オフテイストの外観も街乗り性能向上

TOYO TIREは軽ハイトワゴン専用タイヤ「PROXES LuKⅡ(プロクセス エルユーケー・ツー)」と、SUV用ハイウェイテレーンタイヤ「OPEN COUNTRY H/T Ⅱ(オープン カントリー エイチティー ツー)」を3月から順次発売した。前回に引き続き4月17日、栃木市のGKNドライブインジャパンプルービンググラウンドで開催された新商品試走会から、今回は後者にフォーカスする。日本自動車ジャーナリスト協会会員のモータージャーナリスト、瀬在仁志さんをドライバーに迎え、インプレッションを行った。(シリーズ2回連載/2回目)
長い歴史を刻むOPEN COUNTRY
「OPEN COUNTRY」シリーズは、おもにSUVやピックアップトラックをターゲットに展開する同社の戦略商品。本紙4月30日付・第2884号掲載の宇田潤一執行役員事業統括部門商品企画本部長インタビュー特集によると、「OPEN COUNTRY」は1983年、北米市場でデビュー。高いデザイン性からカスタムユーザーの人気を博した。
ダカールラリーをはじめ、オフロードレース「SCORE BAJA 1000」など、世界屈指の過酷なオフロードレースに積極的に参戦。好成績を収めることでその名が広く浸透。同社のタイヤのなかで長い歴史を刻むブランドへと成長を遂げている。
市場で礎となったのが、厳しいオフロードを走破するマッドテレーンの「OPEN COUNTRY M/T」と、さまざまな地形や気象条件に対応するオールテレーンの「OPEN COUNTRY A/T」。

そこに同社は14年、「OPEN COUNTRY R/T」(以下、「R/T」)を市場投入し、ラギットテレーンタイヤという新しいジャンルを切り拓いた。オフロード性能とオンロード性能を両立する「R/T」はユーザーから高い支持を得るに至った。
一方で、クルマ市場はSUVが伸長をつづける。なかでも人気を集めるのがスタイリッシュなデザインのミドルサイズSUVや、ファミリーユースのミニバンからパーソナルユースへの乗り換え需要が急増するコンパクトSUV。いずれもアウトドアでのアクティビティを楽しむためにアドベンチャーフィールドを運転するより、日常のタウンユースが主目的となる。
このように多様化するクルマ市場に対応をはかり、TOYO TIREが上市したのが「OPEN COUNTRY H/T Ⅱ」(以下、「H/T Ⅱ」)である。
普段使いのタイヤ、ハイウェイテレーン

新商品のアイコンにある「H/T」とはハイウェイテレーンを意味する。舗装路面の走行をメインとし、高速走行時の直進安定性やノイズ性能、経済性を重視する。ただ、それでいてもオンロード走行に特化するのではなく、オフロード走行にも対応するタイヤだ。
「H/T Ⅱ」の開発では、先進のタイヤ技術を活用。ナノバランステクノロジーによるフルシリカコンパウンドの採用で転がり抵抗を低減した。
また、T-MODE(ティー・モード)のパターンシミュレーションと構造シミュレーションを駆使。静粛性能を向上しながら操縦安定性を両立した。耐摩耗性能、ウェット性能を高めている。ディンプル付きワイドグルーブにより、タイヤが摩耗するにつれ溝幅が新品時よりも拡大するパターン設計を採用。摩耗後でも排水性が維持されるという。
「H/T Ⅱ」はさらに、ファッショナブルな外観デザインを採用したのも大きな特長。全20サイズをラインアップするが、SUV向けサイズはショルダー形状をスクエアに、コンパクトSUVと軽自動車向けサイズはラウンドショルダーとした。
また、サイドデザインでは、SUV向けサイズはホワイトレターとブラックレター、コンパクトSUVはホワイトレター、軽自動車にはホワイトリボンを採用。〈ファッショナブルなデザイン〉と〈街乗り用としての静粛性〉を兼ね備えたタイヤとして訴求していく考えだ。
ファッション性と静粛性を兼ね備え
試走はプルービンググラウンドの外周路を使用。バンクが設定されているので、高速走行時の直進安定性を評価するのに適している。コースの一部分には粗い路面が設けられているので、ここでは振動とノイズの評価が可能。直線ではレーンチェンジを行うことで、小舵角時のハンドリングレスポンスや操縦安定性を確認することができる。
テストに使用した車両はデリカミニ。4WDの純正サイズが165/60R15。「R/T」と「H/T Ⅱ」、それぞれを装着した車両で走行した。
ラギットテレーンタイヤはハイウェイでの高速走行に向くのかということに興味が惹かれたが、「R/T」は発進時のトラクションのかかりが良い。それ以上に「H/T Ⅱ」はタイヤのひと転がりめ、動き出しがスムーズだ。
デリカミニはエンジンパワーをあげるとうなる音がかなり大きい。ボディ剛性など車両特性からなのだろう、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)が伝わりやすい。そこで瀬在さんは時速100キロに到達するとギアを切り、惰性でクルマを走らせる。
「R/T」のほうがパターンノイズを感じられるのはブロックパターンに由来するからで、これは織り込み済み。それを踏まえたうえで、「H/T Ⅱ」はオフロード性能を備えるパターン設計でありながらもいわゆる〈ゴー音〉や〈シャー音〉が抑えられている。
瀬在さんは「低速でゴロゴロとした振動がやや感じられたが、中速から高速域では気にならないレベル」と評価する。レーンチェンジ時の小舵角でのハンドリングも「H/T Ⅱ」は応答遅れがなく、それでいて乗り心地はマイルド。
オンロード性能がそうであるなら、アドベンチャーフィールドではどのような走りをみせるのか。気になるところだ。

=瀬在仁志(せざい ひとし)さんのプロフィール=
モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員で、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員のメンバー。レースドライバーを目指し学生時代からモータースポーツ活動に打ち込む。スーパー耐久ではランサーエボリューションⅧで優勝経験を持つ。国内レースシーンだけでなく、海外での活動も豊富。海外メーカー車のテストドライブ経験は数知れない。レース実戦に裏打ちされたドライビングテクニックと深い知見によるインプレッションに定評がある。