ミシュラン、トラック・バス用タイヤの「3R」展開を加速

 日本ミシュランタイヤは7月26日、新潟県内でトラック・バス用タイヤの「3R」コンセプトに関する説明会を開催し、同社がリトレッドタイヤの生産を委託する髙瀬商会の関連会社、トーヨーリトレッドの製造現場を公開した。3Rはミシュランがトラック・バス用タイヤ事業を展開する上で重要な柱となっており、輸送業界の課題解決に繋がるソリューションとして一層の普及が期待されている。

「X One」のリトレッド生産開始

「X One」のリトレッド生産を開始

 「『X One』のリトレッドが加わることで、我々の3Rソリューションが完成した」――説明会に出席した日本ミシュランタイヤB2Bタイヤ事業部の高橋敬明常務執行役員はこう力を込めて話した。

 3Rはライフ性能に優れたタイヤに、摩耗した溝を掘り直す「リグルーブ」、ケーシングを再利用する「リトレッド」を活用することで、タイヤの経費削減や環境負荷低減に繋げるコンセプト。同社では過去からトラック・バス用タイヤで3Rを推奨し、その意義を広く訴求してきた。

 一方で、輸送業界を取り巻く環境は厳しさを増している。排ガスや安全に対応する装置が増え車重が重くなるにつれて積載量が減少し、またドライバーの労働時間管理や過積載への取り締まりも厳格化されるなど、輸送効率の向上が命題となっている。さらにドライバー不足も深刻化している。一部の事業者では女性や高齢者を活用するために荷役作業の軽労化などを進めており、その分、新たな投資が必要となるケースも少なくないようだ。

 こうした状況に対してミシュランが提案を強化しているのが、ワイドシングルタイヤ「X One」(エックスワン)だ。「X One」はトラックの後輪に装着されている2本のタイヤを1本にするもので、1軸当たり約100kgの軽量化を実現し、積載効率向上が期待できる。国内市場では2007年に初めて導入されて以降、販売は右肩上がりが続いている。

B2Bタイヤ事業部の高橋常務

 ただ、通常のダブルタイヤと異なり、国内でリトレッドには対応していないのが課題だった。こうした中、同社では数年前から検討を進め、委託先の工場で検証を終えてついに実現にこぎつけた。高橋常務は「今後、運送会社の課題に対して包括的な提案が可能になる」と述べ、一層の販売拡大へ意欲を示した。

 日本ミシュランタイヤがリトレッドの生産を委託しているトーヨーリトレッドは2005年にミシュラン製品の取り扱いを始め、2014年にはミシュラングループが世界で初めて自社と同等レベルの技術があると認定した工場。

 生産規模は年間10万本から11万本で、コールド方式(プレキュア)とホット方式(リモールド)の両方に対応しているが、ミシュランの場合は多品種少量生産に適したコールド方式を採用。品質面で重要になる受け入れ検査ではシアログラフィを用いた入念なチェックを実施しているほか、加硫した後の高圧検査など、高い品質管理体制が徹底されているのが強みだ。

 「X One」のリトレッドは9月頃に正式に生産をスタートする。トーヨーリトレッドの後藤高根社長は、「消費者に使って頂けるコストにすることが重要となる。これから改善点を見つけながら、1年くらいで軌道に乗せていかなければならない」と目標を話していた。

 輸送量が拡大する一方で、取り組むべき課題が多い輸送業界に対して、「X One」の3Rコンセプトはどれほどのインパクトを与えることになるのか――今後の市場の動きに注目が集まる。

関連:【ミシュラン】3Rを輸送業界の課題解決の切り札に


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