日本ミシュランタイヤが推奨する「リグルーブソリューション」

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カテゴリー: レポート, 現地

認知度が着実に向上

 昨今の原油価格の高騰やタイヤ価格の値上げを背景に、日本ミシュランタイヤが推奨する「リグルーブ」への関心が高まっている。今回、その作業を担うタイヤディーラーを訪れ、「リグルーブ」のメリットや今後の展望を聞いた。

リグルーブしたタイヤとの比較
リグルーブしたタイヤとの比較

 「リグルーブ」とは、摩耗が進んだトラック・バス用タイヤに再び溝を刻むこと。この作業を施すことで、タイヤの走行寿命を延ばすことが可能になる。さらに安全性の向上や省燃費にも貢献する技術として海外では広く普及しているが、国内で実施しているのは日本ミシュランタイヤのみ。

 同社トラック・バスタイヤ事業部の中川原光昭マネージャーは、「以前はなかなか理解されないケースもあったが、ここ数年で着実にユーザーへ浸透してきた」とユーザー拡大への手応え話す。

 リグルーブを実施するメリットとして①「低コストで、新品時から通常使用限度までの走行距離と比較して最大約25%の走行距離の獲得が可能になる」②「低燃費効果」③「更なるウエットグリップ性能」④「最大4mmまでリグルーブすることで、さらに深い溝を得ることができるため高い排水性を確保する」の4点を挙げる。

 この中で輸送事業者にとってとくにメリットが大きく感じられるのは、ライフ性能と低燃費性能ではないだろうか。

 「新品時はタイヤのブロックが高いため、転がり抵抗も大きい。しかし摩耗してくると転がり抵抗が小さくなるので、当然、燃費にも好影響が出る。この段階からさらに25%ライフが伸びるため、全タイヤライフの中でより長期間、燃費の良い状態で使用できる」というわけだ。

 ミシュランの4トン車向け以上の製品は、ほぼ全てリグルーブが可能。溝の底部とスチールベルトの間のアンダートレッド部が通常タイヤに比べ3~4mm厚くなっている。残溝が2~4mmまで減った段階でその部分にリグルーブを施すことで、結果的に新品タイヤの3分の1以上の溝深さが得られる。

 リグルーブに対応する製品は、通常のタイヤと比較してゴムを5%程度多く使用しているため、その一部はタイヤの価格に反映している。ただ、ライフが大きく伸びるので、トータルコストで考えればメリットが大きいといえる。

 同社では以前からタイヤの経費について「購入時のイニシャルコストではなく、使用時のランニングコストを含めたトータルで考えるべき」と訴求している。その一つの柱となるのが「リグルーブ」であり、「ロングライフ」「リトレッド」と合わせた「3R」をユーザーへ提案している。

 中川原マネージャーは「当社はタイヤの寿命を『新品タイヤを装着して溝が減るまで』とは考えていない。摩耗した後もリグルーブやリトレッドを行うことで、廃棄タイヤの数を減らし、環境への負荷を少なくすることもできる。そしてお客様のタイヤに関わる経費も大きく低減できるはず」と話す。

ユーザー数は2年で倍増

小林タイヤ商会
小林タイヤ商会

 リグルーブは、全国の主にミシュランのTB用タイヤを扱うディーラーで行われている。そのうちの一つ神奈川県川崎市にある「ミシュラントラックセンター」を訪れた。

 同店は小林タイヤ商会(静岡県富士市)の川崎営業所として1997年に開設。多くの工場が立ち並ぶ京浜地区にあり、大型のトラックが行き交う産業道路沿いに店舗を構える。

 取り扱いの約7割がミシュランタイヤ。店舗から数キロの場所にコンテナターミナルもあるため、大型産業用タイヤも扱う。

 守西勉所長は、顧客のリグルーブに対する関心の高まり、意識の変化を感じている。「以前は『リグルーブをしてまで使用したい』という方はそれほど多くなかったと思います。しかし、燃料価格の高騰や新品タイヤの値上げがあったため『リグルーブやリトレッドをして出来るだけ長く大事に使い続けたい』という意識が強くなってきたと思います」

 同店がリグルーブを提供するユーザー数は、2009年を100とした場合、2010年に110%、2011年には190%と2年間でほぼ倍増している。

左から小林社長、守西所長、ミシュランの中川原氏
左から小林社長、守西所長、ミシュランの中川原氏

 店舗では5名のスタッフがリグルーブの技術を有しており、2台のリグルーバー(溝を刻む機械)で効率的に作業を行う。実際の作業を見学すると、驚くほど短時間に作業が進む。パターンやサイズにもよるが、熟練者はわずか10分程度で完成させるそうだ。初めてリグルーブを導入する際には、ミシュランのスタッフが作業マニュアルを基づいたトレーニングを行うが、特別な技能は求められない。

 守西勉所長は、今後の目標として「まだ認知が行き届いていないお客様や有効に活用して頂いていないケースもありますので、そういった方々に対し、実際のデータを用いて『リグルーブをすることでこれだけコストを削減できます』と提案していきたい」と意気込む。

 長年、多くの製品に携わってきた小林タイヤ商会の小林俊明社長は「ミシュランの優位性として耐久性の良さがあるし、サイプ技術などもすごい。販売店サイドとしてはローテーションなどの作業が少なくて済むお客様を増やしていくほうが、より戦略的な商売に繋がる」と話す。

 その一方、「販売店との関係をより密にすべき」と要望する。今後、メーカーと販売店のコミュニケーションを活性化し、一層の拡販に取り組んでいく考えだ。


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