住友ゴムが成果報告「京」を利用しゴムの性能向上へ

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カテゴリー: ニュース
住友ゴムの内藤課長
住友ゴムの内藤課長

 住友ゴム工業はスーパーコンピューター「京」を利用した研究がHPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)利用研究課題優秀成果賞を受賞し、10月30日にオンライン成果報告会に出席した。

 今回受賞した研究は「タイヤ用ゴム材料の大規模分子動力学シミュレーション」で、タイヤの耐摩耗性の改善に寄与するゴムの高強度化を目的としたもの。

 従来は、ゴム内部のシミュレーションをマイクロメートルやナノメートルなど様々なスケールごとに開発し、グリップ性能の向上などにつながるゴム材料を開発していた。ただ、「摩耗時のゴムの破壊現象は、分子レベルからナノ、マイクロまで広いスケール範囲にまたがって起こる」(研究開発本部研究第一部課長の内藤正登氏)ため、この手法ではゴムの強度について検討することが困難だったという。

 こうした課題を解決するため、同社は「京」を利用し、ゴムの破壊に関する大規模な分子シミュレーションを実施。これにより、ゴムの強度向上には、シリカとポリマーの界面部分で破壊の起点となる空げき(ボイド)の生成を抑える必要があることが明らかになった。内藤氏は「ポリマーとシリカを結合させるシリカの表面改質剤(カップリング材)の構造についてシミュレーションで検討を行い、ボイド生成が抑制されるカップリング材の開発につなげた」と話す。

 新しいカップリング材を適用した「エナセーブNEXTⅡ(ネクストツー)」は、従来商品から低燃費性能やウェットグリップ性能を維持したまま、耐摩耗性能が50%以上向上した。

 また今年度の取り組みでは、カップリング材の結合の数を増やすことでさらに高強度化できる可能性があることが分かった。こうした成果は、「練り工程や加硫工程の工夫などの形で商品に反映させている」という。

 内藤氏は「今後もシミュレーションを活用して新たなゴム材料を生み出し、今後の自動車を支える次世代のタイヤ開発を進めていきたい」と今後への展望を示す。同社では来年度から本格運用が予定されているスーパーコンピューター「富岳」の活用も検討しているという。


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