最激戦区に登場。“らしさ”を訴求
今回はPEUGEOT(プジョー)308。車名・モデル名のナンバリングを変えないのでわかりにくいのだが、プジョー308のフルモデルチェンジは先代モデルがデビューした2013年以来。日本市場ではステランティスジャパンが22年から発売する。1.2リットルのガソリンエンジン車と1.5リットルのクリーンディーゼルエンジン車、2種類の内燃機関車に加え、1.6リットルのプラグインハイブリッド車(PHEV)をラインアップ。このなかから最上位モデルの308GT HYBRID(ハイブリッド)に試乗した。
プジョー308は全長4420ミリ×全幅1850ミリ×全高1475ミリ、Cセグメントのコンパクトカー。セグメントという、主に欧州でのクルマの分類方法について、以下に簡単に記す。
Aセグメントは約3.7メートルまでの超小型車。輸入車ではスマートやフィアット500など。日本の独自規格である軽自動車もここに当てはまる。Bセグメントは約4.2メートルまでのスモールコンパクトで、輸入車のフォルクスワーゲン(VW)ポロやシトロエンC3、アウディA1、国産のヤリス、ノート、フィットなど。
Cセグメントは約4.5メートルまで。VWゴルフ、メルセデスベンツAシリーズ、BMW1シリーズや、カローラをはじめとする国産メーカー各社のコンパクトカーがこれに該当する。そうそうたる顔ぶれが示すように、日本ではマーケットが安定的に成長しており、車種・モデルの数が圧倒的に多い。このCセグメント以降も全長のサイズによりD・E・Fの各セグメントに分類される。
瀬在さんは「日本の道路事情やクルマの使われ方を考えると、最もニーズのあるセグメント。国産メーカーがそれぞれ自社を代表するモデルを投入し人気を集める一方で、海外からも主にドイツ車がラインアップをそろえ市場の一角に食い込んでいます。そんな激戦区に、フランスから打って出た格好ですね」と述べる。
プジョー308GT HYBRIDには、1.6リットル直4ターボ180ps/250Nm+電動モーター110ps/320Nmエンジンを搭載(システムの総合出力は225ps/360Nmとなる=フランス本社での公表値)。
CセグメントのHVで真っ先に思い浮かべるのはトヨタ・プリウスではないだろうか。23年にフルモデルチェンジしたが、その新型プリウスにもPHEVの設定がある。2.0リットルPHEV Zグレード(2WD)がそうだ。その燃費消費率はWLTC市街地モードで23.7km/L、EV走行換算距離(等価EVレンジ、国交省審査値)は87km。
対して、プジョー308GT HYBRIDはWLTC市街地モードで11.9km/L、EV走行換算距離は71km。この差は前者がストロングハイブリッド車、後者がマイルドハイブリッド車という、そもそもの考え方が数値に表れた。
プジョー308GT HYBRIDは、先代モデルで高い評価を獲得したドライビングプレジャーを継承しながら、PHEVとしての利便性と燃費性能を確保。最新世代のADAS(先進運転システム)とプジョー初採用のインフォテイメントシステム(情報とエンターテイメントを提供する仕組みの総称)を搭載することで、高い安全性を備え快適なスポーツドライビングを実現した。
都心から富士スピードウェイへと向かう東名高速道路が今回の試乗ルート。「ロングクルージングすると、その足さばきが同じ輸入車であってもドイツ車とフランス車とで大きく異なることが実感できますね。日本車とも大きく違います」と、ハンドルを握る瀬在さんが指摘する。プジョーの持ち味は、過去から言われる〈猫足〉。フラットでしなやか。伸びのある加速。そんな走りが特徴だ。
「ロードホールディングを感じさせるという意味ではドイツ車のほうが安定感は高いと言えると思います。しかし、たとえば路面が粗く、そこからの小さな衝撃が連続するようなドライブシーンで、フランス車はそれを吸収しながら、なめらかに走る。そのようなフランス車らしいフィーリングが、このプジョー308GT HYBRIDでもよく表れています」、操縦する楽しさをそう表現する。
今回のプジョー308GT HYBRIDに新車装着されたタイヤはミシュラン「PRIMACY4(プライマシー・フォー)」。サイズはフロント・リアともに225/40R18 92Y(XL)。転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を両立した低燃費タイヤで、静粛性と快適性を追求したプレミアムコンフォートタイヤだ。
瀬在さんは「低速から中速にかけての速度域でパターンノイズをやや感じましたが、高速走行では解消されており気になるレベルではありません。欧州のタイヤらしく剛性感があります。ハンドリングの応答性がよく、操縦安定性も高い」と評価する。
プジョー308GT HYBRIDには(1)電力で走行するエレクトリックモード、(2)モーターとエンジンで燃費効率をコントロールするハイブリッドモード、(3)エンジン主体で駆動するスポーツモード—-この三つのドライブモードが設定されている。
「燃費性能を優先する走行から走りを楽しむスポーツモードへと切り替えても、その性能をフルに引き出しています」と瀬在さん。プジョー308GT HYBRIDの個性を、装着タイヤが足元からあますことなく伝えている。
=瀬在仁志(せざい ひとし)さんのプロフィール=
モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員で、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員のメンバー。レースドライバーを目指し学生時代からモータースポーツ活動に打ち込む。スーパー耐久ではランサーエボリューションⅧで優勝経験を持つ。国内レースシーンだけでなく、海外での活動も豊富。海外メーカー車のテストドライブ経験は数知れない。レース実戦に裏打ちされたドライビングテクニックと深い知見によるインプレッションに定評がある。