前号で報じたとおり、日本ミシュランタイヤ(以下、NMT)は群馬県太田市への本社移転1周年を迎え、記者発表会を行った。この日の会見では、移転1年を機に実施した「新たな働き方に関する社内アンケート結果」を公表し、あわせて新社屋PARK棟のメディアツアーを行った。
コロナ禍を経てリモートワークと出社のハイブリッド勤務が働きかたのスタイルのひとつとして定着しているが、NMTではそれをさらに一歩進め「自立した自由な働きかた」に取り組んでいる。アンケート結果によると、この取り組みに対する社員満足度は高い。
都心から太田市へ通勤する社員へのサポートは手厚く行っている。シャトルバスの運行をはじめ、特急電車など移動中の仕事を勤務時間とする、出社日数はマネージャーと社員が話し合い決める、近隣のホテルと法人契約など、社員個人の状況に応じてフレキシブルに選択可能とした。勤務形態が部署・個人に任される働き方には92%が「非常に満足・満足」と回答している。
人事部デベロップメントパートナーの武内良憲氏は、「自立した自由な働き方をモットーにプロジェクトを立ち上げ、社員の意見を吸い上げた」と、NMTの新しい働き方を語る。2拠点から1拠点となったことで部署間の交流が増え、異動の選択肢が増えるなどキャリア形成も広がったという。
一方、新社屋PARK棟について、「風通しのいい意見交換が可能な空間を実現するために建設した」と須藤元社長は語る。
社員の思いを取り入れたコンセプトは〈繋がる〉〈出会う〉〈閃く〉。壁や扉で閉じられた空間を極力減らし、2階建で延べ床面積約600平メートルのPARK棟は人が移動しやすい設計となっている。
〈みんなが楽しく集まれる空間〉、なおかつ〈社員が名前を聞いただけでどういう場所かイメージできる〉〈じゃPARK棟でやろうか、という会話が飛び交うような端的で象徴的な名前〉が「PARK」の由来だ。
オフィス棟との差別化で、建築コンテナを利用したユニークなデザインを採用した。吹き抜けが広く開放的な空間で、例えば1階で行うイベントに2階からも参加できる。建築には屋根にも遮熱処理を施すなど環境に配慮した。壁などにはミシュランカラーの青や黄色ではなくシルバーを使った。
「ミシュランブランドのアイデンティティは既に社員が十分に持っているから、あえて採用しない」と、執行役員でI AM MICHELIN タスクフォース代表の田代英之氏は社員の高い意識に強い自信を示す。
天井の照明や螺旋階段にはタイヤをイメージした丸型を採用するなど、遊び心をみせる一面も。窓が大きく開放的な一方で、あえて壁に向かって椅子を設置し日光を遮断した空間とするリラックススペースを作った。入口近くには和室があり、茶道を楽しむことができる。
今後はPARK棟やABW(Activity Based Working:仕事内容に応じて働く場所を社員自身が決める働きかた)を活用し集合知を高める。
オフィス棟のフリーアドレス化を進め人の交流をさらに促進する考えだ。武内氏は「これからも進化して続けていく」と意気込みを語った。