
6月は「環境月間」。国や自治体などでさまざまな啓発活動が行われる。ブリヂストンは企業コミットメントに「カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現」を掲げているが、なかでも注力し取り組むのが「タイヤの水平リサイクル」だ。第一段階の要素技術開発から、精密熱分解プロセスの確立と最適化の段階へとギアアップする。18日には使用済みタイヤの精密熱分解実証機を初めて公開した。2030年までに社会実装を見据えた検証を実施するとし、タイヤのケミカルリサイクルの取り組みはさらに歩みを進める。
ブリヂストンは18日、「サーキュラーエコノミーの実現に向けたタイヤ水平リサイクルの現状と取り組み」をテーマにアナリスト・メディア向け説明会を開催した。

大月正珠材料開発統括部門長があいさつに立ち、「持続可能な社会へ向けて経営基盤を整えていきたい」と、この取り組みに対する所感を述べた。
同社は22年から使用済みタイヤのケミカルリサイクルの取り組みを強めている。23年にはBridgestone Innovation Park(東京都小平市)に使用済みタイヤの精密熱分解実証機を導入。技術開発を進めてきた。
この実証機で使用済みタイヤを精密熱分解し、タイヤ分解油と再生カーボンブラックを回収。その後、パートナー企業であるENEOSの技術で精製/軽質化し、合成ゴムの素原料であるブタジエンなどを製造し、タイヤ原材料へ『戻す』。このリサイクルは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択された。

初公開された実証機は、ゼロから設計したもので開発の中核を担う。「分解の条件により密度など成分が違う油が出てくる。稼働して2年でさまざまな知見を得た」と、探索事業開発部門の北野秀樹上席主幹は話す。いかに効率よくタイヤに『戻す』ことができるかを追求する考え。社会実装へ向けた検証を行い、さらに拡張した精密熱分解パイロット実証プラントを岐阜県に建設し、27年に稼働する予定。
使用済みタイヤを廃棄物ではなく『資源』としてとらえ、タイヤの価値そのものの循環をめざす。その取り組みがブリヂストンの考える「EVERTIRE INITIATIVE(エバータイヤ・イニシアチブ)」だ。

加藤貞治リサイクル事業準備室長は「使用済みタイヤをEVERなタイヤへ、タイヤがタイヤへ生まれ変わる未来に向けた活動がEVERTIRE INITIATIVE。プロジェクト推進ではそのメッセージに都度向き合う」と理想の未来を語る。
それとともに重要な要素となるのは『ビジネス視点』。「いかに循環型のビジネスモデルにするのか、いかにビジネスと両立しながら高めて、事業として探索していくのか」と稲継明宏グローバルサステナビリティ戦略統括部門長は述べる。
顧客のみならず、株主、サプライヤー、地域社会などすべてのステークホルダーへ向け『最高の品質で社会に貢献』を掲げる同社。より循環型・再生型の独自のサステナビリティビジネスモデルの進化をめざす。