イエローハット糸魚川店 地元の信頼とニーズに応える

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カテゴリー: ディーラー, レポート

 消費財を中心にタイヤやカー用品の販売、車の整備などを行うイエローハット糸魚川店(新潟県糸魚川市上刈6-2-20)は北陸と関東を結ぶ国道148号線沿いにあり、多くの地元住民が利用する。同店を運営する高瀬商会の執行役員糸魚川営業部部長倉又幸成氏に取り組みを取材した。

サービス力で満足度と収益アップを

イエローハット糸魚川店
イエローハット糸魚川店

 イエローハット糸魚川店は1997年に営業を開始した。現在店舗で働くスタッフはサービス担当が4名、フロント担当が2名の合計6名と比較的少人数で業務を行っている。倉又氏が同店の業務に関わり始めたのは高瀬商会が展開する「タイヤプロ糸魚川」と事業部を統括した3年ほど前からだという。

 現在、両店ではスタッフの交流を図りながら運営している。きっかけはイエローハット糸魚川店で退職者が出た際に、新しいスタッフの採用活動や教育に時間がかかることから、タイヤプロの従業員が応援に駆け付けたことだった。

 倉又氏は「今のところはタイヤプロからイエローハットに行ってもタイヤ交換など限られた業務しか手伝うことができないが、将来の構想としてどのスタッフも両方の店舗の仕事をこなせるとお互いに業務が楽になるだろう。それぞれ得意な仕事で業務を補い合うことで限られた時間を有意義に使うこともできる」と展望を話す。業態は異なるものの、現在も業務の合間を縫って研修などを行っているという。

 糸魚川市は、新潟県の最西端にあたり、日本列島を横断するフォッサマグナの境界断層「糸魚川―静岡構造線」の起点となっている。森林資源や鉱物資源などが豊富で、約1万7000世帯が暮らす。

 倉又氏は「新潟県上越市や富山県朝日町など、近隣の大きな街に行くためには車で1時間以上かかる」とした上で、「利便性の面から糸魚川のユーザーはよそにはあまり行かない。地元の人は市内で消費を行う傾向があり、そういった点で地の利がある」とこのエリアの特徴を説明した。

売場に併設する作業場
作業ピット

 公共交通機関がそれほど多くないため、市民の主な交通手段は自動車だ。車の運転免許が取得できる年齢であれば一人一台は車を持っているという。老若男女ともに通勤にはほぼ100%自家用車を使用する環境にあり、車に関わる仕事の需要は高い。

 室内用品は市内に2店舗あるホームセンターが競合相手となるが、イエローハットのようなカー用品量販店は無いため、市内の顧客を確保できている。同店の売り上げはタイヤ・ホイールが約35%、サービス工賃が20%ほどを占める。その他はエンジンオイルや洗車用品など様々なグッズとなっている。

 さらに、糸魚川市は兼業農家も多く乗用車に加えて軽トラックを所持している人も多数いる。同店では軽トラック専用オイルも販売しており、他の地域にある店舗に比べて売り上げが多いという。あわせて、軽トラックを含む軽自動車のユーザーが多いため、それに対応する小さめのサイズのタイヤがよく動くという。

 このほか、イエローハット糸魚川店で力を入れているのはサービス収入の向上だ。タイヤの窒素ガス充填や、ハブ補正といったサービスに対する付帯作業に対する工賃を得ることで売り上げを上げていこうと努力している。倉又氏は「イエローハットチェーン全体でサービス収入の向上にこの4~5年の間に力を入れてきた。糸魚川店でも顧客に対するサービスのきめ細かさを向上しながら少しでも多く収益を上げられるようにしたい」と意気込む。同店とともに、高瀬商会全体としてもサービス力アップに取り組んでいるという。

 また、2~3年ほど前からは車検サービスも始めた。主な利用者は、“転勤族”として他の地域から糸魚川市に転入してくるユーザーだ。地元の整備工場の顧客と異なる層をターゲットとすることで共存を図りながら展開している。

多くのタイヤが並ぶ店頭
多くのタイヤが並ぶ店頭

 地元の有力企業である高瀬商会の店舗としての意味合いも強い。利用者も、以前から高瀬商会と取引のある企業の職員やその家族も多くいる。それに加え、全国チェーンの「イエローハット」としての安心感があり、市外からの転入者や若年層もユーザーとなっている。倉又氏は「地元に根付いた企業としての信頼と、品質や価格が保証されているイエローハットの豊富な商品力を合わせ持つことが糸魚川店の強みだ」と語った。

 糸魚川市は車の所有率も高く、市内で需給が完結する安定性があるが、一方で人口が減少していることに対して倉又氏は危機感を持っているという。その上で、「地元には若い人たちが就職できる場所が少なく、約8割が1回以上は市外に転出する」としている。あわせて、人口が毎年減る中で、車を運転できる人も減り、登録車台数も少なくなってきているという。

 新潟県の統計データによると、2005年に糸魚川市と能生町、青海町が合併した時点の糸魚川市の人口は5万人弱だったが、2020年1月1日時点では4万2000人強となっている。若年層の流出と同時に高齢化も進んでおり、車そのもののユーザーが減りつつあるのが現状だ。

 倉又氏は「来店者が減ることは間違いないと考えている。そういった中で、売り上げを保つためにはタイヤ交換や車検に関する付帯作業を増やしていく必要がある。『イエローハット糸魚川店』として存続していくために努力していきたい」としている。あわせて、「今後は技術も高めていき、サービスの質を上げていきたい」と展望を語った。

 糸魚川市民の交通を支え続けてきた同店。仕事のクオリティを上げ、顧客の満足度を高めながら利益も確保していくことを目指す。地域との共存と社会環境への適応を図る姿勢が少子高齢化社会における販売店の存続の要となるのかもしれない。


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