南東北地域で組合活動に対する認知度の向上と会員数の増強が期待される。

 

 南東北タイヤ商工協同組合・島貫昭理事長に聞く

 「将来見据え判断。同業同士の絆深めたい」

 

 ――広域化のアイデアに至った背景は。

南東北組合
南東北組合 島貫昭理事長

 島貫「会員の拡大は、宮城県組合でも重要なテーマです。現在の会員は35社で、皆様のご理解とご協力があり、活発に活動を行ってきています。ただ10年後、15年後と長期的にみると、事業承継できず廃業されるケースがあろうと推測されます。新規会員の加入促進に向け地道な勧誘活動を行っていますが、劇的に増えることは難しい状況です。

 一方で、山形県には組合はなく、福島県は昨年、組合活動を休止しました。宮城県組合では15年ほど前から隣接する山形県内でタイヤ空気充てん講習会を開催してきています。そのような経緯もあり、同じ南東北エリア同士でサポートすることはできないか、何もない〝ゼロ〟の状態から組合を立ち上げるよりも同じ南東北エリアを宮城県組合がカバーする方が現実的ではないか。かねてからそのような考えがあり、それを突き詰め今回3県を合併する広域化という決断に至りました。

 宮城県組合で19日に臨時総会を開き、組合名称や定款の変更などを審議し承認を得た上で、事務手続きに入りました。新年度には南東北タイヤ商工協同組合として活動に入る計画です。

 今期で第56期という、歴史と伝統のある宮城県の名を組合名から外すということは、私自身非常に寂しいですし、先輩の皆様に申し訳ない想いでいっぱいです。ただそれでも、将来を見据えて広い視野と高い観点で地域全体を捉えるべきだと判断しました。

 組合活動は地元が中心となってあるべきで、本来であれば山形なら山形の、福島なら福島の、地元の専業店さんがリーダーシップをとり組合を結成して活動することが理想です。ただ今の状況ではそれを果たせないため、宮城がエリアを拡げる形をとることと致しました。ですが、山形・福島は宮城の下部に位置するのではなく、あくまでも対等の立場です。同じ南東北の地域で一緒にやっていこうという、大きな覚悟を込めています。

 またこの広域化で会員数が安定し、やがて山形だけで、福島だけで組合を運営していけるという状況になれば、広域化から県の単位組合へと戻れば良いと考えます。広域化は南東北地域における組合組織の再建と活動の活性化への足掛かりだというふうに認識していただきたいと思っています」

 

 ――今後、どう呼び掛けを行うのか。

南東北組合
南東北組合 島貫昭理事長

 島貫「組合のメリットとは何か――よくこのように問われます。同業者同士の絆づくりだと、私はいつもお答えしています。取り扱いメーカーごとの縦のお付き合いはありますが、それが異なるとお付き合いはほとんどない状況ではないでしょうか。私にはこのタイヤ業界に友人・友達と呼べる人がたくさんいます。それは組合活動を行ってきたからです。店を見学したい、こんなノウハウを知っていれば教えて欲しい、お客様の出張修理について相談したい――、これまで仕事を行ってきた中でいろいろな相談ごとがありました。そういう相談に乗るのは相手が友達だからです。業界で友達をつくり増やすことができることこそ、最大のメリットだと思っています。

 また宮城県は東日本大震災で大きな被害を受けました。その時に強く感じたのが人との絆、同業者同士の絆です。大変な状況に置かれた時こそ、お互いが助け合うがこと何よりの支えとなりました。

 

 若い方にはあまりそういう認識はないようなのですが、中には一部、組合に対してあまり良いイメージを持っていらっしゃらないケースがあります。いわゆる圧力団体というようなイメージでしょうか。ですが、現代の組合は考え方も活動内容もまったく異なるものです。このような誤解も一つひとつほどいていき、組合の存在意義を呼び掛けていきたいと考えます。

 宮城県ではこれまで、親睦会を積極的に開催し、会員の皆様が楽しむことができる組合活動を行ってきています。空気充てん講習会の開催など社会的使命を果たすことは組合の重要な役割ですが、まずは楽しい集まりであること。友達をたくさんつくって、絆を深めていただきたい。山形、福島の皆様にも加わっていただき一緒に楽しみたいと考えています。まずはそこからがスタートで、仲間の輪が広がることで、さらに踏み込んだ活動ができるようになります。

 3県を繋ぐ交通アクセスは良く、クルマや高速バス、鉄道での移動に便利です。まずは山形の皆様にコミュニケーションを深めるための説明会を開催する計画です。その後、福島県の皆様に向け同様の説明会の開催を考えています」


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