スタッドレスタイヤ新商品試乗レポート=横浜ゴム「アイスガード 8」  「水膜バスター」でさらなる安全・安心を追求

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カテゴリー: レポート, 試乗
iceGUARD 8
iceGUARD 8

 9月1日から発売となった横浜ゴムの新スタッドレスタイヤ「iceGUARD 8(アイスガード エイト)」=写真1=。本紙7月23日・30日合併号で既報の通り、新たな基盤技術を採用したことで同社の得意とする「氷上性能」を一段と高めることに成功。2月には北海道タイヤテストセンター(TTCH)で報道陣向けに試乗会を開催。新たな技術で、前身の「iceGUARD 7」からどのように進化したか。レポートする

 

 

 テーマは「性能の最大化」。氷上性能は14%向上

 

 新しく採用した技術や性能については既報だが、おさらいをしよう。

 4年ぶりのシリーズ新作となったiceGUARD 8で打ち出した新コンセプト「冬テック」。氷とゴムの接触点を示す「接触の密度」と、路面とゴムの「接触の面積」、この二つの最大化を実現する。これを支える新素材が「水膜バスター」だ。

 「水膜バスター」は従来のiceGUARD 7(以下、「7」)で採用の「吸水バルーン」と比較すると、小型・多層構造であることが特徴で、高密度に配置することができる。これにより接触の密度は従来比63%増を実現するとともに、吸水量も8%向上させた。

 構想が始まったのは、17年のiceGUARD 6を発売した直後のこと。吸水バルーンの素材を生かした性能向上の余地はありつつも、すでに「その限界も見えてきた」。そこで海外の展示会を見て回り、多数の素材を調査し、今回の素材を見つけたという。

 独自のAI利活用フレームワーク「HAICoLaB」を活用することで、接地面積・ブロック剛性・溝エッジ量のいずれも向上。これらにより全体性能をみると氷上性能が14%向上。氷上制動は14%向上し、氷上旋回性能も13%向上した。雪上制動性能は4%向上したほか、ドライ・ウェットはいずれも3%改善。静粛性能にいたっては22%向上した。また「HAICoLab」の活用で、開発にかかる工数を3分の2程度まで削減することができたという。

 

 AGW拡大の主力に、「氷上性能」さらに上へ

 

清宮眞二社長
清宮眞二社長

 「7」の後継であり、「冬テック」の第一弾商品。清宮眞二社長=写真2=は中期経営計画「YX2026」でのAGW拡販最大化に触れながら、「iceGUARD 8は、大きな柱のひとつだ」と力を込める。

 昨今は暖冬が常態化し、降雪量の減少がみられる。一方で、「ドカ雪」と形容されるような災害級の豪雪に見舞われたり、気温の温暖化傾向が強まることでアイスバーンの発生が増えている。清宮社長はこうした背景を踏まえ「冬道を安全に走るためには、スタッドレスタイヤの役割は大きく、さらなる改良が求められているところだ」と指摘する。

 ユーザーのニーズも「さらなる安全」だ。タイヤ消費財製品企画部製品企画2Gの増渕栄男主査は、同社のスタッドレスタイヤを購入したユーザーを対象に実施したアンケート結果をもとに説明。それによると、氷上性能に高い満足感を獲得しているという声が多数を占める。そのうえで「79%が4年以内に買い替えを検討するが、さらに高い氷上性能、特に凍結路面でのブレーキ性能を求める声が強くある」と明かした。

 

 氷上制動・旋回試験で先代の「1ランク上」

 

 試乗は氷上での制動・旋回比較、雪上での発進・操縦安定性・制動の比較、ハンドリング体感の計五つのメニューが用意された。

試走シーン1
試走シーン

 iceGUARD 8のキャッチコピーは「より氷に効く」。まず注目が集まるのは氷上での性能だ。TTCHには屋内氷盤試験場と23年開設の国内最大級の氷盤旋回試験場を有する。ここで、トヨタ・カローラにiceGUARD8と先代の「7」を装着し比較が行われた=写真3=。

 制動比較では、それぞれ数回ずつ時速30kmまで加速し、どれくらいの距離で制動できるかを試す。「7」は18.5m、18m、18m、17.5mと、安定して18m前後で停止。横浜ゴムの担当者は「先代モデルだが、しっかり止まれる」と自信を持つ。

 ここから「制動性能がさらに1ランク、2ランク高めることができた」というiceGUARD 8。評価試験を行うと、距離は15m、15.5m、13.5m、14mと優位性を披露する。

 氷上旋回試験もそれぞれ高い性能を誇るが、そのなかでもiceGUARD 8が一枚上手といったところだ。「7」は「速度を上げるとアンダーステアになるが、それでも挙動は穏やか」という評価。一方、iceGUARD 8は路面にぴったりとくっついているような走りで、「コーナー中のハンドリングも効き、コントロール性能が向上している」と、差を見せた。

 

 雪上でも高い安心感。多様な車種にマッチ

 

試走シーン2
試走シーン

 雪上ではカローラで発進・操縦安定性・制動を実施。ハンドリング体感はトヨタ・アルファードとスープラ、さらにMINI、テスラMODEL3、BMW、日産・サクラと2回に分けて試乗を行った=写真4=。

 それぞれを乗り比べて感じられたのは、車種が変化してもタイヤはいずれにもマッチしているということだ。たとえば、高級ミニバンのアルファードではしっかりと止まることはもちろん、トラクションコントロールも効き多くのハンドル操作は要求されない。

 一方でスポーツ車のスープラは強いパワーを持つが、それでも身体が大きく振られることはなく、タイヤの踏ん張りが効いているのが感じられた。

 カローラで行った発進・操縦安定性・制動試験では、スロラームのふり幅で「7」のほうの振りが大きいなどの差がでる結果となった。

 

 2世代先を先取り、末広がりの「八」刻印

 

 試乗会のなかでしばしば話題に出たのは「iceGUARD 8の進化はもちろん感じられたが、『7』の性能は依然として高い」ということ。

 横浜ゴムもそれには自負をみせる。試乗会が終わったあと、報道陣の質問に答える形で「第8世代ではあるが、さらに2世代先を先取りすることができたのではないか」と話した。

 iceGUARD 8の特徴のひとつには、ゴムの劣化を抑制させる「オレンジオイルS+」の配合。「7」の「オレンジオイルS」を進化させたもので、4年後の氷上摩擦力低下を防ぐ。新品時と比べてどれくらい性能が維持されるのか、今後注目されるところだ。

 iceGUARD 8のサイドウォールとショルダー部には「八」「8」をモチーフにしたデザインを刻む。横浜ゴムにとって「末広がり」の節目の商品。これからのAGW拡販の主力を担うタイヤとなりそうだ。

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