東洋ゴム工業仙台工場~仙台港間を走行
タイヤの輸送に欠かせないコンテナ。現在、国内では長さ約12.2mの40ft(フィート)背高コンテナが主流だが、輸送コスト削減による国際競争力向上のため、新たな取り組みが始まった。
東北の産学官でつくる東北国際物流戦略チームは11月16日から20日の5日間、仙台塩釜港から東洋ゴム仙台工場(岩沼市)間で「45ft国際海上コンテナ輸送実験」を実施した。公道を使用する本格的な実験は今回が初めて。
45ftコンテナは、国内では安全性の観点から公道走行が制限されているが、北米・中国間の海上輸送で取扱量が増加するなどグローバルでは利用が拡大している。40ft背高コンテナと比較して全長が約1.5m長く、積載容積は約13%(40ft対比では約27%)増える。
例えば、現状10本の40ft背高コンテナを使用している場合、45ftコンテナでは9本で済む計算だ。輸出企業にとっては物流コストを抑制でき、走行台数を減らすことで二酸化炭素の削減など環境負荷低減も期待できる。
実験初日の16日は、東北経済連合会や協力企業、国交省の関係者など約100人が視察に訪れた。今回の実験に協力した東洋ゴム工業仙台工場で北米へ輸出するタイヤを45ftコンテナに積み込んだ後、約30km離れた仙台港まで輸送。工場内やターミナルでのトレーラーの取り扱い状況、一般道での右左折時の安全性を確認した。実験ルートで最もカーブがきついとされる交差点での左折時や勾配のある陸橋通過時でもスムーズな走行が実証された。
東北国際物流戦略チームの座長を務める東北大学の稲村肇教授は「45ftコンテナは、国際競争力の観点から非常に意義がある。今回の実験で安全、スピーディかつ確実な輸送が可能なことを示したい」と話す。東北地区のコンテナ自域内港湾利用率は43.9%と全国平均の68.3%と比較して低いレベルにあり、国際物流における非効率が物流コスト増大やビジネス機会の喪失になっているのが現状だ。全国に先駆けて45ftコンテナを実用化することで、首都圏近隣の港湾に対する優位性が高まり、経済活性化も期待できる。
同チームでは今回の実験について効率性やドライバーの操作性などを検証し、来月中に結果を公表する。それを受けて宮城県では、来年1月にも国の構造改革特区に「みやぎ45フィートコンテナ物流特区」を申請する予定だ。併せて、対応トレーラーの国内生産や輸出入バランスの確保など普及へ向けた活動を展開していく。
早期実現に期待
今回の実験に協力した東洋ゴム工業のタイヤ事業本部SCM統括部河野博部長は、本紙の取材に次のように話した。
――仙台工場の生産品目や輸出比率は。
「仙台工場は最新の工法を取り入れたマザー工場と位置付けている。ハイパフォーマンスタイヤを含むPC・LT用タイヤを日産4万本生産しており、そのうち約7割が輸出用となっている。
仕向地は欧米が中心でコンテナ数(40ft背高)に換算すると月平均1500本になる」
――45ftコンテナのメリットは。
「実用化は当社のSCMにおける最重要課題の一つ。環境負荷を低減でき、物流コストも約3割削減可能だと試算している。非常に多くのメリットがあるため、宮城県の特区申請が早期に認可されることを期待している」
――実用化が決定した場合、新たな設備投資は。
「現有設備を活用できる。積載にかかる作業時間、積み込み方法にも大きな変更はない」