タイヤ専業店の活性化に向けて
SDGsを突破口に難題へ挑戦
深刻な人手不足となるタイヤ専業店業界。低工賃・低賃金にあえぎ、投資余力も少なく抜本的な改革ができず、代表者の引退によって廃業するというケースも少なくない。株式会社サンライズタイヤサービスの白井政志社長は「SDGs」を武器に、負のループにメスを入れる。(前・後編の2回/前編)
東広島市内で起業 地域密着で20年目へ

サンライズタイヤサービスが産声をあげたのは2007年のこと。祖父がタイヤ専業店を行っていたが、あえて継がずに「縁もゆかりもなかった」東広島市で事業を起こした。いわば<裸一貫>での勝負。「大手タイヤメーカー系列で1年半修業して独立したが、まだまだ半人前だった。お得意さんもなにもなかったので、スタートから3年間は非常に苦しい期間だった」と振り返る。
白井社長の経歴で目をひくのが「音楽大学出身」。ただ「自分がやりたかったからではなく、周りに勧められてという受け身の姿勢だった」とのこと。そういう意味では、東広島市で自ら店舗を構えて起業し、あえて祖父の事業を継がなかったのは、初めて〈自発的〉といえる瞬間だったのかもしれない。
起業という初めての挑戦は徐々に軌道に乗った。事務所の周辺には高速道路が通り、物流事業者からの需要も強い。そのような地の利を生かし、法人から個人向けまでの〈あなたのかかりつけタイヤドクター〉として地域に根付いて、20年目を迎えようとしている。
深刻な課題抱える業界 断ち切れない負の連鎖
白井社長は起業当初について「1日1日懸命に働いていて、自分の会社のことで精いっぱいだった」と振り返る。そうした努力が実り、会社は軌道に乗りはじめた。多少の余裕もできて、目を向けてみたのが業界のこと。つぶさに業界研究をしてみると、「非常に深刻な課題が山積している」ことを目の当たりにしたという。
その最たるものが「人手不足」だ。日本の社会課題となっているが、タイヤ専業店もこの課題に苦しめられる。国土交通省の資料によれば「自動車整備専門学校の入学者数が20年で半減」という。有効求人倍率は4.99倍。厚労省がまとめる全産業の有効求人倍率1.25倍と比べると、その深刻さが際立つ。白井社長は「こうした人手不足が負のループへの入り口になってしまっている」と指摘する。
人手不足により需要に応えきれず、ビジネスの機会損失につながる。機会損失はすなわち、売上や利益の減少をまねく。適正価格よりも安価にとどまる工賃も負担となる。結果的に新規採用や人手不足を補う省力化に向けての投資もむずかしい。
同社では25年に入ってから、新規店舗を開業した。この店舗はもともと別会社が運営していたが、人手不足で廃業を決断。大手タイヤ会社が「顧客が宙ぶらりんになってしまう」と事業の譲渡先を探し、白井社長に相談。その話を聞き事業を譲り受けることを決断し、2店舗目の開業となった。
このように店舗が継続できるというのは恵まれたケースかもしれない。譲受先が見つからずに顧客の受け皿も準備できないということもしばしばなのが実情だ。
(後編へつづく)