革新を起こす――ミシュラン生産財タイヤ事業の展望

 シングルタイヤの拡販や新たなタイヤ管理システムの導入などトラック・バス用タイヤ事業を積極化している日本ミシュランタイヤ。今年1月には生産財タイヤの各カテゴリーを統合して組織体制を“点”から“面”に移行し展開を加速させている。今後、商用車でも自動運転技術や電気自動車が普及すると見込まれる中、どのようにビジネスは変化していくのか――生産財事業を統括するB2Bタイヤ事業部の高橋敬明常務執行役員に現況と展望を聞いた。

軽労化に繋がるワイドシングルタイヤ「X One」

 ――今年1月に生産財事業を統合してB2Bタイヤ事業部を立ち上げましたが、その目的は。

 「トラック・バス用タイヤだけではなく建設機械や産業機械、農業機械、航空機なども含めて今まで製品カテゴリーごとに分かれており、他のカテゴリーを意識していませんでした。

B2Bタイヤ事業部 高橋敬明常務執行役員

 ただ、運送会社が倉庫でフォークリフトを使用しているなら、トラック用タイヤだけではなく、産業機械用タイヤも販売したほうが良い。もっとお客様のビジネスにフォーカスして最適な製品やサービスを提供していくことが目的です」

 「輸送事業者が現在抱えている課題として、まずは人手不足の問題があります。ただ、その前に今働いている従業員の満足度を高めることが重要ですし、その環境を把握した経営をしていかなければならないと思います。

 その上で、荷役作業を軽減するためにパワーゲートを装備したり、スタッドレスタイヤを装着したりする必要があります。以前のように何でもドライバーに任せるのではなく、コストをかければ改善できるポイントがあります。近年、スタッドレス市場が伸びていますが、これは市街地などで今まで装着していなかったお客様が装着するなどニーズが増えているからです。

 また人手不足の中、タイヤ交換などにかかる時間を改善したいと思っている経営者の方は増えています。さらにドライバーの高齢化が進んでいるため、ドライバーをアシストする機能が増えてきています。

 軽労化のために車両に色々な装備を増やせば当然重くなるので、我々はそういった課題を解決するソリューションとしてシングルタイヤ『X One』(エックスワン)を提案しています」

 ――「X One」の需要の伸びは。

需要増が期待できる「X One」

 「日本では2007年から販売していますが、確実に需要は増えており、2020年に装着台数2000台を目指しています。

 今年は国内でリトレッドタイヤの委託生産もスタートします。我々は従来から3Rのコンセプトに取り組んできましたが、ようやく『X One』でもそれを実現できるようになります。コスト面でもお客様に一層貢献できるようになると思っています。

 今までは輸送効率を訴求していましたが、今後は燃費の改善という特徴も含めてお客様を開拓していきます。今年4月からホイールとセットで貸し出すサービスを始めました。まだ装着したことのないユーザーに対して燃費やハンドリングを確認して頂くことが目的ですが、新規採用に繋がったケースも出ています」

 ――6月にはTPMS(タイヤ空気圧管理システム)クラウドサービスを始めました。

 「TPMSを装備してタイヤの状態をモニタリングしたい、というニーズは確固たるものがあります。まずは既存の『X One』のお客様へ紹介するなど、当初は300台の契約から始めて2020年に2万台を目指します。

 また、昨今はスペアタイヤレスへのニーズが高まっています。昨年には落下事故がありましたが、スペアを外したほうが良いという機運も高まっているようです。軽量化に繋がりますし、トラックメーカーからもスペアは不要という話が一部であるようです」

 「一方、このサービスだけでは大きなビジネスにはなりません。我々としては最終的にシングルタイヤを普及させることが狙いでもあります。

 シングルタイヤに移行しない理由としてパンク時のリスクを挙げる方は多くいらっしゃいます。ただ、TPMSサービスによりその心配を無くすことができますし、そのほうがモビリティに貢献できると考えています。

 他社がワイドシングルタイヤの導入を検討しているという話も聞きますが、特に焦りはありません。ミシュランはライフ性能では負けませんし、万が一良いものが出てきたら、もっと高性能タイヤを開発すれば良いと考えています」


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