タイヤ整備機器新製品  東洋精器工業  乗用車用ホイールバランサー「トリム BP-3021」

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カテゴリー: レポート, 整備機器

 業界初、〈ボイスナビ〉機能を搭載

 だれもが高い品質レベルの作業が可能に

 

青木茂雄執行役員商品企画部長=写真(1)=
青木茂雄執行役員商品企画部長=写真(1)=

 ホイールバランサー「TRIM(トリム)」シリーズを展開する東洋精器工業。先に開かれた「第38回オートサービスショー2025」のバンザイ社ブースで、シリーズ新製品のワールドプレミアを行った。官民をあげて推進中の〈クールジャパン〉にもリンクするその新機能は、この製品群では過去に例をみない。それだけにショー展示でもとりわけ大きな注目を集めた。青木茂雄執行役員商品企画部長=写真(1)=が新製品の解説と実演デモを担当してくれた。

 

 外観デザインをフルモデルチェンジ

 

 乗用車用ホイールバランサーの新製品「TRIM BP-3021」。スタンダードモデル「BP−68/68W」のフルモデルチェンジとなる。

船の最前部、舳先をイメージさせる本体デザイン=写真(2)=
船の最前部、舳先をイメージさせる本体デザイン=写真(2)=

 船の最前部、舳先(へさき)をイメージさせる本体デザイン=写真(2)=。落ち着きのあるマットブラックをベースに、深みのあるレッドを差し色としたカラーリング。このような見た目の外観印象だけでも〝NEW〟感は強く印象付けられる。だが、そこに搭載された新機能こそ、エポックメーキングと評価されるに違いない。

「ボイスナビ」機能=写真(3)=
「ボイスナビ」機能=写真(3)=

 それは「ボイスナビ」機能。後述するが、女性の音声とLCDモニターによる高精細グラフィックアニメーション=写真(3)=で作業をアシストするものだ。

 

 「BP-3021」のスペックは、本体高さ1025ミリ(標準で付属のカバー高さ1650ミリ)×幅1290ミリ×奥行き1145ミリ。コンパクトな設計でさまざまなピットに配置しやすい。電源AC100V。電源のスイッチ位置は旧モデル「BP−68/68W」が本体背面に対し、本体の手前左側面へと移し使い勝手を向上した。

 適用リム径は10〜30インチ(自動入力は10〜24インチ)。適用リム幅は1.5〜20インチ。測定方式は2面同時測定。LED照明は旧モデルより高輝度のものにバージョンアップした。

 赤色のレーザーがホイールへのウェイト貼り付け位置をガイドし、修正精度と作業効率を向上させるレーザーライン機能はそのまま継承した。「BP-3021」にはウェイトを打ち込む修正方法の場合、内側上部の打ち込み位置もレーザーラインを照射するダブルターゲット機能を新たに付加した。電磁ロック機構は旧モデルから受け継いだ。

 テーパーコーンは通常の4種に、特殊形状ホイール対応コーン1種を追加し、合計5種を標準で付属した。コーンを追加購入することなく、一般的な軽自動車・乗用車から4WD・SUVまで、幅広い車種のバランス作業に対応することが可能。

 

 アニメの人気声優が複雑な作業をガイド

 

 新機能の「ボイスナビ」について、青木さんは「ホイールバランサーでは初めて」と解説する。モニター画面を通じ視覚的なガイド機能が搭載されたホイールバランサー製品は多い。注意を喚起する光の点滅・明滅、それと連動させた警報音で聴覚に訴えるものもある。

 しかし「BP-3021」に搭載したのは「ボイス」機能。基本操作から高度な作業スキルが要求される較正作業、知識と経験が求められるビハインド(分割)/マッチング(最適化)作業。これらの手順を声とアニメーションがアシストしてくれる。

 青木さんは「作業の進めかたをモニター画面で確認することは従来機種でも可能だった。ただその場合、作業速度が落ちてしまうことは否めない。とくにLCDモニターが無い一般的な数字とランプだけの表示パネル機の場合、ビハインド/マッチング作業は設定や操作が複雑になるため、取り扱い説明書を読みながらであっても、理解や作業を進めるのは難度が高い」と指摘する。

 ベテランスタッフであってもたまに使う機能だけに、操作手順を覚えている方は少なく、作業経験の浅いスタッフに至っては、作業時間や作業品質の面でさらに差が生まれてしまいがちとなる。

 また「従来機ではエラー表示があった場合に、それがどういう理由によるのかがわかりにくかった。作業ミスでのエラー表示なのか、別に機械自体に不具合が生じたのか。本来のバランス作業を中断してエラー表示の要因を探さねばならなかったが、これもしっかりとボイスで示してくれる。搭載機能の活用率と作業効率を高めること、熟練者・新人と、キャリアを問わずだれもが同じ高い品質の作業を行えることをめざした」とつづける。それを実現するために開発し搭載したのがこの「ナビ機能」だと、青木さんは胸を張る。

 

 「ボイスナビ」は文字通り、音声によるガイド。クルマに搭載された、目的地まで地図画面と声で案内してくれるカーナビをイメージすれば良い。運転中、ドライバーは常に全方向に目を配り神経を集中させなければならない。そのため地図を見る行為は可能な限り少ないほうが望まれる。「どこを目印に曲がる」というガイドは音声に頼るほうが楽で、理解しやすい。「BP-3021」の作業でも本質は同じことだ。

上杉夏穂さんを起用=写真(4)=
上杉夏穂さんを起用=写真(4)=

 「ボイスナビ」の声には上杉夏穂(うえすぎ かほ)さんを起用した=写真(4)=。映画「すずめの戸締まり」やゲーム「けものフレンズ3」などに出演する、人気声優だ。

 昨今、動画コンテンツなどでは生成AIによる人工音声が使われるケースが増えた。合成技術が進化したことで、生成AIの音声も機械的ではなくなった。ただそれでもイントネーションや聞きやすさは肉声がまさる。作業をアシストする、という点で「聞くひとの耳になじむ」ことは非常に重要なポイント。駅のホームアナウンスに声優が起用されているのはそれを示す代表的な例だ。

サンプル音声はQRコードで視聴可
サンプル音声はQRコードで視聴可

 「BP-3021」では、上杉さんによる二つの音声パターンを用意した。〈音声1〉は落ち着いたおとなの女性口調。〈音声2〉はハイテンションの、“おきゃん”な調子。作業シーンに応じて音声モードの変更やオン・オフが可能だ(サンプル音声はQRコードで視聴可)。

 「どのようにしたら作業効率があがるか、楽しく、理解を促し作業ステップを進める方法を追求し『ボイスナビ』機能にたどりついた。声のありかたやガイドのしかたについても、作業をサポートする機能という部分に徹底してこだわった」と青木さん。「これがスタンダードモデルのカテゴリかというくらい、見て触れて感じられる印象はどう解釈しても全方位ミディアムグレード」、このように続ける。

 青木さんの説明を通じ、東洋精器工業の明確なコンセプトと製品力への強い自信がうかがえる。

 「BP-3021」にはバランサ―専用リフト「BL−02B」のオプション装着が可能。リフトを使用することで、作業の軽労化・省力化・ケガの防止や取付・測定精度の向上に大きく貢献する。

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