TOYO TIRE 清水社長 現状を打破し、シフトアップするために――質の変革で成長を

 今年2月に2025年までの新たな中期経営計画を発表したTOYO TIRE(トーヨータイヤ)。量を追う拡大ではなく、質の変革による成長を志向することが戦略の中心となり、指標の一つとして独自の「重点商品」販売比率の向上を掲げた。変化が激しい環境の中、どのように変革を推進していくのか――清水隆史社長に、思い描く将来像を聞いた。

 ――昨今のタイヤ業界の動向をどう見ており、その中でトーヨータイヤの強みをどのように認識していますか。

TOYO TIREの清水社長
TOYO TIREの清水社長

 「ここ数年、中国をはじめとした新興国メーカーの進出により、低インチカテゴリーで熾烈な価格競争が起きています。そうした中、他社も含めて工場再編や大口径タイヤ、高機能タイヤへのシフトが進むなど、採算を意識した様々な改革が始まっています。当社もマレーシアのシルバーストン工場は設備の老朽化によって競争力のある商品を作るのが困難なため、これを6月末で閉鎖して、近隣にある設備の新しいマレーシア工場に集約することを決めています。

 元々、我々は商品をフルラインで展開しているわけではなく、ワイドライトトラック用やSUV用の大口径タイヤなど特定の分野で強みを発揮していく戦略を進めてきました。その結果、業界の中でも高い営業利益率が確保できています。

 特に北米市場では間断なく投資を続けてきました。米国工場ではこれまで累計5回の能力拡張を行い、供給体制を充実させています。ワイドライトトラック用タイヤなどの生産に適しているA.T.O.M.工法により、大口径でありながらユニフォーミティーに優れたタイヤを生産できるように設備を整えてきました」

単に規模を追うことは止める

 ――新たな中期経営計画「中計’21」を策定するにあたり、どのような議論を行いましたか。

 「私の直轄組織として立ち上げた経営戦略室のメンバーを中軸として、生産、技術、販売、コーポレートの各部門から40歳前後の中堅社員に参加してもらい、様々な部門と連携しながら議論を重ねてきました。

 新中計のプロジェクトが本格的にスタートしたのは昨年4月です。数年後に何本タイヤを販売する、売上高はこうなるといった予測を前面に出すのが従来の計画でしたが、『規模だけを追い求める策定方法はもうやめよう』という話し合いから始めました。規模を追うと、コストダウンを図っていかなければ新興国メーカーに太刀打ちできませんし、利益率が低下して負荷が掛かってきます。

 中堅社員は我々とは違う感性があり、固定概念にとらわれていません。次世代を担う社員が検討して計画を作り、本部長、役員、最終的に私へ説明してもらうような進め方を採用しました。上の人間だけで決めて下へ展開していくのでは思いが浸透しません。若手が中心となることで、彼らにとっては自分事として捉える機会となり、我々にとっても様々な気付きのある良い刺激となりました。

 今回は当社の“あるべき姿”を再確認して、今後、起こりうる変化や課題をしっかりと捉えて、企業ステージを更なる高みへシフトアップするために、どのような変革を起こしたらいいのか、現状を打破するにはどうすればいいのか――これを大きな方針として掲げました。それに基づいて各部門で『質の変革による成長』という考え方を徹底しました。全てを新しく大きく増やすという考え方ではなく、強みをフル活用して伸ばしていく、新しい変化を取り入れながら基盤を底上げしていくという戦略です。

 昨年から新型コロナウイルスの感染が広がっていますが、それによって計画が大きく変わったということはありません。むしろ在宅勤務の拡大や出張の減少によって、考える時間、一緒に集まれる時間が増えたというプラスの面もあります」

 ――「中計’21」では「重点商品」と位置付けるタイヤの販売比率を55%以上にする方針を打ち出しました。

 「前回の『中計’17』ではSUV用タイヤの販売構成比率を40%にする目標を掲げ、実際にはそれを上回る43%を達成しました。これはこれで当社の強みですが、市場によっては必ずしもSUVが重点商品ではないこともあります。では、その地域で何が重点商品なのかというと、例えば欧州ではオールシーズンタイヤやウィンタータイヤが該当してきますし、日本はSUV用タイヤ以外にミニバン用タイヤなどもそうです。

 それぞれの市場で強みを発揮できる商品開発を行い、それを確実に生産していくことを基本的な考え方にしました。一定の利益率がある商品を差別化商品と位置付けて、それらを市場ごとに重点商品として定義し、その販売比率を55%以上にすることをターゲットにしています。北米ではSUV用タイヤの比率が半数以上となっており、既に重点商品比率が55%近くになっていますが、さらにその上を設定しています。

 また、供給面でのカントリーミックス、あるいはプロダクトミックスに加え、デジタルイノベーションを進めることでコスト面でも体質を変えていきたいと思っています。

 営業利益率14%超や中計期間中12%以上のROE(自己資本利益率)を達成するためには重点商品比率が指標となります。各市場で毎月どの位の本数を販売していくのか、それに対して受注状況がどうなっているかという管理を1月からスタートしています」

各市場で「重点商品」の販売強化

 ――主要市場ごとの戦略をお聞きします。北米市場では競合他社も大口径タイヤの拡販に注力する中、どう強みを強化していきますか。

 「SUV用タイヤの中でもワイドライトトラック用タイヤは16~24インチまであり、汎用的な18インチ以下は既に新興国メーカーが参入して価格競争が始まっています。このような中、当社は得意な生産工法、技術力を活かし、できるだけ大口径タイヤに注力しています。

 高い性能とデザイン性を両立した大口径タイヤ市場ではTOYO TIRES、NITTOのファンが多く、非常に高い評価を頂いており、ブランド力も付いてきました。世界的なオフロードレース『バハ1000』にも参戦していますが、タイヤがタフでなければ完走もできません。そうした過酷なレースで上位に入る実績も評価につながっているのだと思います。

 当社のSUV向けラインアップは非常に豊富で、オールテレーンやマッドテレーンをはじめ、その中間のラギットテレーンは我々が創出したカテゴリーだと自負しています。また、A.T.O.M.工法ではサイド部に厚みを出してデザイン性が高いタイヤを生産できます。サイド部を貼り付ける工法の場合は、継ぎ目が発生してユニフォーミティーに影響してしまいます。一方、当社の製品は継ぎ目が無く、大口径になればなるほど高いユニフォーミティーが実現できます。

 ワイドライトトラック用タイヤの20インチ以上のクラスでは当社のシェアは4割ほどあり、工場では汎用サイズから大口径タイヤへ生産をシフトしています。北米市場の売上高は2020年にシェア5.3%で7位でしたが、今後も魅力ある商品開発とブランド力向上に取り組み、これを5年間で10%程度に高めて5位を目指します」

 ――来年セルビア工場が立ち上がる欧州市場での戦略は。

 「欧州は高い技術力が求められますので、ドイツに設立した研究開発(R&D)センターで材料開発などを先行して進めています。

 セルビア工場はコスト競争力が高く、総コストは仙台工場と比較して30%低減することが可能だと見込んでいます。日本の工場から船で欧州に輸送すると4カ月近くのリードタイムが必要ですが、これを地産地消に切り替えることでタイムリーな供給が可能となり、競争力の強化につながります。

 欧州市場でも重点商品比率55%以上を目指し、『これからはこういう商品を供給していきます』とお客様にコミットしています。現地にR&Dセンターとタイヤ工場ができ、コスト競争力も高まってくれば、これまで主力でなかったタイヤが重点商品になる可能性もあり、非常に面白い市場だと期待しています」


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