TOYO TIRE 清水社長 現状を打破し、シフトアップするために――質の変革で成長を

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カテゴリー: インタビュー, 特集

改革進め、国内の利益率向上へ

 ――日本市場、アジア市場での取り組みは。

 「当社にとっての日本市場は、まだ利益率が低いと認識しています。宮城県の仙台工場は生産の8割を海外に輸出しており、日本市場に対して付加価値の高いタイヤを供給する上ではキャパシティが不足していました。欧州向けに500万本近いタイヤを出荷していましたが、来年からはセルビア工場が稼働し、国内工場の生産に余裕ができます。それを、日本市場向けの供給リードタイムを短くして、速やかにご要望に応えていくように生かしていきます。

 また、4月に販売会社のトーヨータイヤジャパンの本社機能を伊丹市のメーカー本社内に統合しました。これまでは東京と兵庫に分かれており、考え方を共有するのに時間がかかっていた面があります。今回の統合によって意思決定をスピーディーにし、メーカーと販売会社が一体となって商品戦略や販売戦略を展開していきます。

 デジタルの活用による営業スタイルや営業基盤の変革、重点商品比率の向上など、色々なことを一から組み立て直していこうと考えています。

 販売計画に関しても、これまではとにかく本数を売るということに比重が置かれていました。それでは本数だけで評価される仕組みになってしまいます。そうではなく、時間もコストもかけて開発して大事に育てていきたいタイヤを重点的に販売していく必要があります。メーカー、販売会社それぞれの思いを一つにして、『当社はこれを売っていくぞ』という体制にしていきたい。物流の最適化や拠点の見直しなど、様々な動きが始まっていくと思います。

 一方で資本業務提携した三菱商事のネットワークの活用も本格化します。輸送事業者やカーディーラーなど、商用車から乗用車まで約1000社をリストアップし、販売活動に取り組んでいきます」

 「アジア市場では、やはり工場があるマレーシアが重要です。シルバーストン工場を閉鎖し、トーヨータイヤの工場から高品質のタイヤを供給していくようにします。シルバーストンブランドもそれなりの本数を販売してきましたが、今後はTOYO TIRESブランドへの切り替えを進めていきます。

 また、タイも市場として有望です。日系自動車メーカーへのOE納入、カーディーラーでの品揃えを増やして頂ける活動に注力していきます」

技術開発、DXにも独自性を

TOYO TIREの清水社長
TOYO TIREの清水社長

 ――技術面に関して、自動車の電動化が進む中で、独自性をいかに発揮しますか。

 「EV(電気自動車)化のトレンドに対する対応はもちろん重要ですが、そればかりではなく、環境配慮を踏まえた次世代モビリティに対応した嗜好性の高い差別化商品を展開していきたいと考えています。自動運転化が進んだとしても、一方でクルマやドライブが好きな方は残ります。日本でもアウトドアやキャンプの人気が高まっていますし、クルマを移動の手段として考えると楽しさやファッション性も必要です。

 これから小型EVなどが数多く登場してくると思いますが、そういった車両には例えばエアレスタイヤで対応するケースもあるかもしれません」

 ――ソリューションビジネスについての考え方は。

 「タイヤの摩耗予測技術は運送会社に協力して頂きながら実証実験を始め、データを収集している段階です。間もなく実用化に向けて数カ月先の摩耗状態が予測できるようになってくると思います。

 また、我々は『タイヤ力検知モデル』というセンシング技術の開発に取り組んでいますが、これは他社とは違う切り口だと考えています。グリップ力や転がり抵抗などを解析し、最適なフィッティングに対応する――例えば『あなたの運転にはこういうタイヤが適しています』などとユーザーへ提案できる技術にしていきたいと思います。

 我々は持てる資源が限られているため、協力会社のサポートも生かしながら遅滞なく取り組んできました。EV化が加速してCO2削減も求められ、市場ごとにニーズが異なる中、技術開発は全方位で進めるように指示しています」

 ――中計期間中の供給体制の強化は。

 「来年セルビア工場が稼働し、2023年には年産500万本となる計画ですが、さらに500万本が生産できる用地を残しています。また、マレーシア工場は建屋の中に250万本の増産が可能となるスペースがあります。この2工場での増強を考える一方で、国内工場では付加価値の高い生産品目へシフトしていくためにラインの入れ替えを検討しています」

 ――デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みは。

 「DXは全社横断的に進めており、各部門でどういう形で改革していくのか、新しいERP(統合基幹業務システム)との連携も同時に進めています。我々は規模が小さいからこそデジタル刷新をテコに、業務改革をグローバルに浸透させることができると思っています。

 海外の子会社も含めて、データの扱い方などが個別最適になっていましたが、そこを全体最適にするべく統一させ、素早く情報を解析して戦略を立案できるようにしていきます。

 我々の考えるDXはインフラだけではありません。重点商品をどう管理するか、商品サイクルをどうするか、それぞれの採算性など、機動的な体制を5年後に目指したいと思います」

「より存在感のある企業へ」

 ――「中計’21の更に先を見据えた展望を。

 「新型コロナウイルスの世界的な拡大で世の中が大きく変わったと思っています。変化のスピードが激しく、確実性の乏しい時代環境の中で事業を継続的に成長させていくためには、まず自分たちの足元をしっかり地に着けて進んでいくことが大事だと思います。

 急速にソリューションやデジタル化を実現させることより、原理原則に立ち返って一歩一歩進んでいくことが重要です。こういう時こそ、自らのあり方を明確にし、しっかりと連携することが体質強化、より存在感のある企業へつながっていくと思います」


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