本場で鍛えた性能 BFグッドリッチ「Mud-Terrain T/A KM3」

シェア:
カテゴリー: レポート, 試乗

Mud-Terrain T/A KM3

 日本ミシュランタイヤは7月から「BFGoodrich(BFグッドリッチ)」ブランドからオフロード向けの4×4タイヤ「BFGoodrich Mud-Terrain(マッドテレーン)T/A KM3」を国内市場に投入する。従来品「KM2」から10年ぶりのリニューアルとなる新商品は、本場米国のレースで培った技術を搭載し、オフロード走行に求められる性能を向上させた。同社は5月に下館オフロード(茨城県筑西市)で試乗会を実施。岩場や泥濘地など様々なコースを走行してその性能を確かめた。

過酷なレースで培った技術を採用

 BFグッドリッチブランドの「マッドテレーン」シリーズの歴史が始まったのは今から約30年前。シリーズとして5世代目にあたる新商品「マッドテレーンT/A KM3」は、従来品「KM2」から10年ぶりのモデルチェンジとなる。

 今回は特に泥道や岩場、ダートなどあらゆる路面でのオフロード性能を追求した。高い性能を実現するため、「世界で最も過酷」とも言われる米オフロードレース「BAJA(バハ)1000」への参戦で培った技術を搭載。タイヤサイドに厚みを持たせてショルダー部へのダメージを抑制しつつ、新たに開発したトレッドパターンで泥道での走破性を高めたほか、岩場など滑りやすい路面で強力なグリップを確保するコンパウンドを採用している。

あらゆる悪路を走破する性能

ジャオスの能戸知徳氏
ジャオスの能戸知徳氏

 試乗ではジャオス(群馬県)の開発部主任でアジアクロスカントリーラリーなどで活躍するプロドライバーの能戸知徳氏にハンドルを握ってもらい、様々なコースを走行した。

 印象的だったのは、大人の背丈ほどの大きな岩を難なく乗り越えていく時だ。表面は砂に覆われているため、グリップ力が足りなければ滑り落ちてしまうようなシーンだが、V字の切り込みが入ったパターンと、一定のしなやかさがあるゴムが確実にグリップするため、高い安定感を発揮する。

 また、今回の試乗車(ジープ・ラングラーJK)の場合、装備を含めた車重は2200kgを上回るが、約30度の傾斜がある坂道でのアップ・ダウン、さらにマッド路面や障害物の上もスムーズに走破した。

 能戸氏は「ラリーでは突発的な動きにも対応でき、ハンドリングも含めて全てが良くないといけないが、新商品ではこれまで蓄積された技術が更に進化している」と、その総合性能を高く評価していた。

本物だから支持される

 オフロードカテゴリーも含めた市販のSUV用サマータイヤは2008年頃に国内市場全体で約160万本の需要があったという。ただ、リーマンショックや排ガス規制の影響で、2011年には90万本レベルまで落ち込んだ。

 こうした中、日本ミシュランタイヤの成瀬朋伸氏(BFグッドリッチブランドマネージャー)は、「我々はリーマンショック前の水準までV字回復を果たすことができた」と話す。その要因となったのは、独自のブランド戦略だ。

 従来は海外市場と同じくオフロード性能を全面に打ち出していたが、ドレスアップニーズが多い国内の場合、市街地での使用を喚起するビジュアルで訴求を図り、大きくイメージを転換。これが市場開拓に繋がった。

 ただ、「KM3」の開発には国内ユーザーのニーズはほぼ取り入れられていないという。米国や豪州にある本当のオフロード、何かトラブルがあれば命にかかわるような危険地帯を走行するユーザーに求められる性能を最優先にしている。ここまでタフな設計は国内ではオーバースペックかもしれない――だが、「“本物”であることが、国内のユーザーに受け入れられている」(成瀬氏)。

 海外市場を中心にこのカテゴリーでトップクラスのシェアを持つBFグッドリッチブランド。国内市場では2015年に市街地での走行にも配慮した「BFGoodrich All-Terrain T/A KO2」を発売したほか、今年4月にはクラシックカー向けの「BFGoodrich Radial T/A」を復活させた。さらに満を持して投入するオフロードモデルの新商品。積極的な展開に市場からの期待は一層高まっていきそうだ。


[PR]

[PR]

【関連記事】