トーヨータイヤ、タイヤ生産2割増 2023年に4400万本体制へ

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カテゴリー: ニュース

 TOYO TIRE(トーヨータイヤ)がグローバルでタイヤ生産能力を拡大させる。現在、米国工場とマレーシア工場で拡張を進めており、さらに2022年には同社にとって初の欧州生産拠点としてセルビアで工場を稼働する。新工場がフル生産に入る2023年にはグループ合計のタイヤ生産能力は現在の約2割増の年間約4400万本に達する見込みだ。強みの高付加価値タイヤで供給体制を強固にしつつ、将来の成長につなげていく。

 TOYO TIREは7月30日、セルビア共和国・ベオグラード市にタイヤ生産子会社を設立し、インジア市で工場を建設すると発表した。新工場では主に欧州向けに高付加価値ゾーンを中心とした乗用車用タイヤとライトトラック用タイヤを製造する予定。

 子会社は今年9月に設立する。資本金は200億円で同社が100%出資。新工場の投資額は約488億円で、昨年資本業務提携した三菱商事から調達した330億円を活用する。工場の従業員数は約500名、敷地面積は約60万平方メートル。来年5月に着工して2022年1月から稼働を始める。23年夏には500万本の生産体制を整えるほか、工場周辺の土地を新たに取得することで将来の増強も可能だという。

 新工場には、IoT(モノのインターネット)を活用した製造実行システムを導入し、自動化や効率化、トレーサビリティの確保を目指す。現在、マレーシア工場でベースとなる技術開発を進めており、新拠点ではこの技術を発展させてスマート工場の確立を図る。これによって国内工場と比較して約3割の省人化を図ることが可能になる。

 また、現時点では独自のタイヤ工法「A.T.O.M.」(アドバンスド・タイヤ・オペレーション・モジュール)を導入する予定はないが、タイヤ開発プロセス「T-MODE」(ティーモード)の活用や、今後欧州に設立するR&Dセンターとの連携を行う。自動車産業の先進的地域となっている欧州で求められる技術力や低コストで高性能な製品の生産に向け、「一つ進化した工場を作る」(同社)としている。

 さらに新拠点の設立に向けて、「欧州プロジェクト推進室」を新設し、8月1日付けで田中利幸氏が室長に就いた。新工場での原材料調達や物流など、上流から下流までの仕組みづくりを社内で協議していく。

 同社は2017年に策定した4カ年の中期経営計画で、北米以外の地域での販売力向上やグローバルでの生産供給体制の底上げを戦略の一つに掲げ、新工場の設立を検討していた。

 セルビアには仏ミシュランのグループ会社や米クーパータイヤが工場を構えているが、日系タイヤメーカーが進出するのは今回が初めて。現地は賃金水準が低い一方で、質の高い人材が多いという。また、「近年の経済改革や財政健全化、自動車産業の集積化、日本との二国間関係強化といった進展が顕著で、魅力あるビジネス環境が整ってきている」(同社)ことも決め手となった。

 なお昨年、同社のタイヤ販売本数のうち欧州での実績は16%(約600万本)。現在、国内工場とマレーシア工場から輸出しているが、新工場の設立によって製品出荷時の関税や物流面でもメリットが出てくる。さらに中東やアフリカ向けにも輸出するほか、北米市場向けのオールシーズンタイヤなども生産する予定。

 同社はタイヤ生産拠点として国内で仙台工場と桑名工場、海外では米国に加えて中国とマレーシアにそれぞれ2工場を有している。8カ所目に欧州の生産拠点が加わることで、供給体制の最適化や次世代技術の活用を進めていく考えだ。

米国工場を1割増強 SUVタイヤの需要増に対応

TOYO TIREの米国工場
TOYO TIREの米国工場

 TOYO TIREは7月12日、米国のタイヤ工場の生産能力を約1割増強すると発表した。約70億円を投じて建設済みの工場棟に年産120万本の生産設備を追加導入する。設備の導入は来年9月に開始し、2021年1月から稼働する予定。これにより、同工場の生産能力は計画完了時に年産1390万本となる。

 同社では「現在、北米自動車市場ではピックアップトラックや大型SUVの販売が堅調である」としている。こうした市場環境を背景に、2020年以降も大口径タイヤの需要拡大が見込まれるため、生産能力の増強を決定した。

 同工場は、現地でニーズが高いピックアップトラック/SUV用ライトトラックタイヤを中心とした大口径タイヤを生産し、北米市場に供給している。これまで複数回の増強を行っており、同社グループで最大の生産能力を誇る。


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