
日本ミシュランタイヤは、プレミアムコンフォートタイヤの新商品「MICHELIN PRIMACY 5(ミシュラン プライマシー ファイブ)」=写真(1)=を3月から順次発売した。16インチから20インチまで40サイズを発売中。同社は1日、栃木市のGKNドライブラインジャパンプルービンググラウンド(=GKN PG)で、メディア向けの新商品試乗会を開催。本紙は日本自動車ジャーナリスト協会会員のモータージャーナリスト、瀬在仁志さんをドライバーに迎え、インプレッションを行った。
開発思想「トータルパフォーマンス」
乗用車向け「PRIMACY 4+(フォープラス)」とSUV向け「PRIMACY SUV+」。この二つの商品を統合し、後継モデルとして正常進化させたのが「PRIMACY 5」だ。
そのコンセプトは〈濡れた路面での安心感が長く続く、環境にも配慮したプレミアムコンフォートタイヤ〉。ミシュランがタイヤの開発思想として掲げる〈Total Performance(トータル・パフォーマンス)=すべての性能を妥協しない〉の実現をめざしている。
SUVオーナーがタイヤ購入に際して重視する低燃費性能・静粛性・濡れた路面でのグリップというトレードオフ性能をハイレベルで両立。耐摩耗性を高め、新品時の優れた性能を摩耗後も長く維持させることで、環境性能・サステナブル性能の向上を図った。それを実現するために、「PRIMACY 5」には各種の新技術を採用した。
トレッドパターンは「ロングラスティング スカルプチャー」というウェット性能に効果的なブロックデザインを採用。ショルダー部の縦溝の幅を広げることで排水性が向上。摩耗しても変化がしにくく、濡れた路面での安心感が長くつづく。「PRIMACY 4+」と比較し、新品時・摩耗時のどちらも溝の体積が10%以上増加した。
「PRIMACY」シリーズの静粛性能向上技術である「サイレントリブ・テクノロジー」を進化させた、「サイレントリブ GEN(ジェン)−3」を採用。各ブロックのエッジ部分の剛性を高めることで振動を抑制し、発生するノイズを軽減。耐摩耗性の向上にも寄与する。
トレッドコンパウンドには「ファンクショナルエラストマー3.0」を採用。この新世代の合成ゴムにより、ウェットグリップと転がり抵抗、耐摩耗性を高い次元でバランスした。

内部構造は「マックスタッチ コンストラクション」を採用し、トレッド面の接地圧分布を最適化した。発進・加速時のトラクション、ブレーキング、コーナリングなどあらゆるドライブシーンでの接地面を安定。偏摩耗を抑制する。
タイヤのサイドウォールに「プレミアムタッチ」と呼ぶ金型技術を採用した。深みのある上質な黒さとベルベッドのような手触りを実現。質感の高いコントラストにより美しい外観を演出する=写真(2)=。
高いウェット性能、摩耗後もキープ

GKN PGを舞台とした新商品試乗会。直線のウェットブレーキ路ではテスト車両にVWゴルフeTSIを使用=写真(3)=。205/55R16 91Wサイズの「PRIMACY 5」について、新品と摩耗後の2種を比較評価した。時速80キロまで加速し定められたラインでフルブレーキを踏む。完全に停止したところまでの距離をGPSの位置情報を活用し測定するもの。ドライバーのテクニックによって多少の違いはあるのだろうが、数値として表れるのでわかりやすい。
新品と摩耗品の差はVWゴルフの車長の半分程度。瀬在さんは「摩耗品でもトレッドパターンが確実に排水しており、タイヤが滑って手応えを失うということはない」と評価する。公開データによれば、耐摩耗性能は『PRIMACY 4+』対比約30%向上。摩耗した状態でのウェットブレーキング性能は2.4%向上した。
路面とタイヤとの間に水膜ができて車両のコントロールが利かなくなることをハイドロプレーニング現象という。タイヤの溝は何のためにあるのか。溜まった路面から水を排除して、タイヤを接地させるための役割を担う。摩耗して溝が減ると、ハイドロプレーニング現象が起こりやすい。
「PRIMACY 5」は、JATMAウェットラベリングで最高グレード『a』を取得。その高いレベルのウェット性能が長くつづき、摩耗後も耐ハイドロプレーニング性能を発揮することがこのテストで示された。
セダンでもSUVでも車両の性能引き出す

ヘアピンカーブが連続するウェットハンドリング路では、テスト車両としてメルセデス・ベンツGLAを使用。235/55R18 104W XLサイズの前モデル「PRIMACY SUV+」と「PRIMACY 5」を比較し官能評価を行った。
前者はSUV専用設計の特長を発揮し、応答性の良い高速ハンドリングをみせた。その優れたウェットグリップを瀬在さんは高く評価する。
後者のインプレッションはそれをさらに上回った。「ウェットグリップとハンドリングのバランスが非常に良い。従って運転しやすい。車両重量のあるGLAでもその重さに負けず、思い描くラインの通りにトレースすることができる」というのが瀬在さんの評価だ。
コーナリングでの車両の姿勢や傾きからの回復の度合いをみて、「PRIMACY 5」のほうがロバスト性(堅ろう性)は高い。ミシュランは「バリアブルピッチ」を最適化したことでタイヤの真円度を向上させたという。タイヤ全体の剛性が高いので、ウェット高速コーナリングという厳しい走行条件でも優れた性能を発揮した=写真(4)=。
=瀬在仁志(せざい ひとし)さんのプロフィール=

モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員で、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員のメンバー。レースドライバーを目指し学生時代からモータースポーツ活動に打ち込む。スーパー耐久ではランサーエボリューションⅧで優勝経験を持つ。国内レースシーンだけでなく、海外での活動も豊富。海外メーカー車のテストドライブ経験は数知れない。レース実戦に裏打ちされたドライビングテクニックと深い知見によるインプレッションに定評がある。