Talk About Driving  モータージャーナリスト瀬在さんと、国産クーペ&セダンに乗りながら(3)  トヨタGRスープラRZ

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カテゴリー: レポート, 試乗

 スポーツ性能をフルに発揮するために

 

GRスープラRZ
GRスープラRZ

 4月、トヨタ自動車はFRスポーツカー、スープラの生産を26年春限りで終了することを明らかにした。19年発表の現行A90型は国内では3代目、グローバルでは5代目にあたる。この3月に、総排気量3リットルの直列6気筒直噴ターボ付きB58型エンジン搭載に仕様を変更したGRスープラRZを登場させたばかりでの発表だ。

 スープラは以前から生産終了の噂が飛び回っていたこともあり、「そうなる前にぜひ、乗っておきましょう」と、瀬在さんと意見が一致。心残りにならずに済んだ、自賛の一台である。

 

装着タイヤのミシュラン「PILOT SUPER SPORT」
装着タイヤのミシュラン「PILOT SUPER SPORT」

 「スープラといえば」と、そのあとにはひとによってそれぞれに、さまざまな思い出が語られるのではないだろうか。

 「セリカXX(ダブルエックス)」「TOYOTA3000GT」「リトラクタブルライト」「全日本ツーリングカー選手権・グループA」「2・5GTツインターボ」……。昭和世代であればそんな懐かしいキーワードがちりばめられ、話に花が咲くに違いない。前々回の日産GT−Rと同様、だれもがあふれるくらいに〈思い入れ〉をもつ、名車の1台に数えられよう。

 

 GRスープラRZは、最高出力285kW(387PS)/5800rpm。最大トルク500N・m/1800−5000rpm。全長4380ミリ×全幅1865ミリ×全高1295ミリで、ホイールベースは2470ミリ。瀬在さんによると「プラットフォームをショートホイールベースとし、可能な限りトレッドを広くすることで、よりスポーツ性能を高めた」という。

装着タイヤのミシュラン「PILOT SUPER SPORT」
装着タイヤのミシュラン「PILOT SUPER SPORT」

 車両重量1530キロ、乗車定員2名の後輪駆動車。フロントに積まれたB58型エンジンはBMW社との共同開発によるもので、BMW Z4のパーツを共用しているそうだ。WLTCモード走行燃料消費率は12.1km/ℓ。ピュアスポーツカーとしては燃費効率は良いほう。

 「ニュルブルクリンクをはじめ、欧州の厳しい条件のなかで走り込んで培われてきた技術に、スープラ本来のもつ、スタイリッシュでしなやかな走りがよく調和されているのではないでしょうか」と、瀬在さんはその第一印象を語る。

 

 新車装着タイヤはミシュランの「MICHELIN PILOT SUPER SPORT(パイロット スーパー スポーツ)」。サイズはフロント255/35ZR19(96Y)XL、リア275/35ZR19(100Y)XL。前輪に比べ、後輪のトレッド幅がやや広い設定だ。

装着タイヤのミシュラン「PILOT SUPER SPORT」
装着タイヤのミシュラン「PILOT SUPER SPORT」

 「PILOT SUPER SPORT」は世界の名だたるスポーツカーメーカーと共同開発で誕生した、ミシュランのスポーツタイヤの代名詞。ル・マン24時間耐久レース21連覇を果たした最先端のタイヤ技術を惜しみなく搭載する。

 たとえば、アウト側・イン側の左右で異なるトレッドコンパウンドを搭載した。この「デュアルコンパウンド2・0」は、アウトサイドにル・マンで培われた強化コンパウンドを採用。インサイドにはウェットグリップに優れた最新のエラストマー技術を採用した。2種類のコンパウンドによりドライでもウェットでも最適なグリップ性能を発揮するとしている。

 カーカス素材の一部には高強度で耐熱安定性に優れるアラミドを採用。この「ハイブリッド・アラミド/ナイロンベルト」は高速走行時の遠心力で生じるせり上がりを抑え操縦安定性を向上した。

 フロントタイヤに9J、リアタイヤに10Jの鍛造アルミホイールを装着。レーシーなデザインでGRスープラRZの足元を引き立たせるとともに、軽量化を果たすことでハンドリング性能やブレーキング性能を高めた。

 

 瀬在さんは「スタビライザーやサスペンションとのマッチングとも関わってきますが、このように足回りをかためてあると、高速でコーナーリングしたときのロールを抑え接地感が高まります。タイヤが横方向にしっかりと踏んばってコーナリンググリップを発揮することで、ドライバーはより安心して操舵することができます」と話す。

 それを踏まえたうえで、「タイヤは回転することで常に変形します。タイヤの接地面が路面の凹凸に応じて密着することで高いグリップを得られますが、その接地した瞬間の形状をサイド部から見ると、荷重でひしゃげるというのか、押しつぶされた形となっています。それとは真反対の方向では、タイヤ内部の骨格材がひしゃげた形を復元しようと引っ張る力が働いていると考えます。真円度が高いタイヤは、ベルトやプライの構造に各社が技術ノウハウを詰め込むことで実現しているのでしょう」とつづける。

 

 日産GT−RやGRスープラRZといったドライバーズカーには、そのスポーツ性能をフルに発揮させる高性能タイヤが装着されている。いずれもスタビリティーが高いのが最大の特徴だ。高速走行時の直進安定性とコーナリンググリップに優れ、ハンドリングの応答性が良い。

 そのようなタイヤはコンディションを常に良好に保つことがなによりも重要。空気圧が適正値を維持しているのか。残溝の状況。キズや偏摩耗がないか。ホイールアライメントを定期的にとり、必要に応じて調整を行う。なんのためのスポーツ性能なのか。その意味を忘れてはなるまい。

 

 =瀬在仁志(せざい ひとし)さんのプロフィール=

瀬在さん
瀬在さん

 モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員で、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員のメンバー。レースドライバーを目指し学生時代からモータースポーツ活動に打ち込む。スーパー耐久ではランサーエボリューションⅧで優勝経験を持つ。国内レースシーンだけでなく、海外での活動も豊富。海外メーカー車のテストドライブ経験は数知れない。レース実戦に裏打ちされたドライビングテクニックと深い知見によるインプレッションに定評がある。

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