日本ミシュランタイヤの建設機械用タイヤ “サービス力”武器に更なる普及へ

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カテゴリー: レポート, 現地

ラジアルのメリットを追求

 鉱山や建設、土木工事の現場で人々の暮らしに不可欠な社会インフラの整備や資源開発が行われている。その多くは人が歩くことも困難な岩場や泥濘地などで、未舗装の路面に鋭利な石が飛び散っている過酷な環境だ。そうした厳しい現場で使用される建設機械の足元を支えるのがOR(Off the Road)用タイヤ。バイアスタイヤが主流のこのカテゴリーで、一貫してラジアルにこだわり続け、ユーザーから支持を受けているのがミシュランの製品だ。

日本ミシュランタイヤの太田氏
日本ミシュランタイヤ太田氏

 北米や中国、オーストラリアなどの大規模鉱山で使用される63インチや51インチクラスの超大型OR用ラジアルタイヤを製造できるのは、世界でも数社しかなく、ミシュランとブリヂストンが市場をほぼ2分している。ミシュランの技術力や品質の高さはグローバルでは広く認知されているが、国内ではライバルのブリヂストンと比較すると、まだまだ存在感を示せていないのが現状だ。

 だが、日本ミシュランタイヤ大型タイヤ事業部営業部の太田保夫部長は「日本はミシュラングループ内で重要な位置にある」と強調する。「日本でOR用タイヤのビジネスを継続していくことは大切だ。日本市場では、主に使用されるのは中小型のOR用タイヤ。ライバルとなる国内メーカーがしのぎを削る、一番厳しいマーケットである。その中で我々の価値をどうやって証明していくか、お客様にミシュランを認知して頂き、どう拡販していくのか――このことは他のエリアにおいてもベンチマークとなる」と話す。

 加えて日本は、多くのユーザーがタイヤのことを熟知している、いわば「タイヤの先進国」。こうした市場でラジアルをどのように売り込んでいくのか――この点もひとつの指針となっている。

 ミシュランが他社に先駆けてラジアルタイヤの開発に成功し、特許を取得したのは今から約70年前の1946年。その3年後にラジアルタイヤを発売し、1952年にはトラック用タイヤにもラジアルの技術を応用、1959年にはOR用ラジアルタイヤを発売している。これらは全て世界初となる。

 それ以降“ラジアルのパイオニア”として、あらゆるカテゴリーにおいてラジアルにこだわり、歴史を刻んできた。

 OR用タイヤでは、2001年に高さ4mにもなる超大型の55/80R63を発売。現在では、世界最大級のタイヤ「MICHELIN XDR 59/80R63」を世界各地の大規模鉱山などへ供給している。なおこのサイズとなると、小型車2台分に相当する890kgのスチールと、乗用車用タイヤ600台分以上に相当する3850トンものゴムから1本のタイヤができている。

特徴は高い安定性

 ミシュランはグローバルメーカーの中で唯一、OR用バイアスタイヤを製造せず、ラジアルの優位性を訴求しているが、バイアスと比較して何がメリットなのだろうか。

 同社が第一に挙げるのは、その高い安定性だ。ラジアルはサイドウォールとトレッドが独立構造となっており、荷重に対して全く別の動きをするのが特徴。接地面圧が均一で、荷重が増加すると接地長が増すため、接地面上でトレッドゴムは安定する。また、荷重を受けるとサイドウォールのみがたわみ、堅固なスチールベルトで形成されているトレッドは独立した安定性を維持することができる。

 一方、バイアスタイヤは一般的に、サイドウォールとトレッドが一体構造となっているため荷重を受けるとサイドウォールだけでなくトレッド部にも大きく影響が及ぶ。確かにバイアスの良さもあるのだろうが、やはり構造的に接地面圧が安定しづらく、荷重が増すとトレッドゴムが動く(滑る)という性質は避けられない。

 さらにラジアルスチールカーカスの特性として、①グリップが良い②乗り心地の向上③パンク率の低減④偏摩耗の抑制⑤燃費向上⑥寿命が長い⑦車両の傷みが少ない⑧発熱が少ない――といった点も評価されている。構造によってこれだけの違いがあり、最終的にユーザーが得られるベネフィットに大きな差となって表れるという。


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