トーヨータイヤ、開発体制を拡充 テストコース新設を検討

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カテゴリー: ニュース

 TOYO TIRE(トーヨータイヤ)がタイヤの研究開発機能を大幅に強化する。早ければ2023年にも夏用タイヤのテストコースを新設して、現在は宮崎県の施設で行っている評価機能を全面的に移管する。タイヤのラインアップ拡充や高性能化に伴い、評価数が年々増加していく中、試験データの精度向上や実車試験の効率化を図り、競争力を高めていく。

サロマテストコース清水社長
清水社長

 トーヨータイヤは2月21日に北海道の「サロマテストコース」を報道陣に公開し、清水隆史社長らが技術開発への取り組み状況を説明した。開発の最終段階で重要な役割を担うテストコースについて、清水社長は「様々な知恵を集めて形にしたタイヤを車両に装着して性能を点検する、いわば最後の砦でありタイヤづくりの聖域だ」と力を込める。

 同社はテストコースを国内で2カ所運営している。オールシーズンタイヤなども含めた冬用タイヤの実車評価は「サロマテストコース」で行っており、全長3kmの外周路や900mの直線を備えているほか、山の斜面を生かした勾配路などが整備されている。敷地も十分に確保されており、2017年に安定した条件下で氷盤試験ができるアイスドームを稼働。さらに、昨年末には会議室やトラック用タイヤの交換にも対応する作業ピットを併設した事務棟を開所するなど拡張を進めてきた。

 一方、夏用タイヤの試験で活用している「宮崎テストコース」は、1975年に開所して以降、拡充を進めてきたものの、現在は手狭になってきているという。

 同社は従来から強みがあった北米以外に、欧州やアジア、中近東といった市場で拡販に注力していく方針を掲げているほか、生産財タイヤのシェア向上も推進する考えを示している。今後、商品が拡充するのに伴い、試験が必要になるタイヤも増加していくものとみられており、現在のキャパシティでは効率的に対応しきれない可能性が出てくる。

 こうした中、清水社長は夏用タイヤのテストコースの新設を検討していることを明らかにした上で「国内外で候補地を選定している」と話した。完成すれば宮崎県のテストコースは閉鎖する一方、新しい拠点では設備を拡充して評価体制を強化していく方針だ。

 さらに、2022年1月から稼働を予定しているセルビア新工場の隣接地にもテストコースを新設する。当初は直線コースを配置する予定で、昨年稼働したドイツの研究開発センターで最新の材料などを研究し、プロトモデルを工場で試作、その性能を実車で試験することを想定している。試作タイヤの評価を迅速にフィードバックできれば開発面でメリットが大きく、市場ニーズを先取りした商品開発につなげていくことが期待される。

シミュレーション技術の進化も

トラクション解析のイメージ
トラクション解析のイメージ

 トーヨータイヤは2月25日にAI(人工知能)とCAE(コンピューター支援技術)を融合してリアルタイムでタイヤ性能のシミュレーションを行うことができる技術を確立したと発表した。

 このシミュレーション技術は、AI技術を介して蓄積したデータからタイヤ性能の予測値を瞬時に導き出すことができるもの。設計仕様をインプットしてシミュレーションし、算出された性能値が目標性能に到達するまで繰り返すという従来の開発手法とは全く異なるプロセスとして昨年7月にコンセプトを発表していた。

 今回は大阪大学と共同でタイヤの仕様と性能の可視化に成功。シミュレーションデータを題材として機械学習を実施したところ、短時間の計算で精度の高い予測が可能になったという。

 さらに、同社はシミュレーション技術を活用し、実際の使用環境における雪質を考慮した高精度なスノートラクション性能の予測が可能になったと発表した。これにより、様々な使用環境での駆動、制動時のブロックやサイプの変形が可視化でき、環境に最適なトレッドパターンの検討が行える。

 このスノー性能予測技術は今後の新商品の開発に活用していくという。


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