軽ハイトワゴンにもプレミアムな走りを

TOYO TIREは軽ハイトワゴン専用プレミアムタイヤ「PROXES LuKⅡ(プロクセス エルユーケー・ツー)」と、SUV用ハイウェイテレーンタイヤ「OPEN COUNTRY H/T Ⅱ(オープン カントリー エイチティー ツー)」を3月から順次発売した。前者4サイズ、後者20サイズで展開する。同社は4月17日、栃木市のGKNドライブインジャパンプルービンググラウンドで試走会を開催。本紙は日本自動車ジャーナリスト協会会員のモータージャーナリスト、瀬在仁志さんをドライバーに迎え、インプレッションを行った。(シリーズ2回連載/1回目)
ミニバン専用技術を軽プレミアム領域で

全国軽自動車協会連合会の統計データによる24年1-12月の軽自動車の保有台数は3175万5千台(前年比0.5%増)、新車販売台数は162万7千台(同0.1%増)。普通乗用車などが前年実績を割り込むなか、堅調な推移を示す。とくにスーパーハイトワゴンやトールワゴンと呼ばれる、背の高い軽自動車(=軽ハイトワゴン)は人気のカテゴリーだ。
TOYO TIREの調べでは、スーパーハイトワゴンとトールワゴンの2分野は2013年頃から軽自動車の新車販売構成比で7割を超えた。一時は8割にも迫る大きな勢力へと成長。しかもその勢力内でも構図には変化が現れ、10年前と現在とでは前・後者の関係は逆転し、スーパーハイトワゴンが頭抜けた存在感を発揮している。
「ルーフが高い」「上下方向に余裕がある」「スライドドアを備える」といったスペース効率を追求した車両設計により、性別・世代を問わずだれでも乗り降りがしやすいのが人気の理由。軽自動車ならではの優れた経済性、運転のとりまわしの良さも多くの支持を集める。
そのような軽ハイトワゴン専用プレミアムタイヤとして、TOYO TIREが上市した新商品が「PROXES LuKⅡ」だ。14年3月から発売の先代モデル「TRANPATH(トランパス) LuK」の基本性能を継承し一層進化させたもの。

ミニバン専用タイヤ「TRANPATH」シリーズの開発で培った技術を軽ハイトワゴン専用タイヤにチューンアップし採用。カーブでのふらつきを抑え、しっかり感と高い操縦安定性を実現。商品名で示されたアイコン「Lu」、すなわちLuxury(ラグジュアリー)にふさわしい静粛性の実現をめざした。
実に11年ぶりに大型モデルチェンジを果たした「LuKⅡ」。それに際し、ブランドを「TRANPATH」から「PROXES」へと変更した。
「PROXES」は91年に誕生したグローバル・フラッグシップブランド。欧州の高性能スポーツ車に採用されているほか、近年はSUV向けに商品ラインアップを強化。またニュルブルクリンク耐久シリーズに参戦し、24年SP10クラスではシリーズチャンピオンを獲得。ネームバリューを向上させている。
「LuKⅡ」を今回、「PROXES」ブランドに変更したことについて、商品企画本部消費財商品企画部の永井邦彦部長は「増加が続く軽ハイトワゴン市場のなかで、よりプレミアムなものを求められるお客さまが増えている。一方、『TRANPATH』はミニバン専用タイヤとして30年近く取り組み市場で高いご評価をいただいてきた。ただ時代の変化を含め、『TRANPATH』がファミリーブランド化する傾向にある。市場のプレミアム志向に対応を図るため、グローバル・フラッグシップの『PROXES』でご提供したいと考えた」と、その意図を説明する。
乗り心地、グリップ、ウェット性能が進化

「PROXES LuKⅡ」は左右非対称パターンを採用した。イン側には3Dマルチサイプなどを採用し、静粛性を重視。アウト側は見た目にもシャープな印象を与えるフレキシブルテーパーを配し操縦安定性を重視。トレッドの左右それぞれで担う役割を振り分けたパターン設計とした。
コンパウンドはナノバランステクノロジーにより、転がり抵抗を低減しながらトレードオフ関係にあるウェットグリップを高次元で両立。耐摩耗性能を向上させ、摩耗後の性能維持を図った。またコンパウンドに配合したシリカ分散剤の一部には、サステナブルな自然由来の炭素を含む素材を使用することで、環境性能を高めた。

今回の試走は、前モデル「TRANPATH LuK」と新商品「PROXES LuKⅡ」の155/65R14サイズをダイハツ・タントに装着。プルービンググラウンドのウェットハンドリング路を走行し、操縦安定性を比較評価した。
ベンチマークとなる「TRANPATH LuK」について、瀬在さんは「もともとハイト系の軽ワゴンをターゲットに開発されていることから、ふらつきは抑えられ、ウェットでもよくグリップしている。ただそれでも、ハンドルを切り回ししたときにリアが逃げる感じがある」と指摘する。「ヘアピンでアンダーステアがでやすいようだ」とも付け加えた。
対して「PROXES LuKⅡ」は、前モデルで加減速時に感じられた前後のピッチングが大幅に解消された。旋回時のローリングが抑えられ、車両の姿勢の回復も早い。乗り心地が数段良くなった。走りの質感が向上したとも表現できよう。
瀬在さんは「排水性が向上し、路面にタイヤ踏面が密着することでグリップが上がった。前モデルでみられたリアのアンダーな挙動が改善され、操縦安定性が向上したことが手応えとして感じられる」と評価する。
ウェットハンドリング路走行は「PROXES LuKⅡ」のほうが確実に速く、運動フィールが良い。参考として同社が公表する性能指数によると、ウェット制動距離は従来品比12%短縮、ウェット旋回ラップタイムは3%短縮している。
11年ぶりの大型モデルチェンジ。技術の深化により軽スーパーハイトワゴンでも快適でスムーズな走りを可能にした。
=瀬在仁志(せざい ひとし)さんのプロフィール=

モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員で、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員のメンバー。レースドライバーを目指し学生時代からモータースポーツ活動に打ち込む。スーパー耐久ではランサーエボリューションⅧで優勝経験を持つ。国内レースシーンだけでなく、海外での活動も豊富。海外メーカー車のテストドライブ経験は数知れない。レース実戦に裏打ちされたドライビングテクニックと深い知見によるインプレッションに定評がある。