TARO’S WORKSが提案する「トラックタイヤ用トルク管理ソリューション」

シェア:
カテゴリー: レポート, 整備機器

 自動車整備用機械工具の開発・販売を手掛けるTARO’S WORKS(長野市)はこのほど、トラックタイヤサービス用のコードレストルクマルチプライヤー「QXトラックトルク」の販売を開始した。新製品はホイール・ナットの締め付け作業をデジタル制御により数値化するほか、本数の監視や締め忘れ検出機能により、人為的な作業ミスを回避することが可能になる。さらに無線通信によるネットワークを構築してツール制御と実行結果のデータを一元管理できる機能も備えたプロ用のプレミアム機材となる。根岸芳太郎CEOは、「安全で効率的な物流を実現するためにタイヤのサービス品質は重要になる。特にホイール・ナットの締め付け作業を追跡可能なソリューションにすることで次世代のタイヤサービスを実現できる」と話し、整備事業者やタイヤ販売店、運送事業者に製品の導入を訴求している。

次世代のサービス品質を支える

「QXトラックトルク」
「QXトラックトルク」

 「QXトラックトルク」は米インガソールランド社のトルクツールに、TARO’S WORKSが設計した反力受けを組み合わせたトラックホイール専用のコードレス電動トルクレンチ。JIS方式だけではなく、大型車で主流になりつつある新ISO方式ホイールの車両にも対応している。この最新機器を導入することにより、オペレーターはツール操作部で予めプログラムされた締め付けモードを選択するだけで適切な締め付け作業が行えるようになる。

 根岸CEOは「人間が作業すればどうしても不注意や勘違いが生じてしまうことはある」と現場の課題をあげた上で、「『QXトラックトルク』は数値入力などは機械が行うので人的ミスは無くなる。オペレーターはツールをあてがい、ターゲットに対して締めるという行為をするだけ」と製品の特徴を話す。

 「QXトラックトルク」による工程はシンプルだ。トラックのドア部などに貼ったステッカーのQRコードから車体の仕様が判別できるようにしておけば、作業者はQRコードを介して端末へ送られてきた指示通りに締めていくだけだという。それにより、「確実に締め付け作業を行った」というエビデンスが残される。

オプションのノーズエクステンションを装着した「QXトラックトルク」
オプションのノーズエクステンションを装着した「QXトラックトルク」

 「QXトラックトルク」にはプロ用の機材に相応しい多様な機能を備えている。例えば、多機能表示ディスプレイとシンプルな操作モジュールだ。これらの機能によって回転方向や角度締め、実行本数など8通りの締め付け構成を簡単にセッティングできる。さらに、厳しい環境下での使用も想定し、電動式ナットランナーに必須の倍力機構には世界最高水準の英ノーバー社製のギヤボックスを組み合わせて品質を一段上に高めた。

 また、“より迅速に、より正確に、より安全に”という製品コンセプトから±5%以下の高精度トランスデューサーを採用したほか、二度締め検出・実行本数監視機能も搭載している。

多機能表示ディスプレイ
多機能表示ディスプレイ

 この二度締め検出・実行本数監視機能は、目標トルクまでの回転角度を監視するもので、目標に到達するまでのナット回転角度が基準値に満たない場合、「二度締め」と認識されるもの。また、締め忘れ防止機能もあり、全てのナットが目標トルクで適切に締め付けられたことを、実行データと二度締め検出信号をもとに監視する。

 根岸CEOは「一般的な製品は、例えば9本目の作業が終わった後、10本目に作業をするべき箇所を間違えてもその検出ができず、『単に10回締めた』と誤信号を出してしまうケースがある」と指摘する。

 それに対して「QXトラックトルク」は、軸の回転角度を読み取るため、作業者がミスに気付くことができる仕組みだ。「規定値に到達するまでに軸が何度回ったかを読み取るもので、自動車メーカーの生産ラインで使用される角度締めを行う機能を本機のエラー検出のために活用した」という。

TARO’S WORKSの根岸CEO
TARO’S WORKSの根岸CEO

 同社のソリューションは複数台のトラックを管理しているような企業での導入を想定しており、デバイスネットワークの拡張性も訴求ポイントとなる。ネットワークではスキャンデータからツール締め付け構成を自動選定し、締め付けレポートと車両、作業者を紐づけできる。また、実行結果はリアルタイムで反映され、例えば何レーンも使用してタイヤ交換をするような現場では作業全体をモニタリングできる仕組みを構築できる。

 一方、ここまでの大規模なシステムは求めていない場合、本体側にブルートゥースを搭載してモバイルアプリでデータを収集、それをCSV形式で出力するという活用方法にも対応する。

 近年は大型車の脱輪事故が増加傾向にあり、コンプライアンスへの取り組み、作業価値の重要性は高まっている。作業ミスや作業記録の記入漏れといったヒューマンエラーは誰にでも起こる可能性はある。そういったリスクを無くすだけではなく、トルク管理をデジタル化し、作業履歴を残すことの意義は大きい。荷主からの「より確実な作業記録を」という要求が一層高まっていくと見込まれる中、「QXトラックトルク」は今後のタイヤサービスを支える切り札になりうる。

 メーカー希望小売価格はオープンだが、システムをフルに導入した場合のコストは200万円程度と想定されている。同社では「例えばこれまでの工賃に、プラスアルファとして“作業の価値”を加えることで比較的早期に投資を回収できるのでは」と見込んでいる。


[PR]

[PR]

【関連記事】