(前後編の2回/前編)
——日本グッドイヤーの代表取締役社長に就任するまでの略歴は。

グッドイヤーでのキャリアは15年になります。最初の勤務地は米国のアクロンにあるグローバル本社で、アメリカ、ヨーロッパ、中東・アフリカ、そして中国を含むアジア太平洋地域でさまざまな管理職を務めました。
その後4年間は、ヨーロッパの大手エレベーター・エスカレーター会社でグローバル・セールス・リーダーを務めました。その後の2024年、グッドイヤーに戻り、日本グッドイヤーを率いる立場になりました。
——現職就任までの間、グッドイヤーグループのなかで日本市場についてどのような印象を持っていたのか、現職着任後にギャップがあったのかどうか、分析と講評を。
日本市場は多くの可能性を秘めているという印象を持っています。
まず、日本は世界で三番目の自動車生産国です。グローバル市場で製品を供給するいくつもの自動車メーカーが本拠を構えています。タイヤ市場も同様で、グローバル市場で認知されているタイヤメーカーの本社があり、世界的に高い評価が得られています。日本では伝統と信用が重んじられ、品質と技術革新が強く求められる市場であると認識します。日本グッドイヤーはその一員として、この日本市場で長く、根強くタイヤビジネスに取り組んできています。
この先も顧客の皆さまと親密な関係性を継続することを楽しみにしています。業界で信頼があり、最先端のタイヤ技術を適用した商品を販売展開することで、グッドイヤーを日本の市場にさらに広めて参りたいと思っています。
直近のデータをみますと、日本国内では景気の停滞により消費者の心理に変化が現れています。贅沢品の買い控えが進みつつあるのはその代表的な例だと思います。しかしタイヤ販売量に関していえば、堅調な推移を示しています。これから先も安定的に推移していくものとみています。
日本のクルマ市場はその他の市場と比べ電気自動車(EV)へのシフトチェンジのスピードが遅いと指摘されています。これは市場が急激な変化を望まず、慎重に取り組みを進めていくことを選んでいるからでしょう。そのためハイブリッド車(HV)は市場で成長を続けています。
EVやHVは内燃機関車と比較すると車両重量が重いこと、発進時や加速時のトルクが高いこと、車両自体が静粛性に優れていること。これらの要素はタイヤにとって強い負荷となります。さらに燃費性能や耐久性などの経済性が高いレベルで求められます。EVやHVは装着タイヤに対する要求性能が非常に厳格になります。

グッドイヤーにはEVやHVに求められる性能をすべて備えた「EAGLE F1 ASYMMETRIC 6(イーグル・エフワン・アシメトリック・シックス)」=写真中=を用意しています。HVやこれから伸びるEVの分野でも成長する余地は十分にあると考えています。
グローバルブランド力の強みを活かす
——日本グッドイヤーが持つ強みとは。
グッドイヤーがグローバル企業であるということが挙げられます。1898年に米国オハイオ州アクロンで誕生したグッドイヤーはことし、創業127年を迎え、アメリカのシンクタンク「エシスフィア」による「世界でもっとも倫理的な企業」の一社にも選ばれています。この127年という経験と、その間に培い育ててきたブランド力はかけがえのないものです。
グッドイヤーの日本法人である日本グッドイヤーも1952年に設立され、日本市場で長くビジネスを行ってきています。グッドイヤーがグローバルで培ってきたブランド力をこの日本市場で活用できるのが大きな強みです。

さらに、グッドイヤーはオールシーズンタイヤの先駆者であり、最新の「VECTOR 4Seasons GEN-3(ベクター・フォーシーズンズ・ジェンスリー)」=写真下=は欧州で高い評価を得ています。低燃費タイヤでも「EfficientGrip(エフィシェントグリップ)」シリーズなど、高い技術力を持っています。そのようなブランドイメージを活かしながら、日本市場で成長を続けていきたい。
また、日本市場は流通網がしっかりと整備されています。日本中のどこにいても「グッドイヤー製品を買いたい」というお客さまに、全国のグッドイヤー代理店やサービスセンターが対応しています。これも強みの一つと考えています。
——その一方で、短期・中長期視点で改善すべきだと考える点は。
今、私たちは業界を取り巻くマクロ環境の変化とともに、業界内でも競争環境の変化に直面しています。このような変化に対応し、グッドイヤーを長期的な成功に導くための継続的な取り組みの一環として、ラグジュアリー、SUV、EVの分野でグッドイヤーがタイヤとサービスにおいてナンバーワンになるために必要なあらゆる手段を講じています。
(後編につづく)