タイヤ新商品試乗レポート=住友ゴム「グラントレック R/T01」  オフロードは安全に、オンロードは快適に  グローバルを見据えた展開へ

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カテゴリー: レポート, 試乗
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GRANDTREK R/T01

 住友ゴム工業は8月1日、「GRANDTREK R/T01(グラントレック アールティーゼロワン)」を上市した。これに併せて7月31日に愛知県のさなげアドベンチャーフィールドでメディアや販売店向けに試走会を実施。オフロードではしっかりとしたグリップ力をもとに悪路走破性や信頼性を実現。オンロードも「力をいれて開発」と言うように、ごつごつとしたタイヤ外観からは予想外の快適性や静粛性を発揮する。

 

 オフだけでなくオンも高性能に

 

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GRANDTREK R/T01

 「住友ゴムはこれまで四駆用のタイヤで他社におくれをとってきたという自覚がある。今回のR/T01で、当社のオフロードタイヤがこれからの市場でプレゼンスを高めていくための橋頭保にしたい」

 試走会の冒頭で発せられた決意表明。今回の「GRANDTREK R/T01」には、四駆用タイヤのプレゼンス拡大に向けた〈一番槍〉としての役割が期待される。

 R/T01はGRANDTREKシリーズのなかのラギッドテレーンタイヤとなる。オフロード性能はもちろんのこと、オンロードで一定水準のドライ性能・ウェットグリップ性能を発揮する。

 パターンデザインやコンパウンドもオフロード・オンロード双方で性能を発揮するように工夫した。パターンデザインでは全体として、「2in1 Aggressive Rugged Design」を採用。これは「オールテレーンとマッドテレーンの融合」と表現され、オフロード性能とオンロード性能の両立に貢献する。

 さらにパターン技術の細部をみると、オフロードではブロックを横から支える構造が操縦安定性に寄与するとともに、各所に泥や岩をしっかりとつかむ構造を取り入れ、高いグリップ性能やマッドトラクション性能を実現。オンロードではブロック上部の水をサイプから排出するようにデザインしウェット性能も確保した。さらにカオスピッチ配列を採用して、パターンノイズを抑制する。

 コンパウンドでは主要素材に採用した微粒子カーボンでゴムの強度を向上し、安全性に直結する耐カット性能や耐摩耗性能・操縦安定性の向上を実現。さらに3種類のポリマーをブレンドし耐摩耗性能を上げるとともに、一般的に相反する関係にあるドライ性能とウェットグリップ性能をバランスよく向上させた。

 タイヤのデザインにも工夫をこらした。アウト、インとで異なるサイドウォールデザインを採用。ユーザーの好みに応じてタイヤの表情を変えることができる仕様とした。

 

 悪路をゆうゆうと、急坂も確実にグリップ

 

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GRANDTREK R/T01

 オフロード・オンロード双方のニーズに応える。そんな意欲を持つ「R/T01」は、どんな走りを見せるのだろうか。

 試走会では外周を走るオンロードコースと、アドベンチャーフィールド内の全長750m・高低差32mの初心者向けワンダフルコース、全長1150m・高低差32mの大自然を走破する林間コースを走行。いずれも車両はトヨタ・ランドクルーザーとスズキ・ジムニーで行った。

 オンロードとオフロード双方の性能を備えるラギッドテレーンタイヤ。それだけに、オフロードでの悪路走破性や安全性だけでなく、オンロードでの快適性も問われる。

 オンロードを走行して出てきたのは「タイヤの音が思った以上に静かだね」という声だ。車内で会話しながらでも気になる音ではない。本来、オフロードタイヤはブロック剛性がかたく、ノイズが大きいはず。その常識をくつがえして街乗りもできるよう静粛性を確保するのが「カオスピッチ配列」だ。走行中のパターンノイズを抑制。さらにノイズ音についても「人の可聴域を考慮し、耳障りにならないよう工夫している」という。

 オフロードコースでは、悪路走破性の高さが垣間見られた。コース内には泥濘地や傾斜角20度におよぶ坂、凸凹とした道など難所が多くある。そうした道を走るオフロードタイヤに要求されるのが「悪路走破性」であり、頑丈でタイヤが壊れない「信頼性」であり、しっかりと止まりたいときに止まれて、急な登坂路でも発進できるような「グリップ力」だ。

 たとえば急傾斜の坂の途中で止まり発進しなければならないというタイミング。タイヤが空転すると、ドライバーは先に進むことをためらいかねない。しかし、R/T01はそのような急な登坂でも、アクセルを軽く踏めばしっかりと発進。逆に急な下り坂も持ち前のグリップ力を発揮、しっかりと停止してみせた。

 テストドライバーは「低速でも高速でもしっかりとコントロールすることができ、かつグリップが効くR/T01はこうした要素を兼ね備え、ドライバーが安心してオフロードを運転することができる」と話す。

 どんな悪路でもドライバーがアクセルを軽く踏むだけでクルマがしっかりと進む様子を見ると、その言葉には説得力がある。悪路であまりにもスムーズに進むので、ある参加者からは「オフロードを走っているように感じられない」とのコメントが寄せられたようだ。

 

 高い商品性能とブランド力で世界に

 

 今後、注目されるのがどのようなマーケティング戦略を打っていくか。冒頭の言葉にもある通り、「四駆でおくれを取っている」という認識。先行するメーカーに「追いつき、追い越す」戦略が必要となってくる。

 今回の試走会はその戦略の初手と言える。試走会にはメディアのほかに、販売店も参加。住友ゴム側のスタッフは参加者に「ぜひネガティブなコメントも寄せてほしい」と呼びかける。さらなる改良や改善に向けた意識のあらわれだ。

 マーケティング戦略も気になるところ。第四技術部の北原遼太郎氏にその戦略について聞くと、「まだ全貌は明かせない」としたものの、ことし米グッドイヤーから欧米・オセアニアでのDUNLOP商標権を取得したことから「世界的な展開を見据えている」と説明する。「R/T01」と「世界のダンロップ」を手にしたことで、武器はそろったのではないだろうか。

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