持続的な天然ゴムの活用へ 生産性向上や多様化に注力

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カテゴリー: ニュース

 タイヤ原材料の重量構成比で約3割を占めるとされる天然ゴム。将来にわたり利用していくには、安定した生産や栽培に伴う環境破壊への配慮などが欠かせない。これらの課題を踏まえ、国内タイヤメーカーでは、天然ゴムの生産性向上や供給源の多様化に寄与する研究など様々な取り組みが進められている。

 現在、タイヤ製造では、パラゴムノキの樹液から生産した天然ゴムが利用されている。このタイヤ主原料について、ブリヂストンの先端材料部門天然ゴム技術研究課長の中川大助氏は「将来、世界人口が増え、その移動手段となる自動車の台数も増加すると予想されている。タイヤの需要が増えれば天然ゴムの需要増加も見込まれる」と指摘。さらに、生産地が東南アジアに集中しているため、病害などによる生産リスクを緩和することも求められているという。

 こうした課題を背景に、同社はパラゴムノキの生産性向上への取り組みを加速している。

米国アリゾナ州にあるブリヂストンのグアユール研究農場
米国アリゾナ州にあるブリヂストンのグアユール研究農場

 その一つは、AI(人工知能)の画像診断を活用したパラゴムノキの病害診断技術だ。ドローンによる農園の空撮画像からAIが根白腐病の有無を判別するもので、農園スタッフの熟練度に依存しない診断や、広大な自社農園での効率的な罹病木の発見に貢献する。

 また同社では、過去30~40年ほど自社農園で集めた収量や品種などの大量のデータを活用し、農園管理技術も開発。これは、“いつ、どこに、どういった品種を植えれば良いのか”という植林計画を作成する独自のシステムで、天然ゴム収量の平準化、さらにその向上が期待できるそうだ。

 また住友ゴム工業では、自社農園で生育や収穫方法の違いがパラゴムノキの生長量や樹液の収穫量に与える影響について研究を実施。さらに、「育成期間の短縮や収穫量向上に向けて、引き続き研究活動を進めていく」(広報部)方針だ。

横浜ゴムがタイ・スラタニ地区で行う天然ゴム農園調査
横浜ゴムがタイ・スラタニ地区で行う天然ゴム農園調査

 一方、横浜ゴムは2013年から天然ゴムの主要産地であるタイで複数の大学と、天然ゴムの品質向上や農園の持続的発展への応用などが期待できる共同研究を行っている。

 さらに近年、天然ゴム農家を支援する活動にも積極的に取り組んでおり、2019年には農家が持つ課題を分析する目的で農園への訪問調査を開始したほか、昨年もタイの天然ゴム農家に対し、タイ農業・協同組合省管轄下の組織と共同で天然ゴムの品質及び生産性向上に向けたセミナーイベントを開催した。

 パラゴムノキに関する研究や農家のサポート活動に加え、ブリヂストンでは、天然ゴムの新たな供給源として有望視されているグアユールの研究開発にも取り組んでいる。同社によると、グアユールは「天然ゴム成分を作る植物の中でも乾燥地帯で育つことから、水ストレスの低減や砂漠の緑化などに貢献できる可能性もある」という。現在は米国の自社農園を活用しながら、キリンホールディングスやイスラエル企業のNRジーンの協力のもと優秀品種の選抜・増殖について研究を重ねている。

 また、国内4社はともに、2018年に設立された「持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム」(GPSNR)に加盟。GPSNRは国内のみならず世界のタイヤメーカーや自動車メーカー、さらに天然ゴムの小規模農家や生産・加工業者なども参加する国際的な枠組み。複数のワーキンググループの活動を通じ、例えば天然ゴムの生産・加工に伴う環境リスクの評価研究などが進められてきた。

 GPSNRによると、天然ゴム生産量の約7割をタイヤ向けが占めており、タイヤメーカーには、天然ゴムの生産性や環境改善に向けて意欲的に取り組むことが求められている。事業の持続可能性の確保にもつながる継続的な活動の重要性は、今後も一層高まっていきそうだ。


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