ブリヂストン 東京・小平の開発拠点を軸に新たな価値創出へ

 2020年を“第3の創業”と位置付け、「サステナブルなソリューションカンパニー」への変革を進めるブリヂストンは、将来のイノベーションにつながるような技術開発を強化する。今年から来年にかけて第1期が完成する研究開発拠点「イノベーション パーク」を新たな成長の起爆剤として活用し、顧客や社会にとって価値がある商品やサービスの創出につなげる。

 「自分たちで断トツの商品、ソリューションをつくり新しい価値を創造する」――9月15日、東京・小平に新しく開設する「イノベーション ギャラリー」で行われた会見で石橋秀一CEOはこう述べた。その上で、「競合メーカーにはできない競争優位性がある土俵をつくる。タイヤ単品でもソリューションでも勝っていく」と力を込めた。

石橋CEO
石橋CEO

 同社は今年7月に公表した中長期事業戦略構想の中で、2050年を目標に「サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンを掲げ、コアとなるタイヤ・ゴム事業を強化しながら、成長が見込まれるソリューション事業を一層推進していく方針を打ち出した。その新たな成長戦略のベースとなるのはイノベーションを生み出す力だ。坂野真人CTOは「強いリアルとデジタルを融合してイノベーションを加速させる」とその重要性を語る。

 強いリアルとは、長年培ってきたゴムに関するノウハウや経験値といった“匠の技”を指す。これらをデジタルと組み合わせることによって生まれる商品と独自のソリューションにより、価値を提供し続けることが同社が目指すイノベーションの姿だ。さらに、今後はソリューションビジネスを通じて得られた顧客の様々なタイヤ情報を開発部門にフィードバックすることで、「より早く、正確に、容易に、より断トツな商品、ソリューションを実現する――いわば価値のスパイラルアップを図る」(坂野CTO)という。

坂野CTO
坂野CTO

 それらの構想を実現するための中枢となるのが、第1期として総額約300億円を投じて完成する「イノベーション パーク」となる。1962年に設立した技術センターと同じ敷地にあり、11月から一般公開を予定している「イノベーション ギャラリー」を皮切りに運用が始まる。来年末までに社内外の交流を活発化させる「B-イノベーションセンター」や、そこで生み出された試作タイヤを実車評価できるミニテストコース「B-モビリティ」も稼働する。

 石橋CEOは、「すぐ形にして試すことができるようになる。これを繰り返し、俊敏な開発が可能になる」と期待感を示し、「イノベーションパークが事業戦略に大きく貢献していく」と述べた。

 「稼ぐ力を再構築し、2023年にはもう一度エクセレントカンパニーに戻す」と話す石橋CEO。今後はこれまでとはレベルが異なる商品やサービスを様々なカテゴリーで順次投入していく構えだ。ブリヂストンが実現したい“価値”がどう具現化されていくのか、世界の注目が集まる。

オープンイノベーションを加速

「ブリヂストン イノベーション ギャラリー」
「ブリヂストン イノベーション ギャラリー」

 技術革新のためにブリヂストンが重視しているのが外部の企業や団体などとの協働だ。今後、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)やCASEに代表されるような新しいモビリティが拡大するのに合わせてタイヤにもより革新的な進化が必要になる。価値を持続的に提供するためには、これまでにないような発想や技術が求められそうだ。

 石橋CEOは「共感して頂くことからスタートし、共議・共研・共創へと関係を深め、技術・ビジネスモデル・デザインのイノベーションを加速したい」と展望を示す。

 従来は同じような技術を持つ企業と、より高度な技術を開発することに主眼を置いていたが、今後は全く違う分野、あるいは新たな知見を持った企業なども積極的に誘致していく考えだ。2018年、19年は試験的にそうした会社を50社ほど招き議論を重ねたという。

 オープンイノベーションは今後を左右する重要なテーマであることに間違いないだろう。仏ミシュランはスタートアップ企業を含めた産官学との接点の場を設ける世界的なイベントを継続的に実施しており、米グッドイヤーも官民研究機関の活動に参画し、将来に向けた技術開発を促進しているさなかだ。

 グローバルに事業を展開する巨大メーカーだからこそ持つ膨大なデータを異業種の力で活用すれば、世の中にない新たなソリューションが誕生するかもしれない。そして、それが普及していくことで真の意味で革新と言えるような技術につながっていく。


[PR]

[PR]

【関連記事】