金属3Dプリンターが生み出す価値「ミシュランAMアトリエ」稼働開始

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カテゴリー: レポート, 現地
自由な議論を行えるサロン
自由な議論を行えるサロン

 日本ミシュランタイヤは4月15日、群馬県太田市の研究開発拠点内に開所した「ミシュランAMアトリエ」の内部を報道陣に公開した。

 「積層造形」(アディティブ・マニュファクチャリング)は樹脂や粉体などの薄い層を積み重ねて立体物を製作する技術。「3Dプリント」とも呼ばれ、複雑な形状が自由に成形可能となり、従来の切削技術と比べると無駄がなく最適なデザイン設計ができる。また、使用材料を適正化できることから完成部品そのものの軽量化にもつながる。ただ、金属材料を用いた積層造形は国内では技術者が少なく、人材育成も含めて実用化へのハードルがあったという。

3D金属プリンター
3D金属プリンター

 こうした中、同社と群馬県にある製造業を中心とした有志企業は昨年7月に、次世代イノベーションを担う「群馬積層造形プラットフォーム」(GAM)を立ち上げ、積層造形技術の教育プログラムを実施するなど技術者の育成を進めてきた。

 今回の「AMアトリエ」の開所により、GAM参加企業は金属積層造形の試作を行うことが可能になる。今後、新技術の検討会やメンバーサロンの開催、培った知見を共有するなど、新たな活動も積極化していく。また、日本ミシュランタイヤはこの施設を活用して行政との連携や大学に対する教育プログラムの提供といった金属積層造形に関する普及活動も行っていく計画だ。

 元々、太田サイト内にあった建屋の内部を改装した新施設にはミシュランの合弁会社、アダップ社製の金属3Dプリンターを2台設置。さらに粉塵による健康リスクを徹底的に排除した設計を施している。アトリエは3つのブロックに分かれており、実際に成形を行うスペースと後処理のための機器が置かれた部屋、さらに利用者が議論を行うための共有スペースも設けた。

金属プリンターで製作した造形物
金属プリンターで製作した造形物

 須藤元社長は「皆で知恵を出し合って、失敗や成功例、ノウハウを共有できる。色々な業種の専門家が集まることにより、今までにない価値が生まれ、世界初のイノベーションが誕生する可能性は多大にある」と期待を込めた。

 ミシュラングループは2030年までの事業戦略の中でタイヤ以外の事業にも注力していく方針を掲げている。「AMアトリエ」からいかに新たな価値を生み出し、外部と連携していけるかが今後の成長を左右する重要な鍵となりそうだ。

関連:ミシュラン、金属3Dプリンターで技術革新へ 太田サイトに新拠点


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