(前編からのつづき)
なぜバッテリー診断機か
ブラックボックスにメス

日本企業と海外をつなぐ商社という特性上、海外の最新製品にもアンテナを張る。そのなかで、なぜバッテリー診断機に着目したのか。
モビリティ第二事業部の光部亮人・東京1部長は「日本のEV普及率は2~3%。これを高めていくために、解決しなければならない課題がいくつもある」と指摘。「バッテリーの劣化度合いがブラックボックスと化していたのも難点のひとつだ」と説明する。
実はバッテリーの劣化度合いが不明確であることは、EV中古車市場の形成に影を落としている。EVはその価値の3割ほどをバッテリーが占めていると言われる。そのバッテリーがどれくらいの劣化度合いかわからなければ、適正価格は下げざるを得ない。結果、ICE車に比べると年数や走行距離が同じでも、2割ほど安値で販売されることが多いのが実態。
光部氏は「こうした安いEVが海外に流出している」と指摘。「EVバッテリーには多くのレアメタルが使用されており、日本全体にとっての損失にもなっている」と強調する。
EVのバッテリーの劣化度合いの測定方法には国際基準がない。最も確実なのはバッテリーを取り出して、電圧をチェックする方法。しかし、これには非常に手間がかかる。いかに簡易的に診断できるツールを開発できるかがカギとなる。
いくつかの日本企業はこうしたツールの開発や実証実験を進めるものの、製品化はできていない。完成車メーカーはバッテリー診断を受け付けるものの、ほとんどはブランドのクルマのみの対応だ。
光部部長は「今後、日本のEV比率は徐々に伸びていくことが予想され、それとともにバッテリーの劣化度合いの〈可視化〉という課題はより深まる」と指摘する。
「充電口に差して30秒」
EVの健診で顧客拡大を
こうした課題解決の糸口を見出すものとして期待される、EverBlüe Driveのバッテリー診断機だ。
優れているのは、その簡易性と経済性。バッテリー診断機を充電口に差し込むと、30秒で診断することが可能だ。専門知識は必要としない。導入費用は17万8千円。
バッテリーは劣化することで容量が減る。一般的に容量が70%を切ると、バッテリー交換を検討する目安とされる。バッテリー診断機はあくまで簡易診断を行うもの。30秒ですばやく現在のバッテリー状態を把握して、万一70%を切っていれば精密に診断する。人間の健康診断から精密検査までの流れに例えれば、バッテリー診断機は〈健康診断〉だ。
同社は導入を提案する先として、中古車販売業者のほかに整備事業者を見据える。光部部長は「整備事業者にとってEVユーザーとの接点づくりに活用できる」と強調する。たとえば、EVのバッテリーを無料で診断して新規顧客をつくり、タイヤ販売などにもつなげていくといった集客施策も可能となる。
同社ではEverBlüe Driveの公式サイトのほかに、展示会などを通じて認知度の拡大を図っていく。直近ではことし9月に幕張メッセ、11月に大阪で開催されるBATTERY JAPANなどに出展を予定。このような機会に製品の実物を展示するとともに、実演も行う。
EverBlüe Driveブランドでは、バッテリー診断機のほかにもバッテリー充放電機やバッテリーバランス調整機などのメンテナンスツールを展開していく予定。
世界的にはEVブームが停滞傾向にあるが、日本は普及率2%程度にとどまり「EVブーム」は未到達。今後、一定の成長が見込まれるなか、バッテリーの簡易診断の需要もじわりと増えそうだ。